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ep10.
ep10.『聖母と道化、その支配人』奇妙な依頼
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「どうぞ」
部屋のドアをノックすると落ち着いていて─────それでいてよく通る声で返事が聞こえた。
ちくしょう、この祖父さんはなかなか手強い。そんな気がする。
一筋縄じゃいかない相手だろう。
なにせ、地元の名士、尚且つやり手の社長だ。
緊張を隠せないまま俺は部屋に入った。
部屋には居たのは祖父さん一人だけだった。
[いかにも社長でござい]的なアレだな、まるで大統領みたいな重厚なデスクと椅子の放つ存在感がひときわ俺にプレッシャーを与えてくる。
「……すまないね。忙しいところをわざわざ呼びつけてしまって」
祖父さんは柔らかな口調でそう言いながら立ち上がる。
「いえ……」
掛け持ちのアルバイト忙しくしてるんだってね、と祖父さんは俺を気遣うようにそう言った。
そうでもないです、と俺は当たり障りのない返事をぼんやりと返した。
ドアが開き、いつか見た受付の女性がコーヒーとジュースとケーキを持ってこちらにやってくる。
祖父さんに促されてソファに座った俺は出されたケーキに視線を移した。
「……この千疋屋のプチフルーツタルトが大好物なものでね」
君の口にも合えばいいんだが、と和やかに俺に話しかけてくる祖父さんの口調はどこまでも穏やかだ。
ふむ、妙だな?
俺へ釘を刺しときたいとか、そういう話じゃないんだろうか。
じゃあなんだ?
祖父さんから見ると俺は可愛い孫娘の同じクラスの男子だろ?しかも素行はあまりよくないときたもんだ。
俺を呼び出す用事ってなんだよ。
俺が緊張してるのが見てとれたんだろうか。祖父さんは俺を安心させるかのようにゆっくりとこう言った。
「……いや、急に呼び出してびっくりさせてしまったね。実は今日は─────────」
折り行って君に頼みがあるんだ、と口にした祖父さんの表情は真剣そのものだった。
頼み?俺にか?
この祖父さんが?
嫌な予感がする。
俺の背中に冷や汗が流れていき、体温が少し下がった気がした。
部屋のドアをノックすると落ち着いていて─────それでいてよく通る声で返事が聞こえた。
ちくしょう、この祖父さんはなかなか手強い。そんな気がする。
一筋縄じゃいかない相手だろう。
なにせ、地元の名士、尚且つやり手の社長だ。
緊張を隠せないまま俺は部屋に入った。
部屋には居たのは祖父さん一人だけだった。
[いかにも社長でござい]的なアレだな、まるで大統領みたいな重厚なデスクと椅子の放つ存在感がひときわ俺にプレッシャーを与えてくる。
「……すまないね。忙しいところをわざわざ呼びつけてしまって」
祖父さんは柔らかな口調でそう言いながら立ち上がる。
「いえ……」
掛け持ちのアルバイト忙しくしてるんだってね、と祖父さんは俺を気遣うようにそう言った。
そうでもないです、と俺は当たり障りのない返事をぼんやりと返した。
ドアが開き、いつか見た受付の女性がコーヒーとジュースとケーキを持ってこちらにやってくる。
祖父さんに促されてソファに座った俺は出されたケーキに視線を移した。
「……この千疋屋のプチフルーツタルトが大好物なものでね」
君の口にも合えばいいんだが、と和やかに俺に話しかけてくる祖父さんの口調はどこまでも穏やかだ。
ふむ、妙だな?
俺へ釘を刺しときたいとか、そういう話じゃないんだろうか。
じゃあなんだ?
祖父さんから見ると俺は可愛い孫娘の同じクラスの男子だろ?しかも素行はあまりよくないときたもんだ。
俺を呼び出す用事ってなんだよ。
俺が緊張してるのが見てとれたんだろうか。祖父さんは俺を安心させるかのようにゆっくりとこう言った。
「……いや、急に呼び出してびっくりさせてしまったね。実は今日は─────────」
折り行って君に頼みがあるんだ、と口にした祖父さんの表情は真剣そのものだった。
頼み?俺にか?
この祖父さんが?
嫌な予感がする。
俺の背中に冷や汗が流れていき、体温が少し下がった気がした。
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