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ep8
ep8『愚者の宝石と盲目の少女たち』 滲む血と信仰の形
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ガーゼに滲んだ薄い血の色。
どうしてだか俺は─────────それが無性に怖くなったんだ。
タイミングがいい箇所で俺は適当に話を切り上げ、保健室を後にした。
その晩は理由もわからず、ただ何かが恐ろしくてなかなか眠れなかった。
翌日。
俺は恐る恐る美術準備室を訪れた。
昼休憩だが、小泉は相変わらず何かの作業に追われていた。
美術準備室。
例の“夢”の内容が脳裏にフラッシュバックする。
あの時の小泉の────────太腿の内側の血の跡。
やっぱ、身体の中に何か入れるってのは……血が出るし痛いんだろう。
一人で作業中の小泉をぼんやりと眺めながら、俺は漠然と考える。
処女膜ってのはどんな感じなんだかわかんねぇが───────破れる時ってどんな気分なんだろう?
考えただけでもなんだかこっちまで痛くなってしまう。
俺に気付いた小泉は顔も上げずに作業を続けている。
「なんだ、佐藤か?」
────何か用でもあるのか?という小泉の投げやりな問いかけに対し、俺は慎重に言葉を選びながら切り出す。
「……えっと。あのさ。昨日言ってた話があるじゃん?」
スピリチュアルセラピストの、と俺がその単語を口にすると小泉はピタリとその手を止めた。
「何か知ってるのか?」
小泉が怪訝そうな表情でこちらを向く。
ああ、と俺は頷いた。
「……ただ、コレが関係あるかはわかんねぇんだけど」
俺はそう前置きし、『SNSで拡散されているショート動画を概史に見せてもらった』というテイで話を続けた。
「なんかさ、変なアクセサリー?みたいなのが女子の間で流行ってて───────それってなんか身体の中に入れるとかなんとかで」
俺がそこまで話した途端、小泉の顔色がサッと変わった。
「……は!?それはどういう動画なんだ!?」
しまった。
動画っていう“テイ”にしちまったからなんか話がややこしいな。
「あ、ほら。爆音でなんか音楽が流れてて文字とかも読み飛ばしたから詳しくはわかんなくて─────」
なんかさ、数珠みてぇに玉がくっ付いてる芋虫みたいなヤツで、と俺がそれっぽく言うと小泉は頷いた。
鞄からタブレットを取り出し、少し操作すると画面を俺に見せる。
それは昨日俺が佐々木に見せられたものと同じサイトだった。
「お前が見た“アクセサリー”ってのは──────こういう形状じゃなかったか?」
小泉の問いかけに対し、俺はオーバーに頷いてみせる。
「そうだ、コレだよコレ!」
なんかさぁ!女子の間で流行ってるとかだけどさ!センセェはこういうの知ってた?と俺は極力いつも通りを装って質問する。
ああ、と小泉は静かに頷いた。
「思想や信条は自由だし誰が何を信仰してもいいと思う。スピリチュアルというのもそれで救われる人が居るならそれはいいことなんだろう」
だがな、と小泉は続けた。
「この件に関してだけはダメだ。まだ判断能力のない未成年者に対して保護者の許可なく───────つまりコレは医療行為に当たるんじゃないか?」
「医療行為?」
思わず俺は聞き返す。
「そうだ。元々これらの─────“ヒーリングジュエリー”と銘打たれてサイトで販売されている物品は成人女性をターゲットにしたものなんだ」
つまり……身体のまだ出来上がっていない未成年の少女の使用を想定はしていないと思われる、と小泉は眉間に皺を寄せながら説明を続けた。
「ん?よくわかんねぇけど結局どういうこと?」
俺がそう尋ねると小泉はこう答えた。
「本来なら成人女性向けである筈の物品を勝手に模倣して──────スピリチュアルと称して少女の体内に入れているのがカリスマと呼ばれる人物の正体だ」
どうしてだか俺は─────────それが無性に怖くなったんだ。
タイミングがいい箇所で俺は適当に話を切り上げ、保健室を後にした。
その晩は理由もわからず、ただ何かが恐ろしくてなかなか眠れなかった。
翌日。
俺は恐る恐る美術準備室を訪れた。
昼休憩だが、小泉は相変わらず何かの作業に追われていた。
美術準備室。
例の“夢”の内容が脳裏にフラッシュバックする。
あの時の小泉の────────太腿の内側の血の跡。
やっぱ、身体の中に何か入れるってのは……血が出るし痛いんだろう。
一人で作業中の小泉をぼんやりと眺めながら、俺は漠然と考える。
処女膜ってのはどんな感じなんだかわかんねぇが───────破れる時ってどんな気分なんだろう?
考えただけでもなんだかこっちまで痛くなってしまう。
俺に気付いた小泉は顔も上げずに作業を続けている。
「なんだ、佐藤か?」
────何か用でもあるのか?という小泉の投げやりな問いかけに対し、俺は慎重に言葉を選びながら切り出す。
「……えっと。あのさ。昨日言ってた話があるじゃん?」
スピリチュアルセラピストの、と俺がその単語を口にすると小泉はピタリとその手を止めた。
「何か知ってるのか?」
小泉が怪訝そうな表情でこちらを向く。
ああ、と俺は頷いた。
「……ただ、コレが関係あるかはわかんねぇんだけど」
俺はそう前置きし、『SNSで拡散されているショート動画を概史に見せてもらった』というテイで話を続けた。
「なんかさ、変なアクセサリー?みたいなのが女子の間で流行ってて───────それってなんか身体の中に入れるとかなんとかで」
俺がそこまで話した途端、小泉の顔色がサッと変わった。
「……は!?それはどういう動画なんだ!?」
しまった。
動画っていう“テイ”にしちまったからなんか話がややこしいな。
「あ、ほら。爆音でなんか音楽が流れてて文字とかも読み飛ばしたから詳しくはわかんなくて─────」
なんかさ、数珠みてぇに玉がくっ付いてる芋虫みたいなヤツで、と俺がそれっぽく言うと小泉は頷いた。
鞄からタブレットを取り出し、少し操作すると画面を俺に見せる。
それは昨日俺が佐々木に見せられたものと同じサイトだった。
「お前が見た“アクセサリー”ってのは──────こういう形状じゃなかったか?」
小泉の問いかけに対し、俺はオーバーに頷いてみせる。
「そうだ、コレだよコレ!」
なんかさぁ!女子の間で流行ってるとかだけどさ!センセェはこういうの知ってた?と俺は極力いつも通りを装って質問する。
ああ、と小泉は静かに頷いた。
「思想や信条は自由だし誰が何を信仰してもいいと思う。スピリチュアルというのもそれで救われる人が居るならそれはいいことなんだろう」
だがな、と小泉は続けた。
「この件に関してだけはダメだ。まだ判断能力のない未成年者に対して保護者の許可なく───────つまりコレは医療行為に当たるんじゃないか?」
「医療行為?」
思わず俺は聞き返す。
「そうだ。元々これらの─────“ヒーリングジュエリー”と銘打たれてサイトで販売されている物品は成人女性をターゲットにしたものなんだ」
つまり……身体のまだ出来上がっていない未成年の少女の使用を想定はしていないと思われる、と小泉は眉間に皺を寄せながら説明を続けた。
「ん?よくわかんねぇけど結局どういうこと?」
俺がそう尋ねると小泉はこう答えた。
「本来なら成人女性向けである筈の物品を勝手に模倣して──────スピリチュアルと称して少女の体内に入れているのがカリスマと呼ばれる人物の正体だ」
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