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ep10.
ep10.『聖母と道化、その支配人』アイドル(仮)
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「は、いや……あの……」
この祖父さん、気が触れちまってるんじゃないのか?
いや、違う。
おかしいのは俺の方?
それとも。
やっぱりこの世界には既に綻びが出てきている?
混乱した頭をフル回転しながら俺はテーブルの上に置かれた千疋屋のフルーツタルトを眺めた。
綺麗にカットされた苺が花のように咲き誇っている。
「……ああ、ごめんごめん」
急すぎて驚かせてしまったよね、と祖父さんは少し狼狽えたように俺を見た。
急すぎも何も意味がわからなさ過ぎるだろう。
「……実はね」
コホン、と咳払いした祖父さんは奥のデスクの引き出しからファイルを取り出し、テーブルの上に置いた。
「……ご当地アイドルのステージを市のイベントでお披露目しようっていう企画が以前から持ち上がっていてね───────」
ん?
ご当地アイドル?
それってさ、地域の町おこしとかでやるやつ?
俺はチラリとファイルの表紙を見た。
[第××回 ◯◯市ふれあいフェスティバル]という文字列が大きく目立つ。
市のイベント?
「……なんですか、それって─────────」
どうして俺?
俺はただの素人、しかも普通の中学生なんだが──────────
そう聞き返すと祖父さんは穏やかに笑った。
「……今回のご当地アイドルのステージ企画はね、地域活性化の狙いもあって学生さん主導でやってみて貰いたいんだ」
ふむ?
学生が主体になって町おこしだの地域おこしだのをやってるって話はたまにローカルのニュース番組で見たりはするが。
「そういうのって商業高校の高校生なんかが授業や学校行事の一環でやったりするもんじゃないですか?」
俺は普通の中学生なんで特殊な経験や能力なんてないですけど、と俺が言うと祖父さんはまた穏やかに笑い、深く頷いた。
「……うん。そう聞いているよ。だからこそ敢えて君に頼みたいんだ」
「……?」
“敢えて”?
どういう意味だろう、と思った瞬間だった。
「今回、君を強く推薦する人物がいてね。今回のキーパーソンたっての強い要望とあっては無視する訳にもいかないだろう?」
「……キーパーソン?」
俺がそう聞き返すと祖父さんはドアの方に何やら目配せをする。
「そう。今回、君にプロデュースしてもらうアイドルのセンターだよ。入ってきなさい」
祖父さんの言葉と共にドアが開き、俺の目の前に非現実のような存在の少女が出現する。
「……は!???」
煌びやかなステージ衣装に身を包んだアイドル。
それは────────────紛れもなく俺の知っているはずの“水森唯”本人だった。
この祖父さん、気が触れちまってるんじゃないのか?
いや、違う。
おかしいのは俺の方?
それとも。
やっぱりこの世界には既に綻びが出てきている?
混乱した頭をフル回転しながら俺はテーブルの上に置かれた千疋屋のフルーツタルトを眺めた。
綺麗にカットされた苺が花のように咲き誇っている。
「……ああ、ごめんごめん」
急すぎて驚かせてしまったよね、と祖父さんは少し狼狽えたように俺を見た。
急すぎも何も意味がわからなさ過ぎるだろう。
「……実はね」
コホン、と咳払いした祖父さんは奥のデスクの引き出しからファイルを取り出し、テーブルの上に置いた。
「……ご当地アイドルのステージを市のイベントでお披露目しようっていう企画が以前から持ち上がっていてね───────」
ん?
ご当地アイドル?
それってさ、地域の町おこしとかでやるやつ?
俺はチラリとファイルの表紙を見た。
[第××回 ◯◯市ふれあいフェスティバル]という文字列が大きく目立つ。
市のイベント?
「……なんですか、それって─────────」
どうして俺?
俺はただの素人、しかも普通の中学生なんだが──────────
そう聞き返すと祖父さんは穏やかに笑った。
「……今回のご当地アイドルのステージ企画はね、地域活性化の狙いもあって学生さん主導でやってみて貰いたいんだ」
ふむ?
学生が主体になって町おこしだの地域おこしだのをやってるって話はたまにローカルのニュース番組で見たりはするが。
「そういうのって商業高校の高校生なんかが授業や学校行事の一環でやったりするもんじゃないですか?」
俺は普通の中学生なんで特殊な経験や能力なんてないですけど、と俺が言うと祖父さんはまた穏やかに笑い、深く頷いた。
「……うん。そう聞いているよ。だからこそ敢えて君に頼みたいんだ」
「……?」
“敢えて”?
どういう意味だろう、と思った瞬間だった。
「今回、君を強く推薦する人物がいてね。今回のキーパーソンたっての強い要望とあっては無視する訳にもいかないだろう?」
「……キーパーソン?」
俺がそう聞き返すと祖父さんはドアの方に何やら目配せをする。
「そう。今回、君にプロデュースしてもらうアイドルのセンターだよ。入ってきなさい」
祖父さんの言葉と共にドアが開き、俺の目の前に非現実のような存在の少女が出現する。
「……は!???」
煌びやかなステージ衣装に身を包んだアイドル。
それは────────────紛れもなく俺の知っているはずの“水森唯”本人だった。
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