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ep10.
ep10.『聖母と道化、その支配人』 排泄物
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ゆらり、と黒い影が動く。
こちらに近付いてきたそれは───────────真っ青な顔をした水森唯だった。
「……ごめんなさい。ちょっと取り込んでるから」
それだけ言うと水森唯は俺に[車輪の下]を押し付けるようにして奥に引っ込んだ。
は!?
なんだ?
どういうことだ?!
意味もわからず俺はただ無様に叫ぶ。
「……おい!?水森!?」
奥の方で絞り出すような悲痛な声が微かに聞こえた。
「……本当に。今日は帰って」
御免なさい、と最後にそれだけ言うと水森唯はそれきりこちらには戻って来なかった。
家の玄関にいてもわかるほどの異臭が鼻を突いた。
病院の匂い?
いや違う。
この匂いには覚えがある。
そうだ。
婆さんが末期に入っていたホームの匂いだ。
寝たきり老人の匂い。
そこまで考えて俺は首を振った。
そうじゃないな。そうだ、これは──────────
人間の排泄物の匂いだ。
これほどまでに絶望的な空気に触れたことは俺にはない。
この家の空気。
死の近づいた人間の匂い。
床ずれと腐臭。
終わりの見えない絶望。本人によって何処かに隠される排泄物。
それがこれなんだ。
この家族が抱える“絶望”の大きさの一端に触れた気がした俺は絶句した。
もうこれ以上俺にできる事はないのかもしれない。
─────────────そう思った俺は黙って水森家を後にした。
こちらに近付いてきたそれは───────────真っ青な顔をした水森唯だった。
「……ごめんなさい。ちょっと取り込んでるから」
それだけ言うと水森唯は俺に[車輪の下]を押し付けるようにして奥に引っ込んだ。
は!?
なんだ?
どういうことだ?!
意味もわからず俺はただ無様に叫ぶ。
「……おい!?水森!?」
奥の方で絞り出すような悲痛な声が微かに聞こえた。
「……本当に。今日は帰って」
御免なさい、と最後にそれだけ言うと水森唯はそれきりこちらには戻って来なかった。
家の玄関にいてもわかるほどの異臭が鼻を突いた。
病院の匂い?
いや違う。
この匂いには覚えがある。
そうだ。
婆さんが末期に入っていたホームの匂いだ。
寝たきり老人の匂い。
そこまで考えて俺は首を振った。
そうじゃないな。そうだ、これは──────────
人間の排泄物の匂いだ。
これほどまでに絶望的な空気に触れたことは俺にはない。
この家の空気。
死の近づいた人間の匂い。
床ずれと腐臭。
終わりの見えない絶望。本人によって何処かに隠される排泄物。
それがこれなんだ。
この家族が抱える“絶望”の大きさの一端に触れた気がした俺は絶句した。
もうこれ以上俺にできる事はないのかもしれない。
─────────────そう思った俺は黙って水森家を後にした。
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