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ep9『ナイト・オブ・ファイヤー』 STOP THE FIRE

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そんな事ってあるか────────!?

『燃料の残量』という斜め上の概念を知らされ、俺は愕然とする。

アニメでもマンガでも、こういうバトルや抗争だのでそういうハナシを聞いた事がない。

現実でのバトルだから制限があっても当たり前なのかもしれないが───────

いや、よく考えたら格ゲーにもタイムアップって概念もあるし、超必ゲージってシステムもあるよな。

いわゆる『超必殺技』ってヤツはゲージが満タンになってるか、自分の体力が残り少なくなってる時にしか使えねぇんだ。

じゃあ、やっぱ道理に適ってるか───────?

俺は考えを巡らせながら鈴木先輩の動きを見守った。

少し炎の威力が落ちている気はするが、鈴木先輩の蹴りは健在だ。

もう10人以上はぶっ飛ばしただろうか。

一人でかなり討伐してるじゃねぇか。やっぱ無双に違いねぇ。

俺がそう思っていると────────チー牛っぽい男、湯浅が呟く。

「……まずいですね」

は?何がマズいんだよ?と俺が聞き返すと湯浅はまたしても眼鏡の縁をクイっと上げた。

「貴方も気付いたでしょう。序盤より火力が落ちています」

燃料の残量は20%を切っていると言った所でしょうか、と解説する湯浅は何故か落ち着き払っている。

「まあ……最悪、超必が使えなくても鈴木先輩なら通常技だけで雑魚どもをどうにか出来るだろ」

何せ、フィジカルとメンタル、経験が段違いじゃねぇか。

実戦に慣れてないクソ雑魚ナメクジ共が何十人も束になって掛かってきた所で鈴木先輩の相手じゃねぇだろう。

どう転んでも瞬殺じゃねぇか。

俺がそう言った瞬間だった。

空き地の奥、中央部分に立つ人影が視界に入る。

「─────久しぶりね。相変わらずじゃないの」

その人物を見た俺は絶句する。

シスターの姿をした若い女。

それは確実に見覚えのある人物だった。

「は……!?なんでコイツがここに───────!?」

以前、『C ∴M ∴』っていう組織の話を少し聞いたが─────────

その中に居た3人のシスターのうちの一人じゃないのか!?

顔の半分は目隠しのような黒い布で覆われている。

多分、3人の真ん中に居たシスターだろう。

鈴木先輩はシスターの姿を見ると静かにこう言った。

「桃花……」

やっぱりお前じゃったか、というその表情は読めない。

え?なに?

この二人って知り合い!?

違法薬物に関わっていると思われる謎の組織『C ∴M ∴』──────────

そのど真ん中、センターの位置を陣取ってる女と鈴木先輩が知り合いなのか!?

てか、どう言う関係!?

話が急すぎて全く付いていけない俺はただひたすら狼狽する。

「なんで今日はコスプレイヤーばっか出てくるんだよww」

平静を装っているつもりの概史もかなり困惑しているように見えた。

なんなんだ、この状況は。

オーディエンスや雑魚の兵隊共もこの女の様子を恐る恐る見つめているようだ。

え?この目隠しシスターがラスボス的な立ち位置なん?

なんで鈴木先輩を呼び付けた?

俺達の困惑を他所に、目隠しのシスターは冷静な様子でこう言い放つ。

「解ってるでしょう?その炎を消しなさい」

「……」

鈴木先輩は黙ったまま動かない。

「───────八宇は何処だ?」

見たことのない険しい表情で鈴木先輩が目隠しシスターを睨み付けた。

「用があるのは貴方一人。こちらの指示に従うならあの女と子供には手出ししないわ」

「……っ!」

目隠しシスターがそう言うと、武器の炎が静かに消えた。

「……鈴木先輩!?」

てか、マジで炎を消したのか!?

この目隠しシスター相手には戦わないって意味!?

思わず俺は声に出してしまう。

「この場合は仕方ありません。人質を取られている以上、いくら内藤さんと言えども下手な動きは出来ないでしょう」

背後で湯浅がそう言ったが──────俺には分からない。

なんだこれ、どうすりゃいいんだ!?

いい子ね、と目隠しシスターは満足げに呟いた。

それから、ゆっくりと空き地の中央部分、鈴木先輩の方向へ向かって歩き始めた。

「……次は何をして貰おうかしら?」

そうねぇ、と目隠しシスターは勿体ぶった様子でこう言い放った。



















「じゃあ次は─────────このナイフで貴方の指10本全部、切り落として貰おうかしら?」



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