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ep9
ep9『夢千夜』 “偽りの花嫁” 第十二夜
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「……っ!?」
センセェ、と俺が小さく呟いたの同時に周囲からどよめきが上がる。
天井からふわふわと白い羽根が舞い落ち、パイプオルガンの音色が大聖堂内に鳴り響いた。
真っ赤な絨毯の上に立っている純白のドレスの花嫁の頭上に真っ白な羽根が降り注いでいる。
それは恐ろしく幻想的で────────見る者を魅了するように感じられた。
なんだよこれ。演出か?
ズルいだろ。
こんなんやられたら──────小泉がまるで本物の花嫁みたいに見えちまうじゃねぇか。
荘厳な音楽が合図となるように、花嫁と花婿は正面を向く。
このメロディは結婚行進曲って名前なんだろうか。
ベタすぎるBGMだが、パイプオルガンと楽団の生演奏の迫力に気圧されてしまう。
音楽と共に二人はこちらに向かって歩き始めた。
周囲から歓声と拍手が上がる。
俺の真横を通過した小泉は張り付いた笑顔のまま──────────こちらを一瞥もしない。
どうしてだろう。
感動的な場面である筈なのに──────────俺の心中は何故かザラついていた。
なんでだよ、面白い見せ物じゃねぇか。
小泉がコスプレして芝居みたいなパフォーマンスしてんだぜ?ウケるだろ?
こんなん笑うしかねぇじゃん?
なのに。
俺の心臓は誰かに掴まれたように何故か苦しい。
二人は大聖堂の扉の前に立っている。
気付けば他の参加者は皆、大聖堂の下の階段脇に立っていた。
参加者達が花嫁に向かって花びらを振りかける。
キラキラとしたものが小泉の頭上に舞い、その笑顔をまるで本物のように引き立たせていた。
なんだよ。
まるで本物の結婚式みてぇなリアクションじゃねぇか。
階段を降りきった小泉が立ち止まり、ブーケを構えた。
え?
なにこれ、投げんの?
こういうのも再現すんの?レベル高ぇな?
ブーケが天高く舞い、大きく歓声が上がった。
「………あら?」
キョトンとした表情の夕貴さんの腕の中で────────ブーケのリボンが風にそよいでいた。
歓声がひときわ大きく響き、夕貴さんは少し照れ臭そうに俯く。
「……やあね。私、妊娠中だから大人しくしとこうと思ってたんだけど────────」
そう言いつつも夕貴さんの表情はまんざらでも無さそうに見えた。
花嫁と花婿は参加者に向かって一礼をする。
いつの間にか横に立っていた司会者が模擬挙式がお開きである旨を告げていた。
撤収していく花嫁と花婿とは逆の方向に俺達参加者は誘導される。
「……次は大ホールの見学ですって。ところで───────」
ブーケを両手で大切そうに抱えていた夕貴さんが俺にこう尋ねた。
「ねえ佐藤くん。さっき大聖堂で花嫁役の人に向かって──────────『先生』って言ってなかった?」
センセェ、と俺が小さく呟いたの同時に周囲からどよめきが上がる。
天井からふわふわと白い羽根が舞い落ち、パイプオルガンの音色が大聖堂内に鳴り響いた。
真っ赤な絨毯の上に立っている純白のドレスの花嫁の頭上に真っ白な羽根が降り注いでいる。
それは恐ろしく幻想的で────────見る者を魅了するように感じられた。
なんだよこれ。演出か?
ズルいだろ。
こんなんやられたら──────小泉がまるで本物の花嫁みたいに見えちまうじゃねぇか。
荘厳な音楽が合図となるように、花嫁と花婿は正面を向く。
このメロディは結婚行進曲って名前なんだろうか。
ベタすぎるBGMだが、パイプオルガンと楽団の生演奏の迫力に気圧されてしまう。
音楽と共に二人はこちらに向かって歩き始めた。
周囲から歓声と拍手が上がる。
俺の真横を通過した小泉は張り付いた笑顔のまま──────────こちらを一瞥もしない。
どうしてだろう。
感動的な場面である筈なのに──────────俺の心中は何故かザラついていた。
なんでだよ、面白い見せ物じゃねぇか。
小泉がコスプレして芝居みたいなパフォーマンスしてんだぜ?ウケるだろ?
こんなん笑うしかねぇじゃん?
なのに。
俺の心臓は誰かに掴まれたように何故か苦しい。
二人は大聖堂の扉の前に立っている。
気付けば他の参加者は皆、大聖堂の下の階段脇に立っていた。
参加者達が花嫁に向かって花びらを振りかける。
キラキラとしたものが小泉の頭上に舞い、その笑顔をまるで本物のように引き立たせていた。
なんだよ。
まるで本物の結婚式みてぇなリアクションじゃねぇか。
階段を降りきった小泉が立ち止まり、ブーケを構えた。
え?
なにこれ、投げんの?
こういうのも再現すんの?レベル高ぇな?
ブーケが天高く舞い、大きく歓声が上がった。
「………あら?」
キョトンとした表情の夕貴さんの腕の中で────────ブーケのリボンが風にそよいでいた。
歓声がひときわ大きく響き、夕貴さんは少し照れ臭そうに俯く。
「……やあね。私、妊娠中だから大人しくしとこうと思ってたんだけど────────」
そう言いつつも夕貴さんの表情はまんざらでも無さそうに見えた。
花嫁と花婿は参加者に向かって一礼をする。
いつの間にか横に立っていた司会者が模擬挙式がお開きである旨を告げていた。
撤収していく花嫁と花婿とは逆の方向に俺達参加者は誘導される。
「……次は大ホールの見学ですって。ところで───────」
ブーケを両手で大切そうに抱えていた夕貴さんが俺にこう尋ねた。
「ねえ佐藤くん。さっき大聖堂で花嫁役の人に向かって──────────『先生』って言ってなかった?」
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