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ep.9.5
ep9.5『夢千夜』 “かりそめの花嫁” 第四夜 お姫様はガラスの靴で走れない
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不思議な気分だった。
気持ちは高揚しているのに───────足取りはどこまでも軽い。
浮遊感を伴う緊張はある種の心地よささえ感じる。
俺はウェディングドレス姿の小泉の手を引き、大聖堂目掛けて走る。
どういう訳か───────周囲に鐘の音が鳴り響く。
─────────馬鹿な!?
今は無人の筈だろ!?
大聖堂の鐘は狂ったように鳴り続ける。
ブッ壊れてるのか!?
いや、今こんなのは───────大したことじゃない。
俺達は不安を抱えながらも────────だけど、共通する確かな確証のようなものを─────────口にこそ出さないでいたが、頭の中ではそれを理解し切っていた。
““これから何が起こるか””
そうだ、これは確定してるんだ。
俺達は今からここで───────なんの躊躇もなく“作業”を始めるだろう。
俺の方はともかく、小泉もそれは同じなんだ。
”お互い“に“理解”している。
もう腹は括ってるんだよ。
その覚悟は完了してるんだ。
何も言葉を交わしたりしなくても───────小泉の目を見ればそれは明らかだった。
”これから何が起こるか理解した上での不安感“をその目に宿している。
いつもとは違う小泉の姿と表情に────────俺もどことなく、ぎこちなく接してしまう。
花びらの舞う庭園を全速力で駆け抜ける中、小泉が不意に悲鳴を上げる。
「……ひゃっ!?」
どうした!?と俺は手を繋いだままの状態で振り返る。
見ると──────小泉は地面に蹲っていた。
「……センセェ!?」
小泉は蹲ったまま、右足首を強く握っている。
見れば───────真っ白な靴のヒール部分が根本からポッキリと折れていた。
「ヒールが折れた拍子に───────少し足を捻ったみたいだ」
小泉は申し訳無さそうな様子で俺にそう告げる。
「いや、こんなにヒールが高いなんて知らなくてさ……悪ィ、こんな靴とドレスじゃ走るの無理だったよな?」
ドレスと同じ生地で作られた、純白の靴はヒール部分が恐ろしく細く、それでいて高かった。
シンデレラの靴ってのもこうなんだよな?
お姫様や花嫁の靴ってのはきっとこんなもので────────おそらく走るのには全く向いて無いんだろう。
だってあのシンデレラですら片方落っことしちまうんだぜ?
それくらい履きにくくて走りづらい代物なんだろうな。
「……あとちょっとだからさ」
そう言いながら俺は小泉を抱き抱えた。
「……っ!?」
……佐藤!?と小泉が小さく俺の名前を呼ぶ。
俺達はそのままの状態で────────大聖堂の正面扉から中に足を踏み入れた。
気持ちは高揚しているのに───────足取りはどこまでも軽い。
浮遊感を伴う緊張はある種の心地よささえ感じる。
俺はウェディングドレス姿の小泉の手を引き、大聖堂目掛けて走る。
どういう訳か───────周囲に鐘の音が鳴り響く。
─────────馬鹿な!?
今は無人の筈だろ!?
大聖堂の鐘は狂ったように鳴り続ける。
ブッ壊れてるのか!?
いや、今こんなのは───────大したことじゃない。
俺達は不安を抱えながらも────────だけど、共通する確かな確証のようなものを─────────口にこそ出さないでいたが、頭の中ではそれを理解し切っていた。
““これから何が起こるか””
そうだ、これは確定してるんだ。
俺達は今からここで───────なんの躊躇もなく“作業”を始めるだろう。
俺の方はともかく、小泉もそれは同じなんだ。
”お互い“に“理解”している。
もう腹は括ってるんだよ。
その覚悟は完了してるんだ。
何も言葉を交わしたりしなくても───────小泉の目を見ればそれは明らかだった。
”これから何が起こるか理解した上での不安感“をその目に宿している。
いつもとは違う小泉の姿と表情に────────俺もどことなく、ぎこちなく接してしまう。
花びらの舞う庭園を全速力で駆け抜ける中、小泉が不意に悲鳴を上げる。
「……ひゃっ!?」
どうした!?と俺は手を繋いだままの状態で振り返る。
見ると──────小泉は地面に蹲っていた。
「……センセェ!?」
小泉は蹲ったまま、右足首を強く握っている。
見れば───────真っ白な靴のヒール部分が根本からポッキリと折れていた。
「ヒールが折れた拍子に───────少し足を捻ったみたいだ」
小泉は申し訳無さそうな様子で俺にそう告げる。
「いや、こんなにヒールが高いなんて知らなくてさ……悪ィ、こんな靴とドレスじゃ走るの無理だったよな?」
ドレスと同じ生地で作られた、純白の靴はヒール部分が恐ろしく細く、それでいて高かった。
シンデレラの靴ってのもこうなんだよな?
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「……あとちょっとだからさ」
そう言いながら俺は小泉を抱き抱えた。
「……っ!?」
……佐藤!?と小泉が小さく俺の名前を呼ぶ。
俺達はそのままの状態で────────大聖堂の正面扉から中に足を踏み入れた。
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