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ep10.
ep10.『聖母と道化、その支配人』 “LOVE is blind”
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どうしよう。
ここまで来たのに買えるものがないとは。
俺はもう一度特設スペースを確認する。
小泉の推しの[大豪院ハルト]のグッズは何もない。
別のカラーの同じようなイケメンのグッズがズラりと並んでいるが、別人じゃ意味がないんだろう。
以前に小泉が推していたという[ゆずきゅん]のグッズは少し残ってはいるが、やっぱダメだよな。
そもそも俺は───────水森唯に“小泉の推しのグッズを買いたい”って口実でここまで来てもらったんだ。
今更、別のキャラのグッズに変更するって訳にもいかんだろう。
しかし。
よく見ると、何やら銀色の小さいパッケージは在庫が豊富に置いてある。
「なあなあ、これってどうなんだ?これにも“アイぷり”って書いてあるけど───────」
俺がそう訊ねると、水森唯は少し考え込むような素振りを見せた。
「……ああ、これは────────」
ブラインド商品の缶バッジね、とこともなげに言い放った水森唯の言葉の意味がわからない。
「ブラインド?」
俺が聞き返す間もなく、水森唯は一つのパッケージを手に取った。
「ほら、この缶バッジは確かに“アイぷり”のものなんだけど───────────中身がわからないようになってるの」
は?
「“アイぷり”だけど中身がわからない?どのキャラが出るかわからないってことか?」
そう、と水森唯は頷きながら銀色のパッケージを売り場に戻す。
なるほどな。ガチャみたいな仕組みってことか。
俺は改めて銀色のパッケージのブラインド缶バッジとやらの値札を見た。
500円。2個買ったら1000円になる。
中身がわからないのに結構な値段するじゃねぇか。
俺がため息をついていると水森唯はまたしてもスマホでフリマアプリの画面を開く。
「……ほら。定価は500円でも人気キャラのものはとんでもない価格で取引されてるのよ」
覗き込んだ画面の中では、“アイぷり”の人気キャラの缶バッジが3000~5000円の値段で取引されていた。
「ハァ!?」
定価500円の缶バッジが数千円の値段で取引されている。
もう俺には理解不能な世界だ。
さっきのブロマイドと同じで─────────多少割高でも確実に手に入れたい層には需要があるのか?
意味がわからない。
なんなんだこの業界は。
わりとガチ目に戦意喪失してしまった俺は───────────当初の目的も忘れてアニメショップから退店してしまっていた。
ここまで来たのに買えるものがないとは。
俺はもう一度特設スペースを確認する。
小泉の推しの[大豪院ハルト]のグッズは何もない。
別のカラーの同じようなイケメンのグッズがズラりと並んでいるが、別人じゃ意味がないんだろう。
以前に小泉が推していたという[ゆずきゅん]のグッズは少し残ってはいるが、やっぱダメだよな。
そもそも俺は───────水森唯に“小泉の推しのグッズを買いたい”って口実でここまで来てもらったんだ。
今更、別のキャラのグッズに変更するって訳にもいかんだろう。
しかし。
よく見ると、何やら銀色の小さいパッケージは在庫が豊富に置いてある。
「なあなあ、これってどうなんだ?これにも“アイぷり”って書いてあるけど───────」
俺がそう訊ねると、水森唯は少し考え込むような素振りを見せた。
「……ああ、これは────────」
ブラインド商品の缶バッジね、とこともなげに言い放った水森唯の言葉の意味がわからない。
「ブラインド?」
俺が聞き返す間もなく、水森唯は一つのパッケージを手に取った。
「ほら、この缶バッジは確かに“アイぷり”のものなんだけど───────────中身がわからないようになってるの」
は?
「“アイぷり”だけど中身がわからない?どのキャラが出るかわからないってことか?」
そう、と水森唯は頷きながら銀色のパッケージを売り場に戻す。
なるほどな。ガチャみたいな仕組みってことか。
俺は改めて銀色のパッケージのブラインド缶バッジとやらの値札を見た。
500円。2個買ったら1000円になる。
中身がわからないのに結構な値段するじゃねぇか。
俺がため息をついていると水森唯はまたしてもスマホでフリマアプリの画面を開く。
「……ほら。定価は500円でも人気キャラのものはとんでもない価格で取引されてるのよ」
覗き込んだ画面の中では、“アイぷり”の人気キャラの缶バッジが3000~5000円の値段で取引されていた。
「ハァ!?」
定価500円の缶バッジが数千円の値段で取引されている。
もう俺には理解不能な世界だ。
さっきのブロマイドと同じで─────────多少割高でも確実に手に入れたい層には需要があるのか?
意味がわからない。
なんなんだこの業界は。
わりとガチ目に戦意喪失してしまった俺は───────────当初の目的も忘れてアニメショップから退店してしまっていた。
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