928 / 1,060
ep10.
ep10.『聖母と道化、その支配人』 虚偽の告白と真実の指環
しおりを挟む
グラリ、と視界が暗転する。
身に覚えのある吐き気と眩暈が身体を覆う。
安っぽい古びた遊園地のアトラクションのように全身が回転させられるような感覚。
意識はぼんやりとして目の前は暗闇に包まれている。
暗闇。
俺の意識は遠のいたり近付いたりをゆらゆらと繰り返している。
身体は金縛りに遭ったように全く動かない。
ぼんやりとした思考の中で子どもの声…複数の子どもの声が聴こえて来る。
最初はボソボソとしか聴こえなかったその声がだんだんと近付いて来る。
いや、遠くかもしれない。
まるで水中のようだ。耳に水が入れられたみたいな不安感。
距離感は全く掴めない。
なんだ……?なんて言ってる?
それは何かの歌のようでもあった。
童謡?わらべ唄?
前にも聞いたことのある曲だが思い出せない。
なんだ?知っている曲だと思うんだが判らない。
いつもだ。前にも同じ事が繰り返されていた気がする。
不意に耳鳴りがする。
歌声はだんだんとはっきり強く、近くなってくる。
何もわからない。
どこから聴こえて来るんだ?
四方八方から子どもの声が聴こえる。
あちこちに子供は散らばっている。
こんなに大勢どっから来たんだよ?俺に何を求めてるんだ?
子どもの声は次第に大きくなってくる。
ここは保育園か幼稚園なのか?
耳鳴りが更に強くなる。
頭が急激に痛くなったかと思えば、パッと解放されたように全ての感覚が元に戻った。
子どもの声も気配も消えていた。
静寂と暗闇。
至近距離、俺の耳元で誰かが囁いた。
『 後 ろ の 正 面 だ あ れ ? 』
その瞬間。
パチンと誰かが手を叩いたような音が聞こえた。
俺は目を開けた。
視界に飛び込んで来たのは天井だった。
見慣れた天井。
俺の自宅、いつもの俺の部屋だ。
俺は自宅の布団の中に横たわっていた。
周囲はしんと静まりかえっている。
俺は布団の中でしばらくぼんやりと考えを巡らせた。
俺は何をしてたんだっけ?
何も思い出せない。
昨晩普通に寝た?身に覚えはない。
いや、そうじゃない。
さっきまで……ここじゃない場所に居た筈だ。
部屋の時計が目に入る。
午前四時。
布団の横に転がっているスマホを手探りで掴もうとする。
スマホではない小さな何かに手が触れる。
なんだ?
掴んだそれは玩具の指輪だった。
指輪???玩具の??
は?
なんだこれ??
買った覚えはない。
やっとスマホを探り当て、右手で掴む。
そのホーム画面を凝視する。
”9月19日 4:04“
デジタルの表示が目に映る。
9月???
今は10月だろ、しかも下旬。
ここ数日、急に寒くなったってんでちょっと早いがコタツを押し入れから出してきたばっかりだ。
周囲からは涼やかな虫の声が聞こえて来る。
まだ夏の気配が残っているような空気だった。
俺はまた時間を戻ったのか?
待ってくれ、状況が整理できない。
ピロリ、とスマホが小さな音を立てる。
すぐに来い、という小泉からの短い連絡だった。
俺が童貞を捨てて戻って来たのは事実のようだ。
ぼんやりとした不安感と得体の知れない恐怖が身体に纏わりつく。
俺は───────────何もかもにキチンとケリを付けることが出来たのか?
身に覚えのある吐き気と眩暈が身体を覆う。
安っぽい古びた遊園地のアトラクションのように全身が回転させられるような感覚。
意識はぼんやりとして目の前は暗闇に包まれている。
暗闇。
俺の意識は遠のいたり近付いたりをゆらゆらと繰り返している。
身体は金縛りに遭ったように全く動かない。
ぼんやりとした思考の中で子どもの声…複数の子どもの声が聴こえて来る。
最初はボソボソとしか聴こえなかったその声がだんだんと近付いて来る。
いや、遠くかもしれない。
まるで水中のようだ。耳に水が入れられたみたいな不安感。
距離感は全く掴めない。
なんだ……?なんて言ってる?
それは何かの歌のようでもあった。
童謡?わらべ唄?
前にも聞いたことのある曲だが思い出せない。
なんだ?知っている曲だと思うんだが判らない。
いつもだ。前にも同じ事が繰り返されていた気がする。
不意に耳鳴りがする。
歌声はだんだんとはっきり強く、近くなってくる。
何もわからない。
どこから聴こえて来るんだ?
四方八方から子どもの声が聴こえる。
あちこちに子供は散らばっている。
こんなに大勢どっから来たんだよ?俺に何を求めてるんだ?
子どもの声は次第に大きくなってくる。
ここは保育園か幼稚園なのか?
耳鳴りが更に強くなる。
頭が急激に痛くなったかと思えば、パッと解放されたように全ての感覚が元に戻った。
子どもの声も気配も消えていた。
静寂と暗闇。
至近距離、俺の耳元で誰かが囁いた。
『 後 ろ の 正 面 だ あ れ ? 』
その瞬間。
パチンと誰かが手を叩いたような音が聞こえた。
俺は目を開けた。
視界に飛び込んで来たのは天井だった。
見慣れた天井。
俺の自宅、いつもの俺の部屋だ。
俺は自宅の布団の中に横たわっていた。
周囲はしんと静まりかえっている。
俺は布団の中でしばらくぼんやりと考えを巡らせた。
俺は何をしてたんだっけ?
何も思い出せない。
昨晩普通に寝た?身に覚えはない。
いや、そうじゃない。
さっきまで……ここじゃない場所に居た筈だ。
部屋の時計が目に入る。
午前四時。
布団の横に転がっているスマホを手探りで掴もうとする。
スマホではない小さな何かに手が触れる。
なんだ?
掴んだそれは玩具の指輪だった。
指輪???玩具の??
は?
なんだこれ??
買った覚えはない。
やっとスマホを探り当て、右手で掴む。
そのホーム画面を凝視する。
”9月19日 4:04“
デジタルの表示が目に映る。
9月???
今は10月だろ、しかも下旬。
ここ数日、急に寒くなったってんでちょっと早いがコタツを押し入れから出してきたばっかりだ。
周囲からは涼やかな虫の声が聞こえて来る。
まだ夏の気配が残っているような空気だった。
俺はまた時間を戻ったのか?
待ってくれ、状況が整理できない。
ピロリ、とスマホが小さな音を立てる。
すぐに来い、という小泉からの短い連絡だった。
俺が童貞を捨てて戻って来たのは事実のようだ。
ぼんやりとした不安感と得体の知れない恐怖が身体に纏わりつく。
俺は───────────何もかもにキチンとケリを付けることが出来たのか?
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる