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「右大臣」は「左遷」されても「左大臣」にはならない
しおりを挟む会社で古くから使用している書類を眺めていた際、回覧印の押印箇所に違和感を覚えました。
一般的な回覧印は一番偉い人が一番左に押印する形となっており、「右から左」の順番で回覧を進めていきますが、その書類は「左から右」になっていました。
そこで、ふと(「右から左」が正しいのかな?)と疑問に思い調べてみたところ、日本には左上右下(さじょううげ)という文化があり、「偉い人が左に位置する」事が正しい礼儀作法であり、回覧文書は「右から左」の順番が正しいとの事。
その古い書類は、作成者の認識が誤っていたようです。
(なるほど。自分の違和感は正しかったのか。)と思いましたが、その後「右」と「左」に関する様々な言葉について調べているうちに、どんどん混乱の沼にはまっていきました。
と言いますのも、雛人形にも並んでいる「左大臣」と「右大臣」、この二人の関係も「左」の「左大臣」の方が偉い人物なのですが、その位置関係は「向かって右手が左大臣」「向かって左手が右大臣」です。
つまり、左大臣と右大臣は「本人達の主観」で見て、「左側が左大臣」「右側が右大臣」という事です。
先程の回覧文書は、「偉い人」が左手にいますので、左大臣・右大臣とは視点が異なります。
この状況を整理する為に、二つの視点を「①本人主観」と「②正面視点」とネーミングし、分けて考えていきましょう。
「①本人主観」とは、本人から見た視点を指します。
皆同じ方向を向いて横向きに並んだと仮定し、当事者から見て「左の人から偉い順」となります。
反対に、「②正面視点」とは、同じ条件で横並びした列を真正面から見た視点を指します。
反対側から見た視点ですので、「右の人から偉い順」となります。
「左上右下」とは言いますが、視点によって右と左が入れ替わりますので、頭が混乱してしまいます。
漫才師やミュージシャンが立つ舞台上の位置について、「向かって右側を上手」「向かって左側を下手」と表現するのは、「①本人主観」で見た時の左上右下が語源になっています。
漫才師本人の視点から見て左側が上手で右側が下手、左大臣・右大臣と同じ左上右下の位置関係です。
ダウンタウンでいうと、浜ちゃんが上手(本人主観の左、向かって右)松っちゃん下手(本人主観の右、向かって左)となります。
とはいえ、浜ちゃんが偉いという訳ではなく、「ごぶごぶ」の関係だと思いますが…
また、「誰も勝てない」という意味の「右に出る者はいない」という言葉は、「②正面視点」から見た表現となっています。
一番右側にいる人が一番偉く、その人より右には誰もいないという意味で、「右に出る者はいない」という言葉が使われるようになりました。
さらに、「左遷」という言葉も「②正面視点」から見た表現です。
「左側に遷る」=「役職が下がる」という意味ですので、「左側の役職が低い」事になります。
ですので、「右の人から偉い順」の「②正面視」点になります。
つまり、「左大臣」は「左遷」されると役職が下がり「右大臣」になる可能性はありますが、「右大臣」は「左遷」されても上の役職である「左大臣」にはならないという事です。
どんどん方向感覚がおかしくなってきていませんか?
私はここまで書くのに、図を書いて頭を整理する作業を何度も繰り返しました…
最後に、回覧印の話に戻るのですが、冒頭書いた通り「左の人から偉い順」なので「①本人主観」という事になります。
例えば、「部長」「課長」「担当者」の順番で印鑑が並んでいる場合、多くの方は「②正面視点」で考え、それぞれの顔を思い浮かべるかもしれません。
しかし、顔がこっちを向いていると、本人主観で見た時に一番偉い「部長」が一番「下手」である「右側」に位置する事態になってしまいます。
「部長」を一番「上手」に位置させる為には、全員を「回れ右」させて後ろ向き(背中向き)に変える必要が有ります。
向きを変える事で、部長が「①本人主観」で一番左側となり、上司の威厳を保つ事が出来ます。
回覧書類も電子化が進んできていますが、もし回覧印を押す機会がある方は、回覧者が「背中向き」で並んでいるという事を意識して、押す順番を間違えないようにしてください。
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