それでは明るくさようなら

金糸雀

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起床しました*

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一言で言えば。
なんかもうとにかくね。


「すごかった。」


隣から聞こえる寝息。
ボクの身体を手で足で身体全体で完全に囲い込んで捕まえて、ぎゅーぎゅー締め付けてくる。
宮君のかたーい身体に顔を引き攣らせながらボク、大きなため息と共にかすれた声で一言。
端的に感想を呟きました。




(あぁほんとにすごかった!)





ボクの隣で寝息立てて今は静かな宮君。
うん。割といつもの宮君だ。
寝てるからだけど。そりゃ寝てるからだけど。
静かな宮君。
ーー寝息は。
寝息はねぇ、静かでね。
でもさ。
口とか鼻とかがくっつけられてるの。
ボクの頭には顔が。
天井が顔の真正面にある、礼儀正しくも直立不動なボクの、辛うじてTシャツを纏った上半身には手が。
まっすぐ伸ばした何も着てない不埒な下半身には足が。
ボクより長さも大きさもあるそれらが見事に巻き付いていて、動けません。


(え?寝てるよね?宮君今、よく寝てるんだよね?)


なのになんでこんなにがっちりボクに絡みついてんの?ちょっと試しに身体動かす度に締め付け強くなってない?
それに…ねぇ。寝息のスースーの合間でたまに凄い吸引を感じるんだけど…吸ってる?髪とか匂いとか臭いとか、ねぇ吸ってる?吸ってるよね?そんでたまにずずって鼻息荒いの、なんでなの??!






「あー…。」


とりあえずボク、一旦目を閉じました。
身体動かないし、頭まわんないし。心で叫んで疲れましたし。
とりあえず寝るかなぁって目を閉じて浅く浅く息をしていたら。
そしたらね、ふって。
髪に息かかった、みたいな。
小さく吐き出された息を感じて。
それからゆっくりゆっくり。
頭と手と足がボクから離れてく。
それでぎしって、ベッドの軋む音がして。それから宮君の全部がボクから離れてく気配がして…あぁ宮君やっぱり起きてたんだ。
やっぱりさっきのあれ、ボクを吸ってたんかなぁなんてぼんやりしてたのが。
ドアの開閉の音がした瞬間、ボクの目とか頭もハッて開いた。

パンツ、履きたい。






そう。ボクのパンツ。
ソファーに押し倒されてあれやこれやされそうで暴れて闘ってたらそのうち、なんでか肩に担がれ連れ込まれた寝室。ベッドにまるで放物線描くかのようにそりゃあ見事に放り投げられてそんで。えぇー!って叫んだけどあっという間にパンツ。取られた。早業で。
剥かれた上半身の薄手ニットとTシャツのうち、Tシャツだけはいつのまにかまた着せてくれて…いや。着せてくれてはおかしい。感謝の気持ち持つの、そこぉ?とか自分で自分に不平不満言いたくなるから着せてくれては違う、訂正。
とにもかくにも、上は着てるのになんでか下はそのまま。
パンツ履きたいの、切実に。
あぁとにかく。重しという名の宮君が退いた今、パンツ履かなくっちゃ!人間として。大事、パンツ。
ボクは直立不動、バッキバキに固まった手足をどうにか動かして、身体も動かそうとして。

「ぎぃっ…」

て、変な声がでた!ボクの口から掠れた上に変な声が、だって。だって!
腰がっ…痛過ぎて!びっくりするくらい腰がね、痛いの。
じわわわぁって涙出た。痛みで。
しかもさ。別のとこも、痛いんだ。
人様に見せるもんじゃない隠すべきとこがさ、痛いんだよ。
それに気づいてボク驚愕!
ほんとに痛いんだ…!驚愕!!
そうだよね、そりゃそうだ。痛くないわけがない。だってあんなちいちゃいとこだよ?
見たことないけど。
敢えて確認なんてしたことないけども。
わかるよ、わかるよね?わかるでしょ。
敢えてさぁ見なくったってさぁちっちゃいってさあぁ!
みんなの一般常識だよね!!!?
あんな慎ましくちっこいとこに、だから入れちゃいけない。入れちゃ駄目無理おいこらやめろぉおぉ!!ってボク。一所懸命ボク説いたのにぃいぃぃぃ!!



「痛い。」
それでもどうにか仰向けから横向きにして体守るように丸まってそれだけでもう息上がって、もうもう!これ以降動くの無理。
パンツ履きたいけど、無理。
ゼーゼー上がった息を整えてるうちに、パタンって音たててドア開いて。
宮君戻ってきちゃったからボク、目を閉じて寝てますオーラ纏ったんだけども。
…まぁ、騙されないよねぇ。


「先輩。」
宮君のおっきな手が、ボクの肩に伸びてきてゆっさゆさ。肩揺するから。ボクは更に寝てますー起きてませんーって、わざとらしく寝息とかたててみたりするけどゆさゆさゆっさゆさ。宮君ボクの肩揺する。
「下手くそな寝たふりはいらないんで。」
くぬぅう!下手くそ!では、ない!!
ドアが開いた瞬間、やば目を閉じねばってなったから多分ちょっと、開いてた目みられちゃっただけで下手くそなわけじゃぁないはず!だ!
ゆさゆさゆさゆさ。
だんだんと大きく揺さぶってくるもんだから。
なんか負けるもんかと変な対抗心じみた感情でさらにさらに目をぎゅーって閉じてその揺さぶりから逃げるよう縮こまろうとして。
おへそ見るみたいにに首曲げて。
手もつられ動かして、しまって。



…しま、った。


しまったうっかり手が。
うっかり。すっかり赤くなったであろう可哀想なくらいしょんぼりしてるであろうボクのボクに
触れてそれで。
ぶあぁって一気に甦るちょっと前の記憶。
「ひゃぁっ。」
声が漏れて、慌てて口噤んだけど。
「起きてますよね。」
宮君にバレた!寝たフリしたのにバレた!元からバレてたけども!!
ぐぬぅぅって渋い顔で悔やむけどでも!
だって瞬間蘇っちゃったんだもの。
触られ擦られ弄ばれたボクのボクが盛大に放ったアレやこれやが!!!
叫ばずにいられるかぁ!!!



『ほら見て先輩、沢山でましたよ?』


ぎゃぁぁあぁあぁ!!


宮君の言葉まで蘇ってボク。
心の中で大絶叫。
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