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ep8
ep8『愚者の宝石と盲目の少女たち』 犯罪の手法と反撃の拡散
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泣き続ける上野をなんとか励まし(?)、絶対に誰にも口外しないと再度誓う。
昼休憩終了のチャイムが鳴った所で俺達はフワッとした感じで解散した。
明確なゴールなんて何もない。
この事件はそんな後味の悪さを残したままで終わりを告げた。
その筈だったんだ。
事態が急変したのはそれから数日後の事だった。
朝の静かな学校。
血相を変えた小泉が保健室に駆け込んで来たことでそれは発覚した。
「……おい、大変だぞ佐々木!」
始業前の保健室でカツサンドを食っていた俺に気付くと──────小泉はますますテンパった様子で状況を説明し始めた。
「佐藤も居たのか?まあいい。早朝時間に投下され始めたらしいんだが……」
佐々木、ちょっとSNSを開いてみてくれ、と小泉はまるで助けを求めるように早口で促す。
「……どうしたんですか小泉先生?」
怪訝そうな表情を浮かべた佐々木がノートパソコンでアプリを開く。
「は!?どういうことだよ!?」
それを見た俺は言葉を失った。
「……炎上────って言っていいレベルでしょうね」
佐々木は絶句しながらも画面をスクロールする。
SNSに貼られた画像の数々。
それは───────カリスマスピリチュアルセラピスト・一條刻夜の“素顔”を暴露する物だった。
「一体誰がこんな事を……!?」
小泉も訳がわからないと言った様子で画面に食い入るようにそれらを凝視する。
流出した卒アルに文集。それに本名や住所に至るまでありとあらゆる情報が乱雑にぶち撒けられていた。
「……一條には敵が多すぎて───────誰がやったかっていうのを特定するのは難しそうね」
おそらく、恨みを買いすぎたんだろう。
それは容易に想像がついた。
上野の話では───────初回は500円だった“カウンセリング料”は通常価格だと1500円、ヒーリング有りだと2000円ほどという事だった。
ぼったくりと言うには微妙過ぎる金額。
だけど。
中学生の小遣いで払えない金額でもないが、安過ぎるということでもない。
1~2回ならともかく、複数回通うとなるとやはり金額は膨らんでくる。
カリスマからカウンセリングを受ける為に無理をして何処かから金を引っ張ってきてトラブルになった女子が居るんじゃないかってことは十分考えられることだ。
そうね、と言いながら佐々木はマウスをカチカチとクリックする。
小泉が考え込むような素振りでこう解説を続けた。
「他人には言いにくい相談事を打ち明けさせて親密な関係を築く。そこからその関係を秘密であるように仕向けて被害が表沙汰にならないようにする。あれは典型的なグルーミングの手口そのものだったからな」
聞き慣れない言葉に対し、俺は聞き返す。
「グルーミング?」
ああ、と小泉は頷いた。
「未成年者への性犯罪でよく使われる手法なんだ」
昼休憩終了のチャイムが鳴った所で俺達はフワッとした感じで解散した。
明確なゴールなんて何もない。
この事件はそんな後味の悪さを残したままで終わりを告げた。
その筈だったんだ。
事態が急変したのはそれから数日後の事だった。
朝の静かな学校。
血相を変えた小泉が保健室に駆け込んで来たことでそれは発覚した。
「……おい、大変だぞ佐々木!」
始業前の保健室でカツサンドを食っていた俺に気付くと──────小泉はますますテンパった様子で状況を説明し始めた。
「佐藤も居たのか?まあいい。早朝時間に投下され始めたらしいんだが……」
佐々木、ちょっとSNSを開いてみてくれ、と小泉はまるで助けを求めるように早口で促す。
「……どうしたんですか小泉先生?」
怪訝そうな表情を浮かべた佐々木がノートパソコンでアプリを開く。
「は!?どういうことだよ!?」
それを見た俺は言葉を失った。
「……炎上────って言っていいレベルでしょうね」
佐々木は絶句しながらも画面をスクロールする。
SNSに貼られた画像の数々。
それは───────カリスマスピリチュアルセラピスト・一條刻夜の“素顔”を暴露する物だった。
「一体誰がこんな事を……!?」
小泉も訳がわからないと言った様子で画面に食い入るようにそれらを凝視する。
流出した卒アルに文集。それに本名や住所に至るまでありとあらゆる情報が乱雑にぶち撒けられていた。
「……一條には敵が多すぎて───────誰がやったかっていうのを特定するのは難しそうね」
おそらく、恨みを買いすぎたんだろう。
それは容易に想像がついた。
上野の話では───────初回は500円だった“カウンセリング料”は通常価格だと1500円、ヒーリング有りだと2000円ほどという事だった。
ぼったくりと言うには微妙過ぎる金額。
だけど。
中学生の小遣いで払えない金額でもないが、安過ぎるということでもない。
1~2回ならともかく、複数回通うとなるとやはり金額は膨らんでくる。
カリスマからカウンセリングを受ける為に無理をして何処かから金を引っ張ってきてトラブルになった女子が居るんじゃないかってことは十分考えられることだ。
そうね、と言いながら佐々木はマウスをカチカチとクリックする。
小泉が考え込むような素振りでこう解説を続けた。
「他人には言いにくい相談事を打ち明けさせて親密な関係を築く。そこからその関係を秘密であるように仕向けて被害が表沙汰にならないようにする。あれは典型的なグルーミングの手口そのものだったからな」
聞き慣れない言葉に対し、俺は聞き返す。
「グルーミング?」
ああ、と小泉は頷いた。
「未成年者への性犯罪でよく使われる手法なんだ」
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