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ep8『愚者の宝石と盲目の少女たち』  handmade f××k

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佐々木がどういう方向から事件を追ってるのかなんて俺には全く解らなかった。

でも、多分それでもいいんだろう。

俺にはもう関係のない事だ。

いや、関係ないというより─────────俺にはもうどうしようもない事柄に思えた。

要はお手上げなんだ。

俺に出来ることなんてマジでなんもねぇからな。

後は佐々木や小泉、藤川さんがどうにかしてくれるだろう。

漠然とそう考えていた4時間目の授業の時だった。

被服室で家庭科の実習中、教室内に軽く悲鳴が上がった。

「痛っ……!」

声のした方向を見ると───────そこに居たのは上野だった。

「おいおい、なんだ?針で指でも刺したのか?」

隣の班だったんで声を掛けたんだが、いつものような威勢のいい返事は返って来ない。

「……大した事ないし」

上野が慌てて指を隠したのが見えた。

「ウソつけ。今、隠したろ?」

俺は少し強引に上野の手を引っ張った。

指先から少し血が出ている。

「……別にどうって事ないし?」

上野の声はいつもとは違う気がした。

「お前さ、なんか変じゃね?」

よく見れば顔色もすこぶる悪い。

上野は怪我した指を隠すように俯いている。

針で指を刺した時に貧血っぽくなったんだろうか?

以前に小泉が彫刻刀で指を削って貧血になってぶっ倒れた事を思い出す。

なんかさ、ちょっと前に聞いた事あるんだけどさ。これって誰でも────────怪我なんかした時に血を見たりして『あっ!?』って思ったら一気に貧血になることがあるらしいんだよな。

「なあ上野、お前さ、保健室とかでちょっと休んだほうがいいんじゃねぇの?」

俺がそう言うと上野は首を横に振った。

「ちょっと……大袈裟にしないでよ」

水森が側に来て申し訳なさそうにこう俺に告げた。

「……佐藤君。今日、佐渡さんが休みなの。保健委員は佐藤君だけだから─────上野さんを保健室に連れて行ってあげてくれない?」

佐渡って女子はこのクラスのもう一人の保健委員なんだ。あんま喋った事ねぇんだけどさ。

「そっか。佐渡が休みなら俺が連れてくしかねぇのか」

ほら、そんな真っ青な顔でトートバッグなんか縫えねぇだろうが、と俺は上野に声を掛ける。

裁縫の実習でトートバッグを縫う事になってたんだが、上野の方は布から全く進んで無かったんだよな。

やっぱりどこか体調が悪いんだろう。

水森が俺に目配せをし、佐々木の身体を立たせた。

「……じゃあ、佐藤君。上野さんをお願いね」

ああ、と俺は頷き上野の手を引っ張った。

「ほら、しっかりしろって。夜更かしでもしてたのか?」

廊下をフラフラと歩く上野の横を俺も注意深く歩く。

あれ?そういえば上野───────祭りの前くらいにも顔色が悪い日って無かったか?

「なあ上野。お前さ、最近病気でもしてんの?めっちゃ具合悪そうじゃね?」

額に汗をかいている上野の表情が少し変わったのがわかった。

「……いや、何でもないって。横になってたらヘーキだからさ」

上野の返事はやはりハリがない声だ。

やっぱめっちゃ様子がおかしいじゃねぇか。

まあ、保健室に行けば佐々木も居るだろうし──────────任せときゃ大丈夫だろう。

保健室に着き、ドアを開ける。

「なあ、佐々木。ちょっと上野を休ませてやって欲しいんだけど───────」

しかし。

またしても保健室は無人だった。

ガランとした部屋は電気すら点いていない。

人の気配はしない。

あれ?佐々木のやつ、またどっか行ってんのか?

散らかった机の上に視線を落とす。

そこにあった走り書きのメモには『岩本先生へ 図書室で調べ物学習をしています。 佐々木』と書かれていた。

「佐々木は留守してるみてぇだぜ?勝手に寝ときゃいいんじゃね?」

俺がそう声を掛けると上野の表情がサッと変わった。

「これ……どうしてこんな所に……」

上野の視線の先には──────────机の上に乗せられた例のアクセサリートレイと三つの宝石があった。

「ん?上野、この“宝石”のこと知ってんのか?」

そこまで口にした俺は────────ある一つの可能性に行き当たる。

まさか。







上野───────ってことはねぇよな……?


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