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ep8
ep8『愚者の宝石と盲目の少女たち』 悪戯
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俺は藤川さんの顔を見る。
この団体の設立の裏には何か複雑な背景がありそうだが────────それはこちらからは深く突っ込まない方がいいのだろうか。
さっきのリーフレットには『性の悩み』といった文言があった気がする。
それぞれの事情か。
俺はチラリと横目で小泉の表情を窺う。
藤川さんの方を見つめながらも、どこか緊張した面持ちに見える。
どんな理由があってこういった活動をするに至ったかは判らないが───────とりあえず俺は黙って話を聞くだけにしておいた方が良さそうだ。
話したければ向こうから話してくるだろうからな。
俺が黙っていると、藤川さんはため息をついた。
「まあ、そうこうして団体を立ち上げたものの……なかなか思うようにはならないわね」
そうだな、と小泉もやや疲れた様子で頷く。
「男子中学生ですら必要性を理解してくれてるって言うのに───────ここの学校の教頭って頭が硬過ぎじゃない?」
さっきの生理用品の事だろうか?
「確か、ダメって言われたんでしたっけ?なんか、経費が嵩むとかそういう理由ですか?」
ナプキンを配るってのはよく分からんが──────まあまあ予算が必要だからだろうか?
幾らくらいの価格帯なのか俺には見当も付かないが、全校生徒のうち半分の女子生徒分をどうにかしようってんならかなりの額になるからとか?
俺の質問に対し──────そうじゃないのよ、と藤川さんは首を振った。
「“BMG”の活動にかかる経費は寄付や地元企業の協力で成り立ってるの。だから、学校側の費用の負担は一切ないわ」
さらに小泉もこう付け加える。
「『にこにこドラッグ』ってあるだろう?そこが全面協力してくれることになっててな。配布する生理用品やその他の物品はここのグループが現物で支給してくれるんだ」
にこにこドラッグ。
俺達の住んでる市内に幾つか店舗のあるチェーン店だ。
この近辺のエリアで数十店舗の展開をしている地域密着型の企業でもある。
「現物支給?それは太っ腹ですね。……ん?」
学校側の負担する金はかかんないってことならなんでダメなんだ?と俺が何気なく呟くと、藤川さんはうんうんと頷く。
「そうよね。佐藤君もそう思うわよね」
学校は金を払わなくても金に余裕のある企業が出してくれてんだろ?
じゃあ貰えるもんは貰っとけばよくね?
「まあ、元々私達の活動自体もそこまでお金が掛かるって程でもないものだしね。その他の経費もリーフレットの印刷費用と通信費程度で」
飲み物や食べ物、交通費なんかはメンバーが自己負担してるからな、と小泉も相槌を打つ。
金は掛かっておらず、メンバーも善意からのボランティアで活動してる。
「え、それならさ、ますます遠慮せずに受け取れば良くないですか?」
せっかくの申し出なのに、教頭は何が気に入らないって言うんだろう?
「万が一トラブルが起こったら対処できないって理由らしいわ。管理職の高齢男性らしい考え方ね」
トラブルってどういうことだよ。意味わかんなくね?
「校内の女子トイレの手洗い場にストックの生理用品を置いておくってだけの事なんだがな。忘れたり、用意してない時に生理が来たら困るだろう?」
小泉も納得いかない様子で呟く。
「要するに『ご自由にお使いください』スタイルで設置するってだけの話なのよ。自分のを持ってる子はそれを使えばいいしね。全員に強制するようなものでも無いし」
「やっぱそれじゃトラブルって起こらなくないですか?」
金もかからないしタダで貰える。そもそも女子には必需品ってシロモノだ。
誰も損とかしてなくね?
一体何がダメって言うんだ?
困惑しながら俺がそう言うと小泉は不服そうにこう答えた。
「どうやら教頭は───────生徒の誰かが悪戯したり、一部の生徒がゴッソリ持ち去ったりってトラブルを想定してるらしいんだ」
この団体の設立の裏には何か複雑な背景がありそうだが────────それはこちらからは深く突っ込まない方がいいのだろうか。
さっきのリーフレットには『性の悩み』といった文言があった気がする。
それぞれの事情か。
俺はチラリと横目で小泉の表情を窺う。
藤川さんの方を見つめながらも、どこか緊張した面持ちに見える。
どんな理由があってこういった活動をするに至ったかは判らないが───────とりあえず俺は黙って話を聞くだけにしておいた方が良さそうだ。
話したければ向こうから話してくるだろうからな。
俺が黙っていると、藤川さんはため息をついた。
「まあ、そうこうして団体を立ち上げたものの……なかなか思うようにはならないわね」
そうだな、と小泉もやや疲れた様子で頷く。
「男子中学生ですら必要性を理解してくれてるって言うのに───────ここの学校の教頭って頭が硬過ぎじゃない?」
さっきの生理用品の事だろうか?
「確か、ダメって言われたんでしたっけ?なんか、経費が嵩むとかそういう理由ですか?」
ナプキンを配るってのはよく分からんが──────まあまあ予算が必要だからだろうか?
幾らくらいの価格帯なのか俺には見当も付かないが、全校生徒のうち半分の女子生徒分をどうにかしようってんならかなりの額になるからとか?
俺の質問に対し──────そうじゃないのよ、と藤川さんは首を振った。
「“BMG”の活動にかかる経費は寄付や地元企業の協力で成り立ってるの。だから、学校側の費用の負担は一切ないわ」
さらに小泉もこう付け加える。
「『にこにこドラッグ』ってあるだろう?そこが全面協力してくれることになっててな。配布する生理用品やその他の物品はここのグループが現物で支給してくれるんだ」
にこにこドラッグ。
俺達の住んでる市内に幾つか店舗のあるチェーン店だ。
この近辺のエリアで数十店舗の展開をしている地域密着型の企業でもある。
「現物支給?それは太っ腹ですね。……ん?」
学校側の負担する金はかかんないってことならなんでダメなんだ?と俺が何気なく呟くと、藤川さんはうんうんと頷く。
「そうよね。佐藤君もそう思うわよね」
学校は金を払わなくても金に余裕のある企業が出してくれてんだろ?
じゃあ貰えるもんは貰っとけばよくね?
「まあ、元々私達の活動自体もそこまでお金が掛かるって程でもないものだしね。その他の経費もリーフレットの印刷費用と通信費程度で」
飲み物や食べ物、交通費なんかはメンバーが自己負担してるからな、と小泉も相槌を打つ。
金は掛かっておらず、メンバーも善意からのボランティアで活動してる。
「え、それならさ、ますます遠慮せずに受け取れば良くないですか?」
せっかくの申し出なのに、教頭は何が気に入らないって言うんだろう?
「万が一トラブルが起こったら対処できないって理由らしいわ。管理職の高齢男性らしい考え方ね」
トラブルってどういうことだよ。意味わかんなくね?
「校内の女子トイレの手洗い場にストックの生理用品を置いておくってだけの事なんだがな。忘れたり、用意してない時に生理が来たら困るだろう?」
小泉も納得いかない様子で呟く。
「要するに『ご自由にお使いください』スタイルで設置するってだけの話なのよ。自分のを持ってる子はそれを使えばいいしね。全員に強制するようなものでも無いし」
「やっぱそれじゃトラブルって起こらなくないですか?」
金もかからないしタダで貰える。そもそも女子には必需品ってシロモノだ。
誰も損とかしてなくね?
一体何がダメって言うんだ?
困惑しながら俺がそう言うと小泉は不服そうにこう答えた。
「どうやら教頭は───────生徒の誰かが悪戯したり、一部の生徒がゴッソリ持ち去ったりってトラブルを想定してるらしいんだ」
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