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ep8
ep8『愚者の宝石と盲目の少女たち』 I wish that I could turn back time
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俺は息を呑んだ。
「────────今回、お前は時間を戻って来ている」
「ハァ!???」
思わず俺は叫んだ。
「前後にどういう経緯があったかまでは私にはわからないが………」
そう言いかけた小泉の姿を見て俺はやっと気付いた。
何かがおかしい。
俺は周囲を見回した。
ここは間違いなく俺の部屋、俺の布団だ。
横にいる小泉は────────巫女の着物を着ている。
「え、ちょっと待ってマジで……」
混乱した俺は小泉の顔を縋るように見る。
小泉は真顔のまま、黙って俺を見つめていた。
冗談や嘘を言っているような雰囲気は全く無い。
「……嘘だろ?」
俺はそう絞り出すのが精一杯だった。
小泉は静かに俺の目の前に一冊の文庫本を差し出して来る。
古びたボロボロの文庫本の表紙には『我が逃走』というタイトルが記されていた。
「……っ!何だよこれ……!?」
俺は震える手で文庫本を受け取る。
小泉は静かに座ったまま、俺にこう言った。
「いつもならお前が目を覚まして神社に来るルーティンだっただろう?」
いつまで待ってもお前が来ないものだから……私の方から出向いたんだ、と小泉はため息混じりに続ける。
「……は?ちょっと待ってくれよセンセェ。何が何だかわからねぇ」
文庫本を開くことすら出来ないまま、俺は立ち上がった。
「俺が時間を戻ったって!?─────── 一体、何をどうしたらそうなる!?」
そもそも、と俺はやや強めに続けた。
「センセェは状況を把握してんだろ!?ちゃんとわかるように説明してくれなきゃ俺にはわかんねぇだろうが!?」
八つ当たりめいた俺の言葉に対し、小泉は静かに首を振った。
「私にも詳しくはわからない。出現したその文庫本を読んだだけだからな」
────────読んだのか、これを。
俺の身体が知らないうちに震えていた。
「なあ、そうだ。最初の一冊目の文庫本にさ、大きなショックとかで時間を戻ってた話とかあっただろ!?」
俺は半狂乱になって小さく叫んだ。
「今回もそうなんだろ!?自分も巻き込まれて死にかけたショックで───────」
それで時間を戻ったんだろ、そうなんだろ、なあ!?と俺は小泉の肩に掴みかかった。
「自分で……確かめてみたらどうだ?」
俺が掴みかかったのにも全く動じず、小泉は静かにこう続けた。
「缶……いや、容器を変えたんだったか?その金属のケースの中身を確認してみたらどうだ?」
俺は壁に掛けられているハンガーの学ランとズボンを見た。
ズボンのベルト部分にはチェーンがぶら下がったままになっている。
俺はポケットから例の銀色のケースを取り出すと、それをチェーンから外した。
そうだよな。見れば判るんだ。
震える手でケースの蓋を開けた俺は思わず悲鳴を上げる。
「……は!?何だよこれ!?」
蓋の内側にお札が貼られた銀色のケースの中身は──────────────空になっていた。
「────────今回、お前は時間を戻って来ている」
「ハァ!???」
思わず俺は叫んだ。
「前後にどういう経緯があったかまでは私にはわからないが………」
そう言いかけた小泉の姿を見て俺はやっと気付いた。
何かがおかしい。
俺は周囲を見回した。
ここは間違いなく俺の部屋、俺の布団だ。
横にいる小泉は────────巫女の着物を着ている。
「え、ちょっと待ってマジで……」
混乱した俺は小泉の顔を縋るように見る。
小泉は真顔のまま、黙って俺を見つめていた。
冗談や嘘を言っているような雰囲気は全く無い。
「……嘘だろ?」
俺はそう絞り出すのが精一杯だった。
小泉は静かに俺の目の前に一冊の文庫本を差し出して来る。
古びたボロボロの文庫本の表紙には『我が逃走』というタイトルが記されていた。
「……っ!何だよこれ……!?」
俺は震える手で文庫本を受け取る。
小泉は静かに座ったまま、俺にこう言った。
「いつもならお前が目を覚まして神社に来るルーティンだっただろう?」
いつまで待ってもお前が来ないものだから……私の方から出向いたんだ、と小泉はため息混じりに続ける。
「……は?ちょっと待ってくれよセンセェ。何が何だかわからねぇ」
文庫本を開くことすら出来ないまま、俺は立ち上がった。
「俺が時間を戻ったって!?─────── 一体、何をどうしたらそうなる!?」
そもそも、と俺はやや強めに続けた。
「センセェは状況を把握してんだろ!?ちゃんとわかるように説明してくれなきゃ俺にはわかんねぇだろうが!?」
八つ当たりめいた俺の言葉に対し、小泉は静かに首を振った。
「私にも詳しくはわからない。出現したその文庫本を読んだだけだからな」
────────読んだのか、これを。
俺の身体が知らないうちに震えていた。
「なあ、そうだ。最初の一冊目の文庫本にさ、大きなショックとかで時間を戻ってた話とかあっただろ!?」
俺は半狂乱になって小さく叫んだ。
「今回もそうなんだろ!?自分も巻き込まれて死にかけたショックで───────」
それで時間を戻ったんだろ、そうなんだろ、なあ!?と俺は小泉の肩に掴みかかった。
「自分で……確かめてみたらどうだ?」
俺が掴みかかったのにも全く動じず、小泉は静かにこう続けた。
「缶……いや、容器を変えたんだったか?その金属のケースの中身を確認してみたらどうだ?」
俺は壁に掛けられているハンガーの学ランとズボンを見た。
ズボンのベルト部分にはチェーンがぶら下がったままになっている。
俺はポケットから例の銀色のケースを取り出すと、それをチェーンから外した。
そうだよな。見れば判るんだ。
震える手でケースの蓋を開けた俺は思わず悲鳴を上げる。
「……は!?何だよこれ!?」
蓋の内側にお札が貼られた銀色のケースの中身は──────────────空になっていた。
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