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ep9
ep9『ナイト・オブ・ファイヤー』 Boom Boom Dollar
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コイツの言ったことは本当なんだろうか。
にわかには信じ難い話に、俺は言葉を失う。
概史は無言のまま、覆面シスターを睨みつけている。
「そんな事したってアンタは満足出来ないだろうよ。アンタの欲しいものは永遠に手に入らないんだからさ」
クソ女、と呟く姿はさっきまでの概史とは別人のようにすら思えた。
もう何が何だかわからない。
しかし。
意外なことに───────概史の挑発を目隠しシスターは見過ごす事が出来なかったようだ。
さっきの短い言葉のうちの何かが、このシスターにクリティカルを決めてしまったんだろう。
目隠しシスターは鈴木先輩に向かってこう言った。
「貴方だけで済ませようと思ってたけれど────────いいわ。そこの坊やを先に始末してあげる」
「……なっ!」
鈴木先輩の顔色がサッと変わった。
目隠しシスターはこちら側に歩いてくる。
てか、目ェ見えてねぇのか?どうなんだ?
おそらくだが話し声から方向や距離を推測してるんだろう。
「貴方ね。……見込みのある子なのに惜しいわ」
目隠しシスターは近くまで来ると──────概史の足元にナイフを投げた。てか、何本ナイフ持ってんだよ。
「そのナイフで貴方の耳を切り落としなさい」
は……!?
湯浅と俺は目の前にいる目隠しシスターの静かな狂気に圧倒されて声も出ない。
「……っ!」
もう訳がわかんねぇ。
このシスターは気に入らねぇ人間の身体の一部を欠損させて回る性癖でもあるのか!?
耳を切り落とす!?
そんなのゴッホか耳なし芳一以外でやりたがる奴なんていねぇだろうが!?
目隠しシスターのその言葉を───────概史は更に挑発するかのように鼻で笑った。
「可哀想な人だな、アンタさ。こんな事して意味あんの?」
おいおいおいおい。
これ以上この目隠しシスターをキレさせてどうすんだよ!?
もしも鈴木先輩の奥さんに危害が加えられたら────────!?
俺がパニックになっていると、目隠しシスターもまたクスクスと笑った。
「──────いい度胸ね。気に入ったわ」
それから次に目隠しシスターは圧のある様子でこう宣言した。
「それをこちらに撃ちなさい」
いい?これは命令よ、と目隠しシスターは微動だにせず続けた。
「は……?!」
『撃て』って言ったのか?
概史も微動だにせず、ただひたすら目隠しシスターを凝視している。
どうしたんだ概史は───────?
何か策でもあるのか?
俺が困惑していると、目隠しシスターはこう続けた。
「“撃たない”んじゃなくて……“撃てない”んじゃないかしら?」
『撃てない』?
へぇ、と概史は余裕ありげな様子でニヤリと笑った。
「いいの?じゃあ撃たせて貰うけどさ───────」
どうなっても知らないよ、と念押ししながら概史は目隠しシスターに照準を合わせ、引き金に指を掛ける。
「……!」
とてつもない緊張が周囲にも伝染し、オーディエンスがしんと静まりかえった瞬間だった。
“パァン!“という乾いた音と共に、銀テープと紙吹雪が周囲に舞い上がった。
なんだこれは!?
「wwwww」
銀テープと紙吹雪を頭から被った目隠しシスターに対し、概史はゲラゲラと笑った。
「ざまあwww店の貸切りパーティーで使って余ってた特大ロケラン型クラッカーwwwクリティカルヒットwww」
パーティー用の特大クラッカーだったのか!?
まあ、そうだよな──────────
冷静に考えたら、普通の小学生がロケットランチャーとか持ってねぇよな。
だけど。
さっきまでの流れとはうって変わって状況がマズくなってねぇか!?
もう俺らに打てる手段とかなくね!?
一気にヤバい状況に陥っているのが伝わってくる。
俺がビビり散らしていると───────隣の湯浅がこう言った。
「ほう。特大クラッカーですか。たいしたものですね」
は?と俺が聞き返すと湯浅は眼鏡のフチをクイと持ち上げてこう続けた。
「よくぞここまで時間を稼いでくれたものです」
なんだ?
「それってどういう意味───────」
俺がそう聞き返した瞬間だった。
背後から聞き覚えのある声が響いた。
「……でかしたアル!なんとか間に合ったアルな!」
にわかには信じ難い話に、俺は言葉を失う。
概史は無言のまま、覆面シスターを睨みつけている。
「そんな事したってアンタは満足出来ないだろうよ。アンタの欲しいものは永遠に手に入らないんだからさ」
クソ女、と呟く姿はさっきまでの概史とは別人のようにすら思えた。
もう何が何だかわからない。
しかし。
意外なことに───────概史の挑発を目隠しシスターは見過ごす事が出来なかったようだ。
さっきの短い言葉のうちの何かが、このシスターにクリティカルを決めてしまったんだろう。
目隠しシスターは鈴木先輩に向かってこう言った。
「貴方だけで済ませようと思ってたけれど────────いいわ。そこの坊やを先に始末してあげる」
「……なっ!」
鈴木先輩の顔色がサッと変わった。
目隠しシスターはこちら側に歩いてくる。
てか、目ェ見えてねぇのか?どうなんだ?
おそらくだが話し声から方向や距離を推測してるんだろう。
「貴方ね。……見込みのある子なのに惜しいわ」
目隠しシスターは近くまで来ると──────概史の足元にナイフを投げた。てか、何本ナイフ持ってんだよ。
「そのナイフで貴方の耳を切り落としなさい」
は……!?
湯浅と俺は目の前にいる目隠しシスターの静かな狂気に圧倒されて声も出ない。
「……っ!」
もう訳がわかんねぇ。
このシスターは気に入らねぇ人間の身体の一部を欠損させて回る性癖でもあるのか!?
耳を切り落とす!?
そんなのゴッホか耳なし芳一以外でやりたがる奴なんていねぇだろうが!?
目隠しシスターのその言葉を───────概史は更に挑発するかのように鼻で笑った。
「可哀想な人だな、アンタさ。こんな事して意味あんの?」
おいおいおいおい。
これ以上この目隠しシスターをキレさせてどうすんだよ!?
もしも鈴木先輩の奥さんに危害が加えられたら────────!?
俺がパニックになっていると、目隠しシスターもまたクスクスと笑った。
「──────いい度胸ね。気に入ったわ」
それから次に目隠しシスターは圧のある様子でこう宣言した。
「それをこちらに撃ちなさい」
いい?これは命令よ、と目隠しシスターは微動だにせず続けた。
「は……?!」
『撃て』って言ったのか?
概史も微動だにせず、ただひたすら目隠しシスターを凝視している。
どうしたんだ概史は───────?
何か策でもあるのか?
俺が困惑していると、目隠しシスターはこう続けた。
「“撃たない”んじゃなくて……“撃てない”んじゃないかしら?」
『撃てない』?
へぇ、と概史は余裕ありげな様子でニヤリと笑った。
「いいの?じゃあ撃たせて貰うけどさ───────」
どうなっても知らないよ、と念押ししながら概史は目隠しシスターに照準を合わせ、引き金に指を掛ける。
「……!」
とてつもない緊張が周囲にも伝染し、オーディエンスがしんと静まりかえった瞬間だった。
“パァン!“という乾いた音と共に、銀テープと紙吹雪が周囲に舞い上がった。
なんだこれは!?
「wwwww」
銀テープと紙吹雪を頭から被った目隠しシスターに対し、概史はゲラゲラと笑った。
「ざまあwww店の貸切りパーティーで使って余ってた特大ロケラン型クラッカーwwwクリティカルヒットwww」
パーティー用の特大クラッカーだったのか!?
まあ、そうだよな──────────
冷静に考えたら、普通の小学生がロケットランチャーとか持ってねぇよな。
だけど。
さっきまでの流れとはうって変わって状況がマズくなってねぇか!?
もう俺らに打てる手段とかなくね!?
一気にヤバい状況に陥っているのが伝わってくる。
俺がビビり散らしていると───────隣の湯浅がこう言った。
「ほう。特大クラッカーですか。たいしたものですね」
は?と俺が聞き返すと湯浅は眼鏡のフチをクイと持ち上げてこう続けた。
「よくぞここまで時間を稼いでくれたものです」
なんだ?
「それってどういう意味───────」
俺がそう聞き返した瞬間だった。
背後から聞き覚えのある声が響いた。
「……でかしたアル!なんとか間に合ったアルな!」
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