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ep9
ep9『ナイト・オブ・ファイヤー』 天高く青い春
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あ、でもそれじゃあ、と概史が真顔でこう口を開く。
「さっきの話、結局佑ニーサンの持説がより強化された感じになってません?」
だって18で結婚する予定の人達なんでしょ?という概史の言葉も一理ある気がしてきた。
「うん?そういやそうだな」
俺がそう呟くと佑ニーサンが勝ち誇ったようにこう言い放つ。
「そうでしょそうでしょ~?そう思うでしょ~?」
結局、と佑ニーサンは続けた。
「セックスする順番が先になるか後になるかの違いだけでさ~?10代や20歳前後で結婚するのってある意味、間違ってはないと思うんだよね~?」
そうかもwと概史も相槌を打つ。
「オレも鈴木先輩みたいに早く結婚したいですもんw車の免許も取って、あとそれから─────────」
いや、と鈴木先輩が首を振る。
「さっきから聞きょうりゃあ……わしの事を買い被りすぎじゃ。さっきも言うたじゃろうが。出来婚なんか褒められたもんじゃないけぇの」
それに概史、と鈴木先輩は真顔でこう念押しする。
「高校だけは出とかんといけんぞ。仕事するにしても、中卒と高卒じゃかなり違うけぇのう」
そっスねwと概史もそれに同意する。
「鈴木先輩の話聞いたらw資格とか大事って分かりましたしwオレも工業高校行って色んな資格いっぱい取ってみたいっスねww」
いい心がけだねぇ、と佑ニーサンは満足そうに微笑む。
「やっぱさ、こういうのが僕らの幸せの方向性だと思うんだよね~」
エアコンの空調の音が室内に響く。
「衰退した地方都市で10代のうちに結婚する。休日はイオンのフードコートに家族で行って、しまむらユニクロGUで買った服を着る。たまに奮発してサイゼリヤで食事して、誕生日や結婚記念日には嫁からのリクエストで4℃のアクセサリーをプレゼントする。こういうのって─────────」
都会に住んでる人からしたら信じられない、唾棄すべき貧しい暮らしなんだろうけどね~と佑ニーサンは続けた。
「『井の中の蛙、大海を知らず』って諺(ことわざ)があるでしょう~?まさにあんな感じで───────」(※1)
佑ニーサンの話を遮り、概史が口を挟む。
「あっwそれww知ってますwww続きがあるんスよね?wwwその諺(ことわざ)www確か──────」
『されど空の青さを知る』でしたよねwと概史がやや得意げに豆知識を披露する。(※2)
ふむ。
そういや、なんか聞いた事がある気もするな?
そうそう、と佑ニーサンが頷く。
「僕達は確かにさ、都会でのタワマン暮らしだのブランド品だのっていうハイスペで華やかな生活とは無縁だよ~?多分、一生この土地を離れないと思うしねぇ~?」
けどねぇ、と佑ニーサンは続けた。
「誰もがハイスペの生活を手に入れられるって訳じゃない以上は~身の丈に合った暮らしでさ~愛する彼女と家庭を築いていくような方向性ってのも悪くないと思うんだよね~」
そっスね、と概史も頷く。
「SNSから流れてくるキラキラ生活とか……追っかけて捕まえられた人はいいっスけど──────それが手に入らないまま歳とった人は後から方向転換すんの難しいんじゃないんスかね」
なるほどな?
これも一理ある気もする。
俺は佑ニーサンと概史の話の続きに黙って耳を傾けた。
多分だけど~と佑ニーサンは更にこう続ける。
「これからの時代さ~。この国はどんどん貧乏でハードモードに突入するでしょう~?その時にさ─────────」
その次の佑ニーサンの言葉に、俺は何故かハッとした。
「真っ先に切り捨てておかないと自分自身が追い込まれるのが───────『見栄』と『虚栄心』だと思うんだよね~」
(※1)
中国の古典「荘子」から来た言葉と言われている。
狭くて閉じた世界観の中にあり、広い世界を知らないさま。また、そのような状態にある人。井蛙。
(引用:weblio辞書「井の中の蛙」)
<原文>
「井蛙不可以語於海者、拘於虚也。」
井蛙(せいあ)には以(も)て海を語るべからざるは、虚に拘(かかわ)ればなり。
(引用:三省堂Word-Wise Web)
(※2)
後半部分は後に日本独自に付け加えられたもの。
「さっきの話、結局佑ニーサンの持説がより強化された感じになってません?」
だって18で結婚する予定の人達なんでしょ?という概史の言葉も一理ある気がしてきた。
「うん?そういやそうだな」
俺がそう呟くと佑ニーサンが勝ち誇ったようにこう言い放つ。
「そうでしょそうでしょ~?そう思うでしょ~?」
結局、と佑ニーサンは続けた。
「セックスする順番が先になるか後になるかの違いだけでさ~?10代や20歳前後で結婚するのってある意味、間違ってはないと思うんだよね~?」
そうかもwと概史も相槌を打つ。
「オレも鈴木先輩みたいに早く結婚したいですもんw車の免許も取って、あとそれから─────────」
いや、と鈴木先輩が首を振る。
「さっきから聞きょうりゃあ……わしの事を買い被りすぎじゃ。さっきも言うたじゃろうが。出来婚なんか褒められたもんじゃないけぇの」
それに概史、と鈴木先輩は真顔でこう念押しする。
「高校だけは出とかんといけんぞ。仕事するにしても、中卒と高卒じゃかなり違うけぇのう」
そっスねwと概史もそれに同意する。
「鈴木先輩の話聞いたらw資格とか大事って分かりましたしwオレも工業高校行って色んな資格いっぱい取ってみたいっスねww」
いい心がけだねぇ、と佑ニーサンは満足そうに微笑む。
「やっぱさ、こういうのが僕らの幸せの方向性だと思うんだよね~」
エアコンの空調の音が室内に響く。
「衰退した地方都市で10代のうちに結婚する。休日はイオンのフードコートに家族で行って、しまむらユニクロGUで買った服を着る。たまに奮発してサイゼリヤで食事して、誕生日や結婚記念日には嫁からのリクエストで4℃のアクセサリーをプレゼントする。こういうのって─────────」
都会に住んでる人からしたら信じられない、唾棄すべき貧しい暮らしなんだろうけどね~と佑ニーサンは続けた。
「『井の中の蛙、大海を知らず』って諺(ことわざ)があるでしょう~?まさにあんな感じで───────」(※1)
佑ニーサンの話を遮り、概史が口を挟む。
「あっwそれww知ってますwww続きがあるんスよね?wwwその諺(ことわざ)www確か──────」
『されど空の青さを知る』でしたよねwと概史がやや得意げに豆知識を披露する。(※2)
ふむ。
そういや、なんか聞いた事がある気もするな?
そうそう、と佑ニーサンが頷く。
「僕達は確かにさ、都会でのタワマン暮らしだのブランド品だのっていうハイスペで華やかな生活とは無縁だよ~?多分、一生この土地を離れないと思うしねぇ~?」
けどねぇ、と佑ニーサンは続けた。
「誰もがハイスペの生活を手に入れられるって訳じゃない以上は~身の丈に合った暮らしでさ~愛する彼女と家庭を築いていくような方向性ってのも悪くないと思うんだよね~」
そっスね、と概史も頷く。
「SNSから流れてくるキラキラ生活とか……追っかけて捕まえられた人はいいっスけど──────それが手に入らないまま歳とった人は後から方向転換すんの難しいんじゃないんスかね」
なるほどな?
これも一理ある気もする。
俺は佑ニーサンと概史の話の続きに黙って耳を傾けた。
多分だけど~と佑ニーサンは更にこう続ける。
「これからの時代さ~。この国はどんどん貧乏でハードモードに突入するでしょう~?その時にさ─────────」
その次の佑ニーサンの言葉に、俺は何故かハッとした。
「真っ先に切り捨てておかないと自分自身が追い込まれるのが───────『見栄』と『虚栄心』だと思うんだよね~」
(※1)
中国の古典「荘子」から来た言葉と言われている。
狭くて閉じた世界観の中にあり、広い世界を知らないさま。また、そのような状態にある人。井蛙。
(引用:weblio辞書「井の中の蛙」)
<原文>
「井蛙不可以語於海者、拘於虚也。」
井蛙(せいあ)には以(も)て海を語るべからざるは、虚に拘(かかわ)ればなり。
(引用:三省堂Word-Wise Web)
(※2)
後半部分は後に日本独自に付け加えられたもの。
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