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ep8
ep8『愚者の宝石と盲目の少女たち』 気弱な妹は兄に溺愛される
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どういう状況だ!?
全く話が見えて来ず、俺は佐々木と宮原楓の会話を固まったまま聞いている。
「お兄ちゃんに……あたしのスマホを勝手に見られたみたいで────────」
え!?
宮原楓はややパニックになった様子で続けた。
「お兄ちゃん、最近あたしの様子がおかしいって思ってたらしいんです。それで何かあるんじゃないかって調べたらしくて──────」
そうだったの、と佐々木は動揺した様子もなく相槌を打つ。
「……けど、その手に持ってるスマホは何かしら?貴女のじゃないわよね?」
宮原楓はビクリとした様子で慌てて右手に握っていたスマホを佐々木に差し出す。
「……あ!これ……!お兄ちゃんのです……お兄ちゃんが顔を洗ってる最中の隙を狙って掴んで持ってきちゃって───────────」
お兄ちゃんは毎朝、洗顔フォームで念入りに顔を洗うのが日課だから、と宮原楓は付け加えた。
なるほどね、と佐々木は少し笑った。
「顔を洗う時は誰だって両手を使うものね。ましてや、洗顔フォームで洗っていたら暫くは両手が塞がってるでしょうし」
なかなか機転を利かせたじゃないの、と佐々木が少し褒めると宮原楓は真っ赤になって俯いた。
「えっと……あたし、とにかくショックで訳がわかんなくなっちゃってて……」
とにかく、ちょっとこれを見てください、と宮原楓はスマホを操作するとある画面を表示させた。
俺と小泉も一緒にそれを覗き込む。
それは、宮原楓の兄と思しき人物のSNSアカウントでの書き込みだった。
[ちょっとマジあり得んのやけど(怒)]
[なんかウチの妹が騙されてるくさい]
[変な男に貢がされてるっぽいんやけど何これ?]
[は?スピリチュアルとかってなんなん?(怒)」
[妹はまだ中1なんだが?]
[妹のスマホ調べたらヤバいDMとかめっちゃ出てきた(汗)]
[は?なにこれ?犯罪じゃね?]
[これって警察に被害届だせる?]
[でも出来れば親バレとかはナシの方向で行きたいんだけど可能?]
[親バレしたら妹はスマホとPC没収になるの確定しそう]
[多分俺も巻き込まれるな……今までの親のやり方考えたら]
[俺までスマホPC禁止とかにされそうで困るんだが(汗)」
[てか、一條刻夜って何者なん?]
[詳しい情報持ってる方、同じような被害にあった方はDMください]
よほど気が動転していたのだろうか。
宮原楓の兄による怒涛の更新。
その中に一つ、奇妙なリプライが付いていることに気付く。
[一條刻夜に関する重大な情報を持っています。DMしてもいいですか?]
「……え?これって……!?」
俺が思わず声を上げると宮原楓はDMのアイコンをタップした。
「初めまして。こちらは一條刻夜についてよく知る者です。
資料を添付しておきますので後はご自由にお使いください。
警察へ情報提供されても構いません。
貴殿の復讐にお役立て頂ければ幸いです」
『ハァ!?』
俺と小泉は思わず声を上げる。
なんだコイツは。
宮原兄と同じく、一條刻夜に恨みを持つ者の仕業だろうか。
俺と小泉が絶句していると、佐々木があることに気付く。
「この差し出し人の箇所にあるイニシャル─────────これは何を意味するものかしら?」
文章の末尾に添えられた奇妙なアルファベット。
そこには──────────『C ∴M ∴』と記されていた。
全く話が見えて来ず、俺は佐々木と宮原楓の会話を固まったまま聞いている。
「お兄ちゃんに……あたしのスマホを勝手に見られたみたいで────────」
え!?
宮原楓はややパニックになった様子で続けた。
「お兄ちゃん、最近あたしの様子がおかしいって思ってたらしいんです。それで何かあるんじゃないかって調べたらしくて──────」
そうだったの、と佐々木は動揺した様子もなく相槌を打つ。
「……けど、その手に持ってるスマホは何かしら?貴女のじゃないわよね?」
宮原楓はビクリとした様子で慌てて右手に握っていたスマホを佐々木に差し出す。
「……あ!これ……!お兄ちゃんのです……お兄ちゃんが顔を洗ってる最中の隙を狙って掴んで持ってきちゃって───────────」
お兄ちゃんは毎朝、洗顔フォームで念入りに顔を洗うのが日課だから、と宮原楓は付け加えた。
なるほどね、と佐々木は少し笑った。
「顔を洗う時は誰だって両手を使うものね。ましてや、洗顔フォームで洗っていたら暫くは両手が塞がってるでしょうし」
なかなか機転を利かせたじゃないの、と佐々木が少し褒めると宮原楓は真っ赤になって俯いた。
「えっと……あたし、とにかくショックで訳がわかんなくなっちゃってて……」
とにかく、ちょっとこれを見てください、と宮原楓はスマホを操作するとある画面を表示させた。
俺と小泉も一緒にそれを覗き込む。
それは、宮原楓の兄と思しき人物のSNSアカウントでの書き込みだった。
[ちょっとマジあり得んのやけど(怒)]
[なんかウチの妹が騙されてるくさい]
[変な男に貢がされてるっぽいんやけど何これ?]
[は?スピリチュアルとかってなんなん?(怒)」
[妹はまだ中1なんだが?]
[妹のスマホ調べたらヤバいDMとかめっちゃ出てきた(汗)]
[は?なにこれ?犯罪じゃね?]
[これって警察に被害届だせる?]
[でも出来れば親バレとかはナシの方向で行きたいんだけど可能?]
[親バレしたら妹はスマホとPC没収になるの確定しそう]
[多分俺も巻き込まれるな……今までの親のやり方考えたら]
[俺までスマホPC禁止とかにされそうで困るんだが(汗)」
[てか、一條刻夜って何者なん?]
[詳しい情報持ってる方、同じような被害にあった方はDMください]
よほど気が動転していたのだろうか。
宮原楓の兄による怒涛の更新。
その中に一つ、奇妙なリプライが付いていることに気付く。
[一條刻夜に関する重大な情報を持っています。DMしてもいいですか?]
「……え?これって……!?」
俺が思わず声を上げると宮原楓はDMのアイコンをタップした。
「初めまして。こちらは一條刻夜についてよく知る者です。
資料を添付しておきますので後はご自由にお使いください。
警察へ情報提供されても構いません。
貴殿の復讐にお役立て頂ければ幸いです」
『ハァ!?』
俺と小泉は思わず声を上げる。
なんだコイツは。
宮原兄と同じく、一條刻夜に恨みを持つ者の仕業だろうか。
俺と小泉が絶句していると、佐々木があることに気付く。
「この差し出し人の箇所にあるイニシャル─────────これは何を意味するものかしら?」
文章の末尾に添えられた奇妙なアルファベット。
そこには──────────『C ∴M ∴』と記されていた。
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