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ep10.
ep10.『聖母と道化、その支配人』 送り狼と見送る母親
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そこからは話が早かった。
水森唯が難色を示そうとする前に俺は早口で色々と捲し立てる。
全部こっちの都合なのは分かりきっていたが、今それは大した問題じゃない。
そう、何事もテンションと勢いだ。
「なあ、助けてくれよ水森~!」
このままじゃ小泉まで巻き添えになっちまうしさ、と俺が言うと──────────水森唯はその言葉に反応を示す。
「……小泉先生が?」
そうなんだよ、と俺はさも困りきった様子で重大な秘密を打ち明けるように続けた。
「さっきも言ったと思うんだけどさ、俺んちに母ちゃん居ないからさ。小泉が何かと便宜を図ったり庇ってくれたりされてるんだけど──────」
そのことで加賀に厳しく当たられてるみたいなんだよな、と俺はもっともらしくしょげてみせた。
「俺がキチンと反省してないとさ、小泉の指導不足、監督不足ってことにされかねないんだよ」
てかさ、そういう事情だとしたらちゃんと普段から真面目な生活を送っとけって話になるんだけどさ。
そうなの、と呟いた水森唯の表情の変化を俺は見逃さなかった。
「実は俺、学校に内緒でバイトしててさ。小泉はそれを知ってて黙っててくれてるんだよ」
俺は極力、沈んだような表情を作りながら強調した。
「俺んちさ、母ちゃんが家を出てってから誰も居なくて───────────だから自分で稼がねぇと食いもんすら無くてさ」
俺がそこまで言うと水森唯は大きく頷く素振りをみせた。
「……そうだったの」
暫く何か考え込むと、水森唯はこう口を開いた。
「……家の中には入れないの。それでも良かったら────────────」
水森唯が難色を示そうとする前に俺は早口で色々と捲し立てる。
全部こっちの都合なのは分かりきっていたが、今それは大した問題じゃない。
そう、何事もテンションと勢いだ。
「なあ、助けてくれよ水森~!」
このままじゃ小泉まで巻き添えになっちまうしさ、と俺が言うと──────────水森唯はその言葉に反応を示す。
「……小泉先生が?」
そうなんだよ、と俺はさも困りきった様子で重大な秘密を打ち明けるように続けた。
「さっきも言ったと思うんだけどさ、俺んちに母ちゃん居ないからさ。小泉が何かと便宜を図ったり庇ってくれたりされてるんだけど──────」
そのことで加賀に厳しく当たられてるみたいなんだよな、と俺はもっともらしくしょげてみせた。
「俺がキチンと反省してないとさ、小泉の指導不足、監督不足ってことにされかねないんだよ」
てかさ、そういう事情だとしたらちゃんと普段から真面目な生活を送っとけって話になるんだけどさ。
そうなの、と呟いた水森唯の表情の変化を俺は見逃さなかった。
「実は俺、学校に内緒でバイトしててさ。小泉はそれを知ってて黙っててくれてるんだよ」
俺は極力、沈んだような表情を作りながら強調した。
「俺んちさ、母ちゃんが家を出てってから誰も居なくて───────────だから自分で稼がねぇと食いもんすら無くてさ」
俺がそこまで言うと水森唯は大きく頷く素振りをみせた。
「……そうだったの」
暫く何か考え込むと、水森唯はこう口を開いた。
「……家の中には入れないの。それでも良かったら────────────」
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