793 / 1,060
ep9
ep9『夢千夜』 “偽りの花嫁” 第十一夜
しおりを挟む
「……え?先生と生徒って──────────」
俺がそう言いかけた瞬間、楽団の生演奏が加速するように大聖堂の中に響いた。
小泉はゆっくりとこちらに向かって歩き始める。
ヴァージンロードってのは普通は花嫁の父と一緒に歩くんだろうが────────
模擬挙式ということもあってか、父親役の人間は隣に居ない。
ブーケを持った小泉が静かに歩く。
その姿はまるで────────本物の花嫁のように思えた。
その時の俺は最高に間抜けな顔だっただろう。
何せポカンと口を開けたまま小泉姿を凝視してたんだからな。
とんでもなく長いドレスの裾を引き摺って小泉が大聖堂の中央を歩く。
今この瞬間、見物客の視線を一身に浴びている花嫁は─────────俺の知らない小泉だった。
俺の座っている中間地点を小泉が通過する。
俺に気付いたのであろう、小泉の表情が咄嗟に固くなったのを俺は見逃さなかった。
俺は相変わらず呆然としながら小泉を眺めていた。
いつの間にここに来てたんだろうか。斜め向かいの席に佑ニーサンと由江さんの姿が見えた。
俺の様子を見ながら佑ニーサンは少し笑っている。
なんだよ、そんなに可笑しいかよ?
だってそうだろ?小泉が目の前でウェディングドレス着て歩いてんだぜ?
そんなん見せられて気の利いたリアクションできる訳ねぇじゃねぇか。
それに。
隣に居る夕貴さんがさっき口走った言葉─────────
畜生、なんなんだよ一体!?
情報量が多過ぎるんだよ!
頭の中が混乱した俺はどうすることも出来ずにただ、通過した小泉の後ろ姿を見つめていた。
神父役の外国人である男性が中央に立っている。
小泉がその前に到着した所で───────タキシード姿の男性が横に居るのに気付く。
いや、そうだよな。
花嫁が居るってことは花婿も居るんだろう。
何故か俺はそのことをすっかり忘れていた。
この式場の社員だろうか。
年齢は30手前くらいに思えた。
神父役の外国人男性がたどたどしい日本語でお決まりの台詞を読み上げ始めた。
まあ、ベタな感じだよな。
『汝ハ、コノ女を妻トシ、 良キ時モ悪キ時モ、富メル時モ貧シキ時モ────病メル時モ健ヤカナル時モ 共ニ歩ミ、他ノ者ニ依ラズ、 死ガ二人ヲ分カツマデ愛ヲ誓イ、神聖ナル婚姻ノ契約ノモトニ誓イマスカ?』
なんかさ、前にちょっと聞いたことあんだけどさ。
こういう結婚式場での神父や牧師役の外国人ってさ、わざとカタコトで言ってるらしいな。
ホントは日本語がペラペラな外国人であっても雰囲気を出す為に敢えてこんな風に喋ってるんだとさ。
こっちの方が喜ばれるからって理由らしい。この神父ももしかしたらそうかもしれねぇな。
そんなことをぼんやりと思いながら式の進行を見守る。
「はい、誓います」
小泉と新郎役の男性がそれぞれ返事をしたところで────────それは起こった。
『デハ、誓イのキスを───────』
神父の言葉に俺は耳を疑った。
え?
模擬挙式だろ?
芝居みたいなもんだろ?
まさか。
これってホントに─────────小泉とこの男、キスすんのか!?
俺がそう言いかけた瞬間、楽団の生演奏が加速するように大聖堂の中に響いた。
小泉はゆっくりとこちらに向かって歩き始める。
ヴァージンロードってのは普通は花嫁の父と一緒に歩くんだろうが────────
模擬挙式ということもあってか、父親役の人間は隣に居ない。
ブーケを持った小泉が静かに歩く。
その姿はまるで────────本物の花嫁のように思えた。
その時の俺は最高に間抜けな顔だっただろう。
何せポカンと口を開けたまま小泉姿を凝視してたんだからな。
とんでもなく長いドレスの裾を引き摺って小泉が大聖堂の中央を歩く。
今この瞬間、見物客の視線を一身に浴びている花嫁は─────────俺の知らない小泉だった。
俺の座っている中間地点を小泉が通過する。
俺に気付いたのであろう、小泉の表情が咄嗟に固くなったのを俺は見逃さなかった。
俺は相変わらず呆然としながら小泉を眺めていた。
いつの間にここに来てたんだろうか。斜め向かいの席に佑ニーサンと由江さんの姿が見えた。
俺の様子を見ながら佑ニーサンは少し笑っている。
なんだよ、そんなに可笑しいかよ?
だってそうだろ?小泉が目の前でウェディングドレス着て歩いてんだぜ?
そんなん見せられて気の利いたリアクションできる訳ねぇじゃねぇか。
それに。
隣に居る夕貴さんがさっき口走った言葉─────────
畜生、なんなんだよ一体!?
情報量が多過ぎるんだよ!
頭の中が混乱した俺はどうすることも出来ずにただ、通過した小泉の後ろ姿を見つめていた。
神父役の外国人である男性が中央に立っている。
小泉がその前に到着した所で───────タキシード姿の男性が横に居るのに気付く。
いや、そうだよな。
花嫁が居るってことは花婿も居るんだろう。
何故か俺はそのことをすっかり忘れていた。
この式場の社員だろうか。
年齢は30手前くらいに思えた。
神父役の外国人男性がたどたどしい日本語でお決まりの台詞を読み上げ始めた。
まあ、ベタな感じだよな。
『汝ハ、コノ女を妻トシ、 良キ時モ悪キ時モ、富メル時モ貧シキ時モ────病メル時モ健ヤカナル時モ 共ニ歩ミ、他ノ者ニ依ラズ、 死ガ二人ヲ分カツマデ愛ヲ誓イ、神聖ナル婚姻ノ契約ノモトニ誓イマスカ?』
なんかさ、前にちょっと聞いたことあんだけどさ。
こういう結婚式場での神父や牧師役の外国人ってさ、わざとカタコトで言ってるらしいな。
ホントは日本語がペラペラな外国人であっても雰囲気を出す為に敢えてこんな風に喋ってるんだとさ。
こっちの方が喜ばれるからって理由らしい。この神父ももしかしたらそうかもしれねぇな。
そんなことをぼんやりと思いながら式の進行を見守る。
「はい、誓います」
小泉と新郎役の男性がそれぞれ返事をしたところで────────それは起こった。
『デハ、誓イのキスを───────』
神父の言葉に俺は耳を疑った。
え?
模擬挙式だろ?
芝居みたいなもんだろ?
まさか。
これってホントに─────────小泉とこの男、キスすんのか!?
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
愛娘(JS5)とのエッチな習慣に俺の我慢は限界
レディX
恋愛
娘の美奈は(JS5)本当に可愛い。そしてファザコンだと思う。
毎朝毎晩のトイレに一緒に入り、
お風呂の後には乾燥肌の娘の体に保湿クリームを塗ってあげる。特にお尻とお股には念入りに。ここ最近はバックからお尻の肉を鷲掴みにしてお尻の穴もオマンコの穴もオシッコ穴も丸見えにして閉じたり開いたり。
そうしてたらお股からクチュクチュ水音がするようになってきた。
お風呂上がりのいい匂いと共にさっきしたばかりのオシッコの匂い、そこに別の濃厚な匂いが漂うようになってきている。
でも俺は娘にイタズラしまくってるくせに最後の一線だけは超えない事を自分に誓っていた。
でも大丈夫かなぁ。頑張れ、俺の理性。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。
ねんごろ
恋愛
主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。
その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……
毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。
※他サイトで連載していた作品です
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる