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ep9
ep9『夢千夜』 “偽りの花嫁” 第二十一夜
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「ちょっ……!!!」
小泉が俺を突き飛ばそうと身を捩る。
「っざけるな……っ!!」
お前な、と小泉は俺を睨みつけた。
「煙草……辞めてないじゃないか!?」
あれほど言ったのに嘘だったのか、と小泉は怒りと失望が入り混じったような表情で俺を見る。
あ、バレた?と俺はシラを切った。
やっぱ匂いとかで判るんだろうか。
それとも。
─────────いや、今はどうでもいいだろ、そんな事は。
俺は自分の中に浮かんだ僅かな感情に対し、見ないふりをして蓋をした。
小泉は長く白い手袋を付けたままその口元を拭う仕草を見せる。
「……」
無言のままの小泉の感情は俺にはわからない。
けど、それもどうでもいい事だ。
小泉が納得していようがして無かろうが関係ねぇんだよ。
俺はもう一度小泉の手首を掴んだ。
「わかってんだろ?もうこうするしかねぇんだよ」
「……っ!」
小泉は息を呑み、それから小さくこう絞り出した。
「────お前、ドアの鍵は掛けたのか?」
「鍵?」
そうか。花嫁の控室ってのはドレスに着替えたりお色直ししたりとかするんだよな?
じゃあ当然、鍵も付いてる訳で───────
「いや、知らん。そんな余裕ねぇし」
俺はざっと部屋を見回した。
ベッドみたいな物は当然だが無い。
床でやるか?
ふと、窓際に猫足の立派なソファが置いてあるのに気付く。
「もうここでいいや」
俺は小泉の身体を掴み、強引にソファの座面に押し当てた。
逃げられないように小泉の身体の上に馬乗りになる。
「……っ!?」
私はまだ何も──────と小泉が言いかけた言葉を遮って俺はこう言った。
「話は後で聞くから。とにかく脱げよ」
俺がドレスの胸部分を掴むと小さく悲鳴が上がる。
「馬鹿!レンタル品だって言っただろう!?」
乱暴に扱うんじゃない!と抗議してくる小泉が何故か滑稽にすら思えてくる。
「ドレスよりさ。センセェ、自分の事心配した方がいいんじゃねぇの?」
あんまデカい声出してると人が来るぜ?鍵開いてるし、と俺が指摘すると小泉の顔色がサッと変わった。
「“完遂”出来たなら時間は戻れるけどさ──────その前に見つかっちまったら一巻の終わりなんじゃね?」
小泉が俺を突き飛ばそうと身を捩る。
「っざけるな……っ!!」
お前な、と小泉は俺を睨みつけた。
「煙草……辞めてないじゃないか!?」
あれほど言ったのに嘘だったのか、と小泉は怒りと失望が入り混じったような表情で俺を見る。
あ、バレた?と俺はシラを切った。
やっぱ匂いとかで判るんだろうか。
それとも。
─────────いや、今はどうでもいいだろ、そんな事は。
俺は自分の中に浮かんだ僅かな感情に対し、見ないふりをして蓋をした。
小泉は長く白い手袋を付けたままその口元を拭う仕草を見せる。
「……」
無言のままの小泉の感情は俺にはわからない。
けど、それもどうでもいい事だ。
小泉が納得していようがして無かろうが関係ねぇんだよ。
俺はもう一度小泉の手首を掴んだ。
「わかってんだろ?もうこうするしかねぇんだよ」
「……っ!」
小泉は息を呑み、それから小さくこう絞り出した。
「────お前、ドアの鍵は掛けたのか?」
「鍵?」
そうか。花嫁の控室ってのはドレスに着替えたりお色直ししたりとかするんだよな?
じゃあ当然、鍵も付いてる訳で───────
「いや、知らん。そんな余裕ねぇし」
俺はざっと部屋を見回した。
ベッドみたいな物は当然だが無い。
床でやるか?
ふと、窓際に猫足の立派なソファが置いてあるのに気付く。
「もうここでいいや」
俺は小泉の身体を掴み、強引にソファの座面に押し当てた。
逃げられないように小泉の身体の上に馬乗りになる。
「……っ!?」
私はまだ何も──────と小泉が言いかけた言葉を遮って俺はこう言った。
「話は後で聞くから。とにかく脱げよ」
俺がドレスの胸部分を掴むと小さく悲鳴が上がる。
「馬鹿!レンタル品だって言っただろう!?」
乱暴に扱うんじゃない!と抗議してくる小泉が何故か滑稽にすら思えてくる。
「ドレスよりさ。センセェ、自分の事心配した方がいいんじゃねぇの?」
あんまデカい声出してると人が来るぜ?鍵開いてるし、と俺が指摘すると小泉の顔色がサッと変わった。
「“完遂”出来たなら時間は戻れるけどさ──────その前に見つかっちまったら一巻の終わりなんじゃね?」
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