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ep8『愚者の宝石と盲目の少女たち』 大量殺人の可能性

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「なんだよこれ……」

俺が思わずそう呟くと上野はさらに狼狽える。

「ねぇ、どうしよう……佐藤っち、あーし、どうすればいいの!?」

ガチでシャレになっていない。

しかも、ポリタンクの量が尋常ではない。

この量の燃料をばら撒いて火を点けたとしたら────────死ぬのはもはや一條一人だけでは済まないだろう。

巻き込まれる大量の犠牲者が出てしまう。

俺の背筋が凍りついたように冷たくなるのを感じた。

一刻も早く一條の居場所を突き止める必要があるだろう。

恐ろしい事実に俺の気は遠くなりかける。

ここでしっかりしねぇでどうすんだよ!?

俺は自分で自分を奮い立たせた。

「……なあ、上野。お前さ、一條の住んでる家の場所って判るか?」

カウンセリングとか受けてたんだろ?と俺が訊ねると上野は震える声で答える。

「あーし、そんなのわかんないよ……!行ったことないし───────!」

ん?

「じゃあお前、どこでカウンセリングってヤツを受けてたんだよ?」

俺の質問に対し、上野はまた混乱した様子で答えた。

「だって……刻夜っちと会うのはいつもカフェとかばっかりだったし──────」

「カフェ?」

俺は思わず聞き返す。

妙な話じゃねぇか。

だって、一応は『スピリチュアルカウンセラー』を名乗ってたんだろ?

そういうのって事務所を借り上げてるとか、もしくは自宅で開業してるってイメージじゃねぇか。

「なんでカフェでカウンセラーがカウンセリングするんだよ?」

他の客とか居てなんか落ち着かなくね?と俺が疑問を口にすると上野は思い出したようにこう言った。

「……うん。あーしも最初はビックリしたんだけど──────刻夜っちが『僕と過ごす時間は気負わずにリラックスして欲しいから』って言ってて……」

妙な話だな。

怪しい商売とは言え、『カウンセラー』を名乗るなら尚更、どこかのレンタルオフィスなり自宅なりの静かな場所でそれらしく振る舞った方がいいんじゃねぇの?

なんでカフェなんかで、と言いかけた俺はふとあることを思い出した。

確か、小泉が───────顧客の女子中学生達とは“疑似恋愛に近い状態にあった“みたいなことを話してたよな?

じゃあさ、一條が事務所だのオフィスだのを用意しなかったのって──────────デートっぽい雰囲気を演出する為なのか?

確かに、カフェでサシで会って話をするとなるとさ、『カウンセリング』ってより『デート』って感じになるもんな。

なんだっけ?メンズ地下アイドルには積んだ金額次第でファンの女の子とデート出来るプランがあったりするって話だったじゃねぇか。

そう考えると──────憧れのカリスマとデートっぽい事が出来るってなったらさ、女子が『カウンセリング』に殺到しちまうってのはなんか解る気がするな。

アレだろ?もしコレを男女逆転して考えたらさ、例えば────────Hカップの爆乳グラビアアイドルとデート出来る的な感じ?

そんなん絶対のめり込むに決まってるよなぁ!?

俺だったらバイト代とか全ツッパしちまうわ。

そこまで考えてふと、俺は思考を止める。

いや、待てよ?

「上野さ……お前、例の宝石───────身体の中に“”んだよな?じゃあなんか[そういう場所]があったんじゃねぇのか?」

カフェじゃそういうの無理じゃね?と俺が口にすると上野は途端に口籠った。

……それは、と上野は少し躊躇するようにこう答えた。

「その時だけは───────ネカフェのカップルシートを使ったの……」(※1)

[カウンセリング]にはカラオケボックスを使う日もあったんだけど……監視カメラもあるからって、それで、と上野は小さな声で答える。

なるほど、カップルシートか。

行ったことねぇけど、なんかイチャイチャする学生カップルが多いとは聞くよな。クソが!

「ん?じゃあさ、一條がネカフェに潜伏してるって可能性は無いのか?」

普段から利用してたってならそのセンはないのか、と俺が指摘すると上野はハッとした様子でこう呟く。

「ネカフェは周囲に声とか聞こえちゃうから実況は出来ないかもだけど……もしかしたらカラオケボックスならあるかも」

そうか。

ネカフェは監視カメラが無い代わりに声が筒抜けだが──────────カラオケボックスはある程度なら多少騒いでも平気な環境ってことか?

一條はカラオケボックスで配信を行う可能性がある?















俺と上野の間に一気に緊張が走った。

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