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ep10.

ep10.『聖母と道化、その支配人』 シュレーディンガーの家族

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いつも通りにチャイムが鳴り、朝のHRが始まる。

加賀の奴は半休だか出張だか知らないが、午前中は不在との事で小泉が教壇に立っていた。

何食わぬ顔で平然と─────────出席を取っている小泉。

俺の名前が抑揚のない声で呼ばれる。

「はぁい」

俺は敢えてやる気の無い声色を作って返事を返す。

そう、いつも通りだ。

俺達は生徒と教師なんだよな。いつもは忘れがちなんだけどさ。

教壇の上の小泉と─────────教室に居るその他大勢の生徒の中の一人でしかない俺。

ついさっきまで社務所で向き合って同じ朝飯を食ってた雰囲気は微塵も無いだろう。

多分、俺達はさ。意図的にこうしてるのかもな。

─────────心のどこかで感じてる“何か”。

それは俺達二人に共通している事なのかもしれない。

俺はぼんやりと小泉の姿を眺めた。

冴えない眼鏡にすっぴんの顔、色気も何もない縛っただけの髪。

いつもの赤ジャージはオシャレさのカケラもない。

そう、いつもの小泉なんだ。

だけど。

その日は何かが違う気がした。

なんだ?

何が違うんだろう?

俺がぼんやりとしたまま考えていると、──────────名前を呼ばれた水森唯が返事をする。

「……はい」

水森唯。

そう。

今回の事件の重要な鍵を握る人物じゃないか。

こうして時間を戻っちまった以上、俺は水森唯について調査する義務があるだろう。

でないと、何度時間を戻っても同じ結末を迎えるかもしれないだろ?

いや、待てよ。

そこまで考えて俺の背筋が一気に冷たくなった。














そもそも──────────  一度死んだはずの水森の母親と祖母はどうなってるんだ?


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