それでは明るくさようなら

金糸雀

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再訪しました。

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『もしもし』
「もしもーし、宮君、今電話大丈夫?」
『大丈夫です。』
「あのね。これから宮君ちに行ってもいい?」
『いいですよ。昨日の材料まだ残ってるんで、夕飯お願いします。』
「了解。何があったかなぁ。あ、ついでに今日も、泊まってもいい?」
『どうぞ。』
「ありがとー!助かる!じゃ、今から向かうね。」
『わかりました。』
「じゃ、あけてくださーい。」
『…あ?』



さよならを高らかに宣告したボクは、驚きと衝撃にソファーにどすっと腰を落とした雪を置いて颯爽とね、カフェから出まして。
そしてボク、走りました。
支払いしてないからね。出口でスタッフさんも何も聞かず、ただありがとうごさいましたって。ボクも特別何も言わず、ごちそうさまでしたって微笑んでね。
正気に戻った雪の足止めはしてもらえるだろうって密かに期待しながら走った!せっかく家からだしたんだ。合鍵だって、雪のキーチェーンからきっちり外してあるし。ここでつかまったりとかは勘弁!!
走って走って自宅に戻り、準備しといたボク用荷物を掴んですぐさままた、家を出て。
向かう先はもちろん宮君ちだー!!


宮君ちの目の前でいれたお伺い電話。
了承いただけたので、即インターフォン押しました。



「「お疲れ様でした。」」

昨日の残りの材料でサクサクおつまみを作るボクの傍で、お酒作ってくれた宮君。
ボクらは各々のグラスを持って、かんぱーい!
祝杯をあげました。万歳。

「あー!美味しい!」
一気にグラス半分くらい飲み干して、ぷはーって。おじいちゃんみたいな声出しちゃったよ自分!可笑しい!
だからくふくふ笑いが止まらない。
「酔いましたか?」
「酔わないよー!」
宮君が、なんだったかな?えらい高いらしい日本酒を豪快に飲みながら、ボクに聞いてくるけどね。ボクは笑いながら全否定。
「ボクがお酒強いの知ってるでしょー?こんくらいじゃ酔わないよ。」
まだ1杯目ー!!
くふくふ、くくくっ。
可笑しなこと言う宮君だねー、って。
すぐ隣に座ってる宮君の頭とか、グラス片手に撫でながら、やっぱりくふくふ。
「カフェで2杯飲んだって言いましたよね?」
払われるかな?って思った手は、特に嫌がられもしなかったのでそのまま撫で撫で。
宮君の髪の毛は染めてない地毛で真っ黒艶々。
でも髪型気にしないからどこかぼさぼさ。
そこがまた良いんだよね。
「言った?言ったね、うん2杯飲んだー!宮君が作ってくれたやつ。コーヒーのやつ飲んだよ、美味しかったなぁ。」
あの甘さを甘い出して、思わず唇をぺろり。
あぁ甘かったなぁ。
「アグラべーション?」
「うん、それそれ。」
「次それにしますか?」
宮君に聞かれ、ううんと、首を横に振る。
「違うやつがいい。」
ボクはまたこくり。
今ボクが飲んでるのは、細長いグラスに入った黄色なふるーてぃーカクテル。
アプリコットクーラー、だったかな?
これも美味しいなぁって飲んでたら、宮君がボクをじっと見てきた。


「宮君?」
「知ってたんですか?」
「ん?何が?」
「浮気してること。」


ボク、グラスに口をつけたまま停止。
髪を撫でてた手も、ぴたっと止めたボクを、宮君がじっと、じぃっとを見てくる。
「んーんんー。」
「心構えなしにしては、冷静でしたよね。」
平坦な声なんだけど。そこに確固たる意志、みたいな強さが、こうなんて言うか…滲み出てる。
鬱陶しそうな前髪と眼鏡の奥の真っ黒な目で、じっと、じぃっとボクを見てくるまっすぐなその視線にも。
退路を断つ、絶対に。みたいな。
誤魔化しは拒否、みたいな。
…さっさっとお答え、してくださいね?
そんな、心の声が聞こえてきそうだねぇ!


グラスから口を離し、そのままテーブルに置くと。
ボクは素直にうん、と頷いた。






「相手男だったからかなぁ。化粧品だとか香水とか長ーい髪の毛とか、そんな匂わせは無かったんだけどさ。」


増えた外泊とか、知らん人との飲みとかさ。
ここ最近。
ボクに、ちっとも触れないとか。
いろいろ。いろいろ、あってさ。


宮君の頭から手を離し、今度はおつまみへと、手を伸ばす。
カットされたカマンベールを1つ口に放り込んで。
咀嚼し終えてから教えてあげた。
「荷物が届いたんだよねぇ。ネットで買ったやつ。そんで、注文したのは雪だったんだけど住所がボクんちだったからちゃんと確認しないで開けちゃったのね。そしたらなんと。」
ボクは目を三日月みたいに細めて、笑いながら教えてあげた。
「箱いっぱいのゴムとローション入ってたの。」
宮君がぴしっと、止まった。
「小さくないんだよ?中くらいの箱にさ、びっしり。ボクびっくりしちゃってさー。とりあえず見なかったふりすることにして、ガムテープで貼り直して雪に渡したのね。」
その時の雪のちょっぴり挙動不審だった顔を思い出して、ボクは口元を緩ませた。
「馬鹿みたいに目線とか彷徨わせながら受け取ってさ。しかもさ使もーその時点で怪しさしかないよね!」
笑って話すボクとは反対に。
「は?」
って、低ーい声が宮君から聞こえてきた。
ん?宮君。背後にあれ?またなんか黒いの出てない?なんかすごい、機嫌悪くなってない?!
どしたの?って、ボク瞬きしちゃいながら、でも続きを話す。あとちょっとだからね!
「そんで、それからちょっとして雪のゴム置き場開けたらさ、減ってるの、ゴム!そんでボク、もしかしてこいつ浮気してる?ってさ。」
雪は気づいてないかもしれないけど、ボクは知ってるゴム置き場。
すごいの。箱の半分くらい減ってて、ローションなんて3本届いたのに残り1本半だったの!!


だからボク、ずっとそうかなぁって。
うわきしてるのかなぁってずっと。
うん。
昨日よりずっと前から覚悟、してたんだよねぇ。


「でもさ。遭遇するまでは、あくまで想像の域だし。限りなくクロだったとしても見てないじゃん?浮気予想も想像も、いくらしたって見てなきゃそれってほんとじゃないでしょ?」


雪には少しの負い目も、たくさんの情もあったから。なんとなくそのままにしちゃったんだけど。


「でも昨日、自分ちのベッドが浮気現場にされたの見たらばさ。これが巷で流行りの浮気現場遭遇か!って。とうとう見ちゃったよ!って、大興奮。即断はい終了!廃棄一択!」
あはは!って声あげてボクは笑った。
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