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ep9
ep9『夢千夜』 “偽りの花嫁” 第九夜
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大聖堂に一足早く到着した俺達は息を呑んだ。
めちゃくちゃデカい。想像の3倍はデカかった。
天井は途方もなく高く、ステンドグラスからは外の光が降り注いでいる。
「……わあ!素敵!」
夕貴さんが小さく歓声を上げる。
「……やっぱりここに決めて良かったわ。こんなチャペル、他所にもそうそう無いわよ」
夕貴さんの台詞に思わず聞き返す。
「他の結婚式場にも行かれたことがあるんですか?」
ええ、と夕貴さんは苦笑しながら答える。
「……主人と私、学生時代は都内に住んでたの。首都圏の有名な式場にね、何度かデートがてら見学に行ったことがあるんだけど────────」
向こうは土地が高いでしょう?どうしても敷地がコンパクトな会場が多くて、と夕貴さんは続けた。
「こんなに広い敷地でここまでの大聖堂、国内でもそうそう無いんじゃないかしら、という夕貴さんの言葉に俺は少し驚く。
「え?都会の方より豪勢な式場ってことですか?」
何事においても─────────こんな田舎より都会の方がレベルが高いものだと思ってた俺には意外な事実だった。
そうね、と夕貴さんはうっとりとステンドグラスを眺めながら答える。
「首都圏で駅近な立地ってなるとどうしてもスペースが限られてるのよね。花嫁控室からチャペルまでもエレベーター移動とかなのよ。チャペルもビルの一角だったり」
都会って行ったことねぇけど、そういうのがデフォなのか?
「ウェディングドレス着てエレベーター移動するんですか。なんかイメージと違いますね」
ドラマや映画みたいに、広い場所になんかこう教会があって……ってモンだと思ってたんですけど、と俺が頷くと夕貴さんもそれに同意する。
「そう!それなの!私、お城みたいな場所で結婚式を挙げるのが小さい頃からの憧れだったから──────────」
だから絶対それは譲れないの、と夕貴さんは笑った。
「ほら、室内の壁なんかも雰囲気が出てですごくいいわ。勿論、大聖堂の外観も凄いんだけど」
テンションが上がったのか、夕貴さんは熱のこもった様子で天井を指さす。
「そういうのも都会の方と違うんですか?」
俺が尋ねると夕貴さんは頷く。
「そうなのよね。都内の方は比較的築浅で綺麗めな建物や会場が多い印象だったの。けど、その新しさが逆に気になったっていうか──────」
ここの大聖堂って築20~25年くらい?適度にアンティーク感が出てて本格派でしょう、と夕貴さんはパンフレットを広げた。
「なんかこう……ピカピカに新し過ぎるより、ちょっと古いくらいの方が本物の重厚感があってすごく好みだなって─────」
その意見に俺も同意する。
「あー。わかります。なんかこう、ハリーポッターとかそういう映画の世界みたいですもんね。夜のライトアップの写真とか迫力が凄いって思いましたよ」
そう!それなの!と夕貴さんはパンフレットを捲り、夜景の写真のあるページを広げた。
プロの写真家の腕もいいんだろうが、夜空に浮かぶ大聖堂はまるでファンタジー世界の魔法の城のようにも見える。
間近で見れば鳥肌モンだろう。
ましてや、ここで式を挙げるとなれば──────────その迫力たるや相当なものじゃねぇのか。
結婚式に全く興味が無い男の俺ですらマジでカッケーって思うくらいだもんな。
お城での結婚式に憧れがあったという夕貴さんの気持ちがなんとなく解る気がした。
「ナイトウェディングも素敵って思ったんだけど──────妊娠中だし、少人数挙式だしね」
でも、昼の式も素敵よ。ステンドグラスから差し込む光は唯一無二だわ、と夕貴さんは微笑んだ。
なるほど。
ナイトウェディングに少人数挙式か。
昼間に大勢でやるイメージしか無かった俺には目から鱗だった。
「結婚式って、いろんな形があるんですね。俺、ドラマや映画の中の漠然とした印象しか無かったから……」
俺がそう言うと、夕貴さんは慌てて首を振った。
「……あ!御免なさいね、私ったら余計なことをペラペラと──────!」
それと、と夕貴さんは続けた。
「なんか都会の方の式場を下げたみたいな感じになっちゃったけど、結局個人の好みみたいなものだから」
都心部の高層ビルのガラス張の式場で眺めのいいウェディングに憧れがある人も居るでしょうし、と夕貴さんは付け加えた。
「私がこっちの方が好みってだけなんだけど────────」
夕貴さんの言葉に俺は相槌を打った。
「わかりますよ。夕貴さん、この大聖堂がすごく似合う花嫁ってイメージですもん」
夕貴さんと結婚出来る旦那さんが羨ましいですね、と俺が言うと夕貴さんは吹き出した。
「ふふ……お上手なのね。佐藤君は彼女とか居ないの?貴方も将来、ここで式を挙げることになるかもしれないでしょう?」
意外な夕貴さんからの問いかけに俺は全力で首を振った。
「か……彼女なんて居たことないですよ!」
それに、と俺は強調する。
「俺が将来結婚なんて──────────絶対無理ですから!」
めちゃくちゃデカい。想像の3倍はデカかった。
天井は途方もなく高く、ステンドグラスからは外の光が降り注いでいる。
「……わあ!素敵!」
夕貴さんが小さく歓声を上げる。
「……やっぱりここに決めて良かったわ。こんなチャペル、他所にもそうそう無いわよ」
夕貴さんの台詞に思わず聞き返す。
「他の結婚式場にも行かれたことがあるんですか?」
ええ、と夕貴さんは苦笑しながら答える。
「……主人と私、学生時代は都内に住んでたの。首都圏の有名な式場にね、何度かデートがてら見学に行ったことがあるんだけど────────」
向こうは土地が高いでしょう?どうしても敷地がコンパクトな会場が多くて、と夕貴さんは続けた。
「こんなに広い敷地でここまでの大聖堂、国内でもそうそう無いんじゃないかしら、という夕貴さんの言葉に俺は少し驚く。
「え?都会の方より豪勢な式場ってことですか?」
何事においても─────────こんな田舎より都会の方がレベルが高いものだと思ってた俺には意外な事実だった。
そうね、と夕貴さんはうっとりとステンドグラスを眺めながら答える。
「首都圏で駅近な立地ってなるとどうしてもスペースが限られてるのよね。花嫁控室からチャペルまでもエレベーター移動とかなのよ。チャペルもビルの一角だったり」
都会って行ったことねぇけど、そういうのがデフォなのか?
「ウェディングドレス着てエレベーター移動するんですか。なんかイメージと違いますね」
ドラマや映画みたいに、広い場所になんかこう教会があって……ってモンだと思ってたんですけど、と俺が頷くと夕貴さんもそれに同意する。
「そう!それなの!私、お城みたいな場所で結婚式を挙げるのが小さい頃からの憧れだったから──────────」
だから絶対それは譲れないの、と夕貴さんは笑った。
「ほら、室内の壁なんかも雰囲気が出てですごくいいわ。勿論、大聖堂の外観も凄いんだけど」
テンションが上がったのか、夕貴さんは熱のこもった様子で天井を指さす。
「そういうのも都会の方と違うんですか?」
俺が尋ねると夕貴さんは頷く。
「そうなのよね。都内の方は比較的築浅で綺麗めな建物や会場が多い印象だったの。けど、その新しさが逆に気になったっていうか──────」
ここの大聖堂って築20~25年くらい?適度にアンティーク感が出てて本格派でしょう、と夕貴さんはパンフレットを広げた。
「なんかこう……ピカピカに新し過ぎるより、ちょっと古いくらいの方が本物の重厚感があってすごく好みだなって─────」
その意見に俺も同意する。
「あー。わかります。なんかこう、ハリーポッターとかそういう映画の世界みたいですもんね。夜のライトアップの写真とか迫力が凄いって思いましたよ」
そう!それなの!と夕貴さんはパンフレットを捲り、夜景の写真のあるページを広げた。
プロの写真家の腕もいいんだろうが、夜空に浮かぶ大聖堂はまるでファンタジー世界の魔法の城のようにも見える。
間近で見れば鳥肌モンだろう。
ましてや、ここで式を挙げるとなれば──────────その迫力たるや相当なものじゃねぇのか。
結婚式に全く興味が無い男の俺ですらマジでカッケーって思うくらいだもんな。
お城での結婚式に憧れがあったという夕貴さんの気持ちがなんとなく解る気がした。
「ナイトウェディングも素敵って思ったんだけど──────妊娠中だし、少人数挙式だしね」
でも、昼の式も素敵よ。ステンドグラスから差し込む光は唯一無二だわ、と夕貴さんは微笑んだ。
なるほど。
ナイトウェディングに少人数挙式か。
昼間に大勢でやるイメージしか無かった俺には目から鱗だった。
「結婚式って、いろんな形があるんですね。俺、ドラマや映画の中の漠然とした印象しか無かったから……」
俺がそう言うと、夕貴さんは慌てて首を振った。
「……あ!御免なさいね、私ったら余計なことをペラペラと──────!」
それと、と夕貴さんは続けた。
「なんか都会の方の式場を下げたみたいな感じになっちゃったけど、結局個人の好みみたいなものだから」
都心部の高層ビルのガラス張の式場で眺めのいいウェディングに憧れがある人も居るでしょうし、と夕貴さんは付け加えた。
「私がこっちの方が好みってだけなんだけど────────」
夕貴さんの言葉に俺は相槌を打った。
「わかりますよ。夕貴さん、この大聖堂がすごく似合う花嫁ってイメージですもん」
夕貴さんと結婚出来る旦那さんが羨ましいですね、と俺が言うと夕貴さんは吹き出した。
「ふふ……お上手なのね。佐藤君は彼女とか居ないの?貴方も将来、ここで式を挙げることになるかもしれないでしょう?」
意外な夕貴さんからの問いかけに俺は全力で首を振った。
「か……彼女なんて居たことないですよ!」
それに、と俺は強調する。
「俺が将来結婚なんて──────────絶対無理ですから!」
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