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ep9

ep9『ナイト・オブ・ファイヤー』 Talking about SEX and LIFE その①

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「ん~。これで僕が普段から提唱してる理論の正しさが証明されたよね~」

なんスかそれwと概史が聞き返すと佑ニーサンは得意げに語り始めた。

「うん?僕ね、『地方在住元ヤン最強説』を前から推してたんだけど~」

酒の入った佑ニーサンが饒舌に語り始める。

「地頭が良くてコミュ力が高く、10代もしくは20歳前後で結婚して子どもバンバン作ってる元ヤン、もしくはマイルドヤンキーが実はこの国では最強の勝ち組なんじゃないかって前々から思ってたんだよねぇ~」

あーあ。こうなったら佑ニーサンの話は長いんだ。

俺は少しウンザリしながらも─────────目の前のキャベツ太郎を平げながらその話に耳を傾けた。

「無理して奨学金借りて大学に行って、奨学金返し終わる頃まで結婚も出来ないとかいう人も多いって聞くもんね~」

別にその後結婚すれば良くないっスかwと概史が口を挟む。

「まあ、それでもいいんだけどね~あんまり遅くなると婚活のあとに妊活するのも結構しんどいものがあるって言うからね~」

妊活。そういうのもあるのか。

「えwww結婚したら子どもってすぐに出来るモンじゃないんスかww」

ヤリまくれば良くねwwwと主張する概史に対し、佑ニーサンは静かに首を振った。

「いや、人によるかもだけど~そんな甘くは無いんだよね~」

1000万や1500万掛けて不妊治療したって夫婦が、結局子どもを授かれず諦めたって話も聞いたことあるし……という佑ニーサンの言葉に俺は恐れ慄いた。

1000万!?1500万!?

さっきの鈴木先輩の住宅ローンの金額より多くないか!?

俺からしたら天文学的な金額に感じられる。

しかもそれでも子どもが生まれなかった!?

「あー。なんかテレビのドキュメンタリー的なのでそういうのちょっと見たことあるかもっスね」

概史も真剣な面持ちで相槌を打つ。

なんてむごい話だろう。

子どもを望んでいたのに、全財産 (かどうかわからないが)を投げ打って治療に掛けても妊娠出来ないことがあるのか。

こんな悲しい事があるなんて─────────

「じゃあ結局、どうすりゃ正解なんスか」

概史がやや考え込むように呟くと、佑ニーサンがこう言い切った。

「だからもうさ、みんな10代とか二十歳ぐらいで結婚しちゃえばよくない~?」

ええwwwと概史が苦笑いを浮かべた。

「そりゃ、出来ればオレもそうしたいって思ってますけどwww」

概史がそう答えると、佑ニーサンがこう続けた。

「すっごい頭がいいとか、すっごい学ぶ意欲があるとか、すっごい実家が太いとか、生まれた時から学資積み立てして貰ってるとか、そういう子達は是非とも大学に行くべきだと思うんだよね~」

けど、と佑ニーサンが強調する。

「でも、そうじゃなくて……『ただなんとなく』とか『大学くらい出とかないと恥ずかしい』とか『まだ働きたくないから』みたいな理由で奨学金借りてまでヤル気もなく大学に通うくらいだったら行かない方がマシなんじゃないかなって気がするんだけど~」

なるほど。

大学ってのは勉強したい奴が行くとこだもんな。

特に勉強したい訳でもないのに奨学金ていう借金背負ってまで大学に行ってもデメリットの方が大きいって事なのか。

「今はさ~。偏差値40の高卒ブルーカラーと偏差値50の大卒ホワイトカラーの年収が逆転してるってケースも一部では観測されてるからね~」(※1)

なるほど?

逆に、鈴木先輩みたいに資格取るのに特化した工業高校卒の方が稼げるって可能性もあるんだな。

[大卒が偉くて、高卒はその下][スーツ着たサラリーマンが上で、ツナギを着た作業員が下]

そんな風に無意識に思い込んでいたけど────────────今の時代、そうとは限らないって事なんだろうか。

「えっwwじゃあ、鈴木先輩、最強って事なんすかwwウケるwww世はまさにwww大ヤンキー時代wwwww」

”、か。

言い得て妙だな。












朧げながら進むべき自分の未来の輪郭が見えてきた気がした俺は─────────佑ニーサンの話の続きに耳を傾けた。









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