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ep8『愚者の宝石と盲目の少女たち』 日常に入り込む魔術師

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でもさ、と俺は疑念を打ち消すように言葉を発した。

「セラピストってのには資格とか試験とかあるんだろ?さっき二人が言ってたみたいにさ?」

学校の先生と一緒でさ、試験受けて免許持ってる人ならそこまで心配しなくてもいいんじゃねぇの、と俺が言うと小泉はそれを否定した。

「それは違うぞ、佐藤」

「セラピストっていうのは─────必ずしも資格が必要って訳じゃないのよ」

勿論きちんとした免許や国家資格を持った人も居るのは本当なんだけどね、と藤川さんも間髪入れずに言葉を続けた。

「は?無免でもやれんのか!?その仕事って?」

じゃあ俺でも勝手に名乗れるってことかよ、と俺が驚くと小泉がため息をつく。

「まあそうだな。極端な事を言えばそうなるな」

は!?マジか!?無資格でそういうの名乗れんのかよ。てか、そういうモンなのか?

「理学療法士やあん摩マッサージ指圧師なんかだと国家資格が必要ね。でも、それ以外のセラピストだと民間資格だったりもするし、そもそも無資格でも開業も出来るらしいの」

なんか一気に怪しくなってくたな。

「じゃあさ、その……話題になってるっていうカリスマセラピストってのはどうなんだ?国家資格持ってんのかよ?」

俺がそう尋ねると藤川さんは言葉を詰まらせた。

「どうかしら……肩書きから察するに国家資格は必要ないジャンルに思えるんだけど───────」

ジャンルって?と俺が聞き返すと小泉が解説を始めた。

「セラピストってのにはいくつか種類があってな。ザックリ分類すると医療系・美容系・メンタル系・リラクゼーション系の4つに分けられる」

なるほど。いろんな種類の奴が居て結構幅広い商売なんだな?

「え?じゃあさ、ソイツってさ、どのジャンルになんの?中学生女子に人気ってことは美容系とか?キレイになれるとか痩せるとか??」

運動部でもない女子中学生が医療系のセラピストに殺到するってのは考え難いもんな。スポーツやってる奴だとよく整体に通ってるとかって話は聞くけどさ。

ううむ、と小泉は唸った後に少し間を置いてこう言った。

「まだ詳細は分からんのだが……どうやらその男性は『スピリチュアルセラピスト』を名乗っているらしいんだ」

スピリチュアル???なんだそれは。

初めて聞く単語にまたしても俺は戸惑う。

「なんかますますゲームの世界の職業みたいな名前だな。特殊スキルか?」

中世ヨーロッパとかファンタジー世界みたいな服装でもしてるんだろうか。

俺が疑問を口にすると藤川さんが苦笑いを浮かべた。

「そうよね……なんだかスピリチュアルって馴染みが薄い単語だし───────正直、私達の世代ですらピンと来ないって印象なの」

藤川さんもよく分からんジャンルなのか。じゃあ俺なんかだとますます知らなくて当然だよな。

「ウチは神社をやってるだろう?その関係で色んなお客さんと接する機会もあるんだが───────」

近年は“御朱印ブーム”“パワースポットブーム”なんてものもあってな。神社としてはありがたいブームではあるんだが、と小泉は複雑そうな表情を浮かべた。

「御朱印やパワースポット、スピリチュアルだのっていうのはどちらと言えば学生の年齢層より上の世代がブームの中心っていう印象なんだよ。少なくとも女子中学生の間で流行ってるって話は今まで聞いたことがない」

よく分からんが……大人の間では流行ってるけど10代はあんまり興味を持たないジャンルって意味なんだろうか。

「そもそもスピリチュアルってなんなんだ?そこがまず分からねぇんだけど」

思わず俺がそう口にすると小泉はこう言った。

「わかりやすく説明すれば────── 現代の国内での意味合いでは[癒やし、セラピー、補完・代替医療、占星術、東洋思想、古代文明、超自然現象]なんかをひっくるめたジャンル───────ってトコだろうな」(※1)

全然わかりやすくねぇ上にちっともピンとこねぇんだが。










「それってさ、普通に聞いただけだと──────『魔法』と大差なくねぇか?」












※Wikipediaより抜粋

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