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ep8
ep8『愚者の宝石と盲目の少女たち』 誕生、二重スパイ
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「……何か─────知ってるのね?」
佐々木の表情がサッと変わった気がした。
「え?いや、ガッツリ知ってるって訳でもなくて────────」
どう話していいものか解らない俺はしどろもどろに答える。
藤川さんと小泉が活動していると言う団体、”BMG“。
そこには守秘義務のようなルールなんかはあるんだろうか?
確か、子どもからの悩み相談とかを受けてるんだよな?
内緒で打ち明けた話の内容が外部に漏れてるって……もしも相談したヤツが知ったらどうなる?
─────恐らく、いい気はしねぇだろうな。
俺は佐々木に話すべきじゃないのだろうか。
或いはその逆、さっきの出来事を小泉に話すのは?
俺は首を振った。
なんか、どっちも不味い気がしてくる。内容がセンシティブ過ぎる。
多分だがこれは、男の俺が首を突っ込んでいい領域じゃないんじゃないか?
けど、どうする?
佐々木は明らかにさっきまでとは違う目付きで俺を見ている。
コイツの前で隠し事なんか出来っこないだろう。
俺は観念し、極力ボカした言い回しでうっすらとした話を伝えることにした。
「あ、えっと……小泉から聞いたんだけどさ───────」
なんか、女子中学生の間でカリスマ的な”スピリチュアルセラピスト“が居るって噂で、と俺は平静を装って答えた。
「そう。その話の情報の出どころって何処かわかる?」
佐々木はなおも俺に揺さぶりを掛けてくる。
「……えっと。小泉の後輩に当たる人から聞いたって───────あくまでも噂レベルだから詳しくは知らねぇんじゃないか?」
俺がキョドりながらそう答えると、佐々木はそう、とだけ言ったきり少し黙った。
いずれにせよ、さっきの件は小泉に報告する必要があるか─────?
どうしよう。
けど、コレってさ、もう佐々木が一人でどうにか出来る範疇を超えてるんじゃねぇか?
だっていくらコイツが頭が切れるって言ってもさ、やっぱ中学生な訳じゃん?
一人で調べるとかいっても流石に限界もあるだろう。
じゃあどうする?
あんなヤベェもんの流行を野放しにも出来ねぇ。
しかも、あの宝石が体内に入ってる女子が居たとしても─────外からは絶対にわかんねぇだろ?
ほっといたら絶対に不味いことになる。誰かがどこかで止めないといけねぇだろう。
そう確信した俺は思い切って佐々木にこう提案をした。
「……なあ、佐々木。こういうのってホントは良くないんだろうけど────────さっきの話、ちょっとボカしてさ、小泉に話してもいいか?」
俺がそう言うと佐々木は目を見開いた。
「……え?この”フォールジェム“の事を?」
その表情には戸惑いが見てとれた。やっぱそうだよな。
「小泉ってさ、やっぱ先生だからいろんな情報持ってんじゃん?交換条件って訳でもねぇんだけど───────」
さっきの事とか話したらさ、『実は……』って感じでなんか新情報とか出てきそうじゃね、と俺は極力落ち付いた様子を心掛けながら続けた。
「……そう。情報交換って訳ね」
佐々木のその言葉には何か含みがあるように感じられる。
「勿論、俺は佐々木がここで探偵みたいなことやってるなんて絶対言わねぇからさ。その方がいいんだろ?」
俺がそう言うと佐々木は少し笑った。
「──────そうね。よく理解(わか)ってるじゃない」
恐らく、小泉はそれを知ったとしても佐々木の探偵活動を邪魔するような事はしねぇだろう。だけど。
多分、佐々木の方がそういうのって嫌なんじゃないかなって思ったんだよな。
自分のペースを乱されたくねぇっていうかさ。
なんか、コイツって手札をいつも伏せてるんだ。昔っからそうなんだよ。だから、多分そっちの方がいいって思ったんだよな。俺的にはさ。
「もしも新しく情報が手に入ったら……真っ先にお前に伝えるから」
そんなこんなで意図せずして俺は──────────────二重スパイみたいな立ち位置になってしまった訳だが……
佐々木の表情がサッと変わった気がした。
「え?いや、ガッツリ知ってるって訳でもなくて────────」
どう話していいものか解らない俺はしどろもどろに答える。
藤川さんと小泉が活動していると言う団体、”BMG“。
そこには守秘義務のようなルールなんかはあるんだろうか?
確か、子どもからの悩み相談とかを受けてるんだよな?
内緒で打ち明けた話の内容が外部に漏れてるって……もしも相談したヤツが知ったらどうなる?
─────恐らく、いい気はしねぇだろうな。
俺は佐々木に話すべきじゃないのだろうか。
或いはその逆、さっきの出来事を小泉に話すのは?
俺は首を振った。
なんか、どっちも不味い気がしてくる。内容がセンシティブ過ぎる。
多分だがこれは、男の俺が首を突っ込んでいい領域じゃないんじゃないか?
けど、どうする?
佐々木は明らかにさっきまでとは違う目付きで俺を見ている。
コイツの前で隠し事なんか出来っこないだろう。
俺は観念し、極力ボカした言い回しでうっすらとした話を伝えることにした。
「あ、えっと……小泉から聞いたんだけどさ───────」
なんか、女子中学生の間でカリスマ的な”スピリチュアルセラピスト“が居るって噂で、と俺は平静を装って答えた。
「そう。その話の情報の出どころって何処かわかる?」
佐々木はなおも俺に揺さぶりを掛けてくる。
「……えっと。小泉の後輩に当たる人から聞いたって───────あくまでも噂レベルだから詳しくは知らねぇんじゃないか?」
俺がキョドりながらそう答えると、佐々木はそう、とだけ言ったきり少し黙った。
いずれにせよ、さっきの件は小泉に報告する必要があるか─────?
どうしよう。
けど、コレってさ、もう佐々木が一人でどうにか出来る範疇を超えてるんじゃねぇか?
だっていくらコイツが頭が切れるって言ってもさ、やっぱ中学生な訳じゃん?
一人で調べるとかいっても流石に限界もあるだろう。
じゃあどうする?
あんなヤベェもんの流行を野放しにも出来ねぇ。
しかも、あの宝石が体内に入ってる女子が居たとしても─────外からは絶対にわかんねぇだろ?
ほっといたら絶対に不味いことになる。誰かがどこかで止めないといけねぇだろう。
そう確信した俺は思い切って佐々木にこう提案をした。
「……なあ、佐々木。こういうのってホントは良くないんだろうけど────────さっきの話、ちょっとボカしてさ、小泉に話してもいいか?」
俺がそう言うと佐々木は目を見開いた。
「……え?この”フォールジェム“の事を?」
その表情には戸惑いが見てとれた。やっぱそうだよな。
「小泉ってさ、やっぱ先生だからいろんな情報持ってんじゃん?交換条件って訳でもねぇんだけど───────」
さっきの事とか話したらさ、『実は……』って感じでなんか新情報とか出てきそうじゃね、と俺は極力落ち付いた様子を心掛けながら続けた。
「……そう。情報交換って訳ね」
佐々木のその言葉には何か含みがあるように感じられる。
「勿論、俺は佐々木がここで探偵みたいなことやってるなんて絶対言わねぇからさ。その方がいいんだろ?」
俺がそう言うと佐々木は少し笑った。
「──────そうね。よく理解(わか)ってるじゃない」
恐らく、小泉はそれを知ったとしても佐々木の探偵活動を邪魔するような事はしねぇだろう。だけど。
多分、佐々木の方がそういうのって嫌なんじゃないかなって思ったんだよな。
自分のペースを乱されたくねぇっていうかさ。
なんか、コイツって手札をいつも伏せてるんだ。昔っからそうなんだよ。だから、多分そっちの方がいいって思ったんだよな。俺的にはさ。
「もしも新しく情報が手に入ったら……真っ先にお前に伝えるから」
そんなこんなで意図せずして俺は──────────────二重スパイみたいな立ち位置になってしまった訳だが……
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