802 / 1,060
ep9
ep9『夢千夜』 “偽りの花嫁” 第二十夜
しおりを挟む
「……は?!」
何を言ってるんだ、と言わんばかりの表情を浮かべている小泉の腕を力任せに掴む。
小泉の手に握られていた自撮り棒がスマホごと床に落ちる。
チラリと見えたカメラロール。
そこにあったのは大量の自撮り画像だった。
フィルターが掛けられたその写真は────────どれも加工がキツすぎて別人のようにも見えたが。
まあ、そうだろうな。
小泉の性格から言って──────いや、小泉じゃなくてもか。
女子がウェディングドレスなんか着る機会あったら絶対写真撮るよな。
ガンガン撮るし、バキバキに加工もする。大体きっとそうなんだろう。
「折角撮ったヤツも消えて無くなると思うけど────────悪く思うなよ?」
そう言いながら俺は左手で小泉の腰を掴んだ。
「……は!?え、ちょ……」
小泉は事情が飲み込めない様子で俺の手を振り解こうとする。
「だからさ。人が刺されたんだってば」
時間戻したいから協力してよ、と俺が言うと小泉はパニックになったように抵抗する。
「急に押しかけてきたかと思えば何言ってんだ!?」
まあ、当たり前だよな。
そういう反応になるよな。無理もねぇ。
「今回はマジで時間ねぇんだ。人の命が掛かってんだよ」
秒で済むから、と俺が言うと小泉は拳を振り上げた。
「ちょっ……お前、人をなんだと思ってるんだ!?」
秒で済む訳無いじゃないか、そもそも、と小泉は続けた。
「ここが何処だか解って言ってるのか!?」
知ってる、と俺は頷きながらも小泉の身体を抱き寄せる。
「控室っていう個室があって丁度よかったじゃねぇか。3分くらい我慢してくれたら確実に終わるから」
俺はそう告げ、小泉の頭に掛かっている布──────レースのカーテンみたいなやつ──────を手に掛けた。
「馬鹿!ヴェールもドレスも全部式場のレンタル品なんだぞ!?乱暴に触るんじゃない!」
小泉はサッと身を翻し、俺を避ける。
何を言ってんだ小泉は。
「時間が戻ったらこんなんどうとでもなるだろ」
「はぁ!?」
何馬鹿なことを─────と言いかけた小泉の唇を塞ぐ。
「……!?」
小泉の動揺がこちらにも伝わって来る。
悪いが時間がねぇんだ。
事態は一刻を争う。
説明してる時間も納得して貰ってから実行するような余裕もねぇ。
俺は小泉が抵抗を止めるまでその唇を塞ぎ続けた。
なんか違和感のある味がする。
なんだろう、これ?
いつもの小泉と違くね?
俺はその味を確かめるようにそれを貪った。
何度も、何度も。
ああ。そうか。
やっとわかった。
これ、小泉が化粧してるからなんだな。
多分、着付けの時にメイクもして貰ったんだろう。
いつもの小泉じゃねぇ感じがするからな。
さっきも唇がなんかツヤツヤしてたし──────────
だから、多分その味なんだろう。
俺の知らない唇の色。
俺の知らない感触。
俺の知らない味。
それから。
俺の知らない小泉。
でも全部関係ない。
────────全部、今から俺にメチャクチャにされるんだから。
何を言ってるんだ、と言わんばかりの表情を浮かべている小泉の腕を力任せに掴む。
小泉の手に握られていた自撮り棒がスマホごと床に落ちる。
チラリと見えたカメラロール。
そこにあったのは大量の自撮り画像だった。
フィルターが掛けられたその写真は────────どれも加工がキツすぎて別人のようにも見えたが。
まあ、そうだろうな。
小泉の性格から言って──────いや、小泉じゃなくてもか。
女子がウェディングドレスなんか着る機会あったら絶対写真撮るよな。
ガンガン撮るし、バキバキに加工もする。大体きっとそうなんだろう。
「折角撮ったヤツも消えて無くなると思うけど────────悪く思うなよ?」
そう言いながら俺は左手で小泉の腰を掴んだ。
「……は!?え、ちょ……」
小泉は事情が飲み込めない様子で俺の手を振り解こうとする。
「だからさ。人が刺されたんだってば」
時間戻したいから協力してよ、と俺が言うと小泉はパニックになったように抵抗する。
「急に押しかけてきたかと思えば何言ってんだ!?」
まあ、当たり前だよな。
そういう反応になるよな。無理もねぇ。
「今回はマジで時間ねぇんだ。人の命が掛かってんだよ」
秒で済むから、と俺が言うと小泉は拳を振り上げた。
「ちょっ……お前、人をなんだと思ってるんだ!?」
秒で済む訳無いじゃないか、そもそも、と小泉は続けた。
「ここが何処だか解って言ってるのか!?」
知ってる、と俺は頷きながらも小泉の身体を抱き寄せる。
「控室っていう個室があって丁度よかったじゃねぇか。3分くらい我慢してくれたら確実に終わるから」
俺はそう告げ、小泉の頭に掛かっている布──────レースのカーテンみたいなやつ──────を手に掛けた。
「馬鹿!ヴェールもドレスも全部式場のレンタル品なんだぞ!?乱暴に触るんじゃない!」
小泉はサッと身を翻し、俺を避ける。
何を言ってんだ小泉は。
「時間が戻ったらこんなんどうとでもなるだろ」
「はぁ!?」
何馬鹿なことを─────と言いかけた小泉の唇を塞ぐ。
「……!?」
小泉の動揺がこちらにも伝わって来る。
悪いが時間がねぇんだ。
事態は一刻を争う。
説明してる時間も納得して貰ってから実行するような余裕もねぇ。
俺は小泉が抵抗を止めるまでその唇を塞ぎ続けた。
なんか違和感のある味がする。
なんだろう、これ?
いつもの小泉と違くね?
俺はその味を確かめるようにそれを貪った。
何度も、何度も。
ああ。そうか。
やっとわかった。
これ、小泉が化粧してるからなんだな。
多分、着付けの時にメイクもして貰ったんだろう。
いつもの小泉じゃねぇ感じがするからな。
さっきも唇がなんかツヤツヤしてたし──────────
だから、多分その味なんだろう。
俺の知らない唇の色。
俺の知らない感触。
俺の知らない味。
それから。
俺の知らない小泉。
でも全部関係ない。
────────全部、今から俺にメチャクチャにされるんだから。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる