815 / 1,060
ep9
ep9『ナイト・オブ・ファイヤー』 静かな日々の階段を
しおりを挟む
着替えた俺は冷蔵庫を開けた。
中は空だった。
昨日の給食はチキンライスだったっけ?
こういうメニューの日は余ったパンを持って帰れないから厳しいんだよな。
給料日前だし、食材もロクなものがない。
おまけに今日は土曜日だ。
学校がないから給食も無ぇ。
誰かに食べさせて貰うか?
真っ先に小泉のトコが浮かぶが────────俺は慌ててそれを否定した。
どんな顔して小泉の部屋に行けばいいんだよ?
気まず過ぎる。
俺一人が勝手に意識してるだけなんだけど、それでもなんかやっぱ無理だ。
じゃあどうする?
どこで食べさせて貰うか─────────
ふと、概史のことが脳裏に浮かぶ。
アイツんとこならなんか食い物がありそうだ。
兄貴のフーミンは朝帰りしてくるし───────
余った食材や客からの差し入れを持ち帰ったりしてるしな。
とにかく空腹だった俺は、概史の家に行ってみることにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「どしたんすかww先輩www珍しいじゃないスかwwwww」
いつもの調子で俺を出迎えてくれた概史だったが、その部屋を見た俺は絶句した。
彼女の撫子の姿が見える。
こんな朝早くから何やってんだ!?
「おいおいおい、まさかお泊りとかしてたのか?」
だったら邪魔したな、と俺がやや遠慮しながら言うと概史は首を振った。
「んなワケないっスよwwwww違いますってwwwww」
撫子と目が合うとこちらに軽く会釈をしてくる。
その横には─────幼稚園くらいと思しき小さな女の子が座っていた。
「え?どしたんこの子……」
俺がそう言いかけると、概史はまた奇妙なテンションで説明を始めた。
「妹っスよww撫子のwwなんかww今日ww保育園に登園禁止らしくてww子守りしなきゃなんねぇらしいっスww」
なるほど。
「ふーん。そっか。けど、登園禁止って?」
それは、と撫子が口を開いた。
「37.5度以上の熱があったら休まなきゃいけなくて……」
俺はもう一度女の子の様子を見た。
確かに、元気いっぱいって訳では無さそうだが──────そこまで病人だとも思えなかった。
まあ、37度くらいならそんなに高熱って訳でも無いよな。
「なんかwwこの子ww熱が出やすいらしくてwwめっちゃ苦労してるみたいっスwwww」
そう言いながら概史は手際よくベーコンエッグを皿に乗せていく。
「あww先輩の分も作りますんでwwwそこに座って待ってて下さいねwwwww」
概史はフーミンの店の手伝いとかたまにやってるからか、料理とか一通りできるんだよな。
なんなら俺よりレベルが高いまである。
「おう、なんか悪いな」
別にいいっスよwwといつものように笑いながら概史はコンロの前に戻る。
「おねぇちゃん、あのね、ほん、よんで」
女の子が撫子に本を差し出す。
「いいわよ」
撫子がコクンと頷き、静かな声で絵本を読み始める。
その光景を見た俺はドキリとしてしまう。
二人が読んでいたのは──────『人魚姫』の絵本だった。
中は空だった。
昨日の給食はチキンライスだったっけ?
こういうメニューの日は余ったパンを持って帰れないから厳しいんだよな。
給料日前だし、食材もロクなものがない。
おまけに今日は土曜日だ。
学校がないから給食も無ぇ。
誰かに食べさせて貰うか?
真っ先に小泉のトコが浮かぶが────────俺は慌ててそれを否定した。
どんな顔して小泉の部屋に行けばいいんだよ?
気まず過ぎる。
俺一人が勝手に意識してるだけなんだけど、それでもなんかやっぱ無理だ。
じゃあどうする?
どこで食べさせて貰うか─────────
ふと、概史のことが脳裏に浮かぶ。
アイツんとこならなんか食い物がありそうだ。
兄貴のフーミンは朝帰りしてくるし───────
余った食材や客からの差し入れを持ち帰ったりしてるしな。
とにかく空腹だった俺は、概史の家に行ってみることにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「どしたんすかww先輩www珍しいじゃないスかwwwww」
いつもの調子で俺を出迎えてくれた概史だったが、その部屋を見た俺は絶句した。
彼女の撫子の姿が見える。
こんな朝早くから何やってんだ!?
「おいおいおい、まさかお泊りとかしてたのか?」
だったら邪魔したな、と俺がやや遠慮しながら言うと概史は首を振った。
「んなワケないっスよwwwww違いますってwwwww」
撫子と目が合うとこちらに軽く会釈をしてくる。
その横には─────幼稚園くらいと思しき小さな女の子が座っていた。
「え?どしたんこの子……」
俺がそう言いかけると、概史はまた奇妙なテンションで説明を始めた。
「妹っスよww撫子のwwなんかww今日ww保育園に登園禁止らしくてww子守りしなきゃなんねぇらしいっスww」
なるほど。
「ふーん。そっか。けど、登園禁止って?」
それは、と撫子が口を開いた。
「37.5度以上の熱があったら休まなきゃいけなくて……」
俺はもう一度女の子の様子を見た。
確かに、元気いっぱいって訳では無さそうだが──────そこまで病人だとも思えなかった。
まあ、37度くらいならそんなに高熱って訳でも無いよな。
「なんかwwこの子ww熱が出やすいらしくてwwめっちゃ苦労してるみたいっスwwww」
そう言いながら概史は手際よくベーコンエッグを皿に乗せていく。
「あww先輩の分も作りますんでwwwそこに座って待ってて下さいねwwwww」
概史はフーミンの店の手伝いとかたまにやってるからか、料理とか一通りできるんだよな。
なんなら俺よりレベルが高いまである。
「おう、なんか悪いな」
別にいいっスよwwといつものように笑いながら概史はコンロの前に戻る。
「おねぇちゃん、あのね、ほん、よんで」
女の子が撫子に本を差し出す。
「いいわよ」
撫子がコクンと頷き、静かな声で絵本を読み始める。
その光景を見た俺はドキリとしてしまう。
二人が読んでいたのは──────『人魚姫』の絵本だった。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる