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ep8
ep8『愚者の宝石と盲目の少女たち』 三十九夜
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本を読み終えた俺は────────恐る恐る小泉の顔を見た。
小泉は真顔のままだった。
「……どうだ?読み終わっての感想は?」
小泉は静かに俺にそう訊ねる。
質問の意図は掴めない。
別に、と俺はわざとそっけなく答えた。
「……わかんねぇよ。急にそう聞かれてもさ」
センセェこそどうなんだよ、と俺が訊き返すと小泉は首を振った。
「現時点ではなんとも言えない。その───────」
一條刻夜の消息については今後明らかになるだろうしな、と言いながら小泉は立ち上がった。
「とりあえず、この時間帯だともう神社への移動は無理だ。ここでやるぞ」
窓の外はすっかり明るくなっていた。
「……え!?ここでやんの!あのルーティンをか!?」
俺は心底うんざりしていた。
味のない餅を食わされるのって結構キツいんだよな。
俺が不服そうにしていたからか、小泉に例のお祓い棒で頭を叩かれる。
「……なにかあったら困るのはお前なんだぞ?!真面目にやらないか」
俺は制服に着替え、小泉に言われるままに正座した。
いつものように小泉が奇妙なお経のような物を唱え、(祝詞というらしいがお経とどう違うのかさっぱりわからん)また俺は塩と酒を舐めさせられた。
三宝という名前のお供え台の上に載せられた餅を食わされる。
餅ピザとかにしちゃダメなん?と聞いてまた怒られた。なんでだよ、ピザに餅がトッピングされてるヤツ美味いじゃねぇか。
いつものルーティンをこなすと小泉は心配そうに俺の顔を覗き込む。
「その……今回は大丈夫なのか?」
そこまで聞いて俺はようやく───────小泉に心配されているということに気付いた。
前回の一件────────あの時、俺が『セックスなんか二度としたくない』って言ってたのを気にしてるんだろう。
けど、前に時間を戻ったのっていつだっただろう?
奇妙な夢を見てしまったからか現実との区別がつかなくなってくる。
最後に時間を戻って来てから今回のこの件までの間に、俺ってセックスしてたっけ?
自分で自分の記憶がわからねぇんだ。
そもそも、ガチで時間を戻ってたら記憶は消えてるんだしな。
その記憶が夢なのか、現実なのか。
時間を戻ったのか、進んだのか。
全てが曖昧であやふやだった。
脆弱な記憶。薄れていく感情。
それすら自分自身で把握することも出来ていない。
手のひらの隙間から溢れる砂の粒のように記憶も経験もポロポロと落ちて消えていく。
前回とは違って───────パニックになったりショックを受けるほどの記憶が残っていないんだ。
それは記憶のついでに自分さえも取りこぼしてしまったかのように思えた。
「ん……まあ、なんかさ、ビックリするくらいピンと来ねぇんだ」
俺は正直にそう答えた。
「セックスしてショック受けるとかそういうのよりかさ───────校舎が爆発炎上とか誰かが失明とか、そっちの話の方がショッキング過ぎて─────」
俺がそう告げると小泉も唸った。
「まあ……そうだよな。事情が事情だし──────今回は流石に情報量が多すぎる」
とにかく、と小泉は手を叩く。
「今日は土曜日だ。学校は無いし出来る範囲で調査をするとしよう」
俺と小泉はネットや人脈(主に俺が佐々木にそれとなく聞く形でだが)で[カリスマスピリチュアルセラピスト 一條刻夜]の情報を集めることにした。
しかし。
そこで直面したのは─────────あまりにも不可解な現実だった。
小泉は真顔のままだった。
「……どうだ?読み終わっての感想は?」
小泉は静かに俺にそう訊ねる。
質問の意図は掴めない。
別に、と俺はわざとそっけなく答えた。
「……わかんねぇよ。急にそう聞かれてもさ」
センセェこそどうなんだよ、と俺が訊き返すと小泉は首を振った。
「現時点ではなんとも言えない。その───────」
一條刻夜の消息については今後明らかになるだろうしな、と言いながら小泉は立ち上がった。
「とりあえず、この時間帯だともう神社への移動は無理だ。ここでやるぞ」
窓の外はすっかり明るくなっていた。
「……え!?ここでやんの!あのルーティンをか!?」
俺は心底うんざりしていた。
味のない餅を食わされるのって結構キツいんだよな。
俺が不服そうにしていたからか、小泉に例のお祓い棒で頭を叩かれる。
「……なにかあったら困るのはお前なんだぞ?!真面目にやらないか」
俺は制服に着替え、小泉に言われるままに正座した。
いつものように小泉が奇妙なお経のような物を唱え、(祝詞というらしいがお経とどう違うのかさっぱりわからん)また俺は塩と酒を舐めさせられた。
三宝という名前のお供え台の上に載せられた餅を食わされる。
餅ピザとかにしちゃダメなん?と聞いてまた怒られた。なんでだよ、ピザに餅がトッピングされてるヤツ美味いじゃねぇか。
いつものルーティンをこなすと小泉は心配そうに俺の顔を覗き込む。
「その……今回は大丈夫なのか?」
そこまで聞いて俺はようやく───────小泉に心配されているということに気付いた。
前回の一件────────あの時、俺が『セックスなんか二度としたくない』って言ってたのを気にしてるんだろう。
けど、前に時間を戻ったのっていつだっただろう?
奇妙な夢を見てしまったからか現実との区別がつかなくなってくる。
最後に時間を戻って来てから今回のこの件までの間に、俺ってセックスしてたっけ?
自分で自分の記憶がわからねぇんだ。
そもそも、ガチで時間を戻ってたら記憶は消えてるんだしな。
その記憶が夢なのか、現実なのか。
時間を戻ったのか、進んだのか。
全てが曖昧であやふやだった。
脆弱な記憶。薄れていく感情。
それすら自分自身で把握することも出来ていない。
手のひらの隙間から溢れる砂の粒のように記憶も経験もポロポロと落ちて消えていく。
前回とは違って───────パニックになったりショックを受けるほどの記憶が残っていないんだ。
それは記憶のついでに自分さえも取りこぼしてしまったかのように思えた。
「ん……まあ、なんかさ、ビックリするくらいピンと来ねぇんだ」
俺は正直にそう答えた。
「セックスしてショック受けるとかそういうのよりかさ───────校舎が爆発炎上とか誰かが失明とか、そっちの話の方がショッキング過ぎて─────」
俺がそう告げると小泉も唸った。
「まあ……そうだよな。事情が事情だし──────今回は流石に情報量が多すぎる」
とにかく、と小泉は手を叩く。
「今日は土曜日だ。学校は無いし出来る範囲で調査をするとしよう」
俺と小泉はネットや人脈(主に俺が佐々木にそれとなく聞く形でだが)で[カリスマスピリチュアルセラピスト 一條刻夜]の情報を集めることにした。
しかし。
そこで直面したのは─────────あまりにも不可解な現実だった。
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