[200万PV達成]それを捨てるなんてとんでもない！〜童貞を捨てる度に過去に戻されてしまう件〜おまけに相手の記憶も都合よく消えてる！？

ep10.

ep10.『聖母と道化、その支配人』 ストイックな体温と湿度

そうだ、水森は真面目でストイックな努力家なんだ。

俺はそれをよく知ってる。

だけど──────────どうしてその水森がこんな事を？

不可解な事実に、俺はややヤケクソ気味にこう尋ねる。

「水森、なんでこんな事してんだよ？」

我ながら豪速球過ぎるとは思うが─────────かと言って他にどう訊けばいいかなんて俺にはわからねぇんだ。

水森は何も答えない。

生温かい湿度の混じった空気と匂いを鼻腔から感じる。

それは生々し過ぎる“生”そのもののように思えた。

矛盾しているかのようではあったが─────────混じりっ気無しの純度100%の希死念慮とは真逆の“それ”は───────俺に確かな何かを感じさせてくれた。

なあ、と俺は声を掛けるも水森は反応しない。

答えられる状況じゃないんだろう。

どうした、と俺は水森の肩を揺さぶった。

水森は黙ったまま、俺の顔を見る。

いや、見えてないのか。

魂が抜けたかのような────────まるで正気を感じさせない瞳は俺を見てはいない。

一体何があったんだ、水森らしくない。

「水森。お前さ、割としっかりしたヤツだったじゃねぇか。いつも何でも頑張ってただろ？」

なあ、何があったんだんよ、と俺がそう訊ねると────────水森はただ一言、ポツリとこう言い放った。















「お母さんが……死んでたの。いつの間にか」