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ep7.5
ep7.5『夢千夜』 “PTA vs RTA SEX” 第八夜
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小泉の手が震えているのが仄かに薄暗い部屋の中でも判った。
「……あ」
小泉が紙袋を床に落としたのでそれを拾い上げる。
「ん?」
紙袋の中から小さな正方形のパッケージが数個飛び出していた。
「何これ?コンドームか?」
俺がその一つを手に取ると小泉はまた呆れたようにため息をついた。
「……そんなわけないだろ?化粧品のサンプルだよ」
行きつけの薬局の店員さんが新商品のお試しにって多目に入れてくれたんだよ、と小泉はミネラルウォーターを飲みながら答える。
なるほど、化粧品か。
俺は一緒に入れられていたリーフレットを何気なく手に取った。
『しっとりとしたリッチな質感とベタつかないテクスチャを両立させた新感覚で究極のとろみ化粧水です。すっとなじんで角質層までじっくりうるおします』という記載が目に留まる。
「とろみ?うるおす?」
最近の化粧水ってこんなオーバーな感じなのか?めっちゃ仰々しいじゃねぇか。
リーフレットを読みながら──────────俺はある考えに辿り着く。
「なあ、センセェ。コレって使えねぇかな?」
俺がそう言うと小泉はビクリと肩を震わせた。
「……は!?」
いや、だからさ。ローション代わりに、と言い掛けた俺の言葉を遮り小泉は混乱した様子で喚く。
「……コレをか!?コレを使うのか!?」
「いや、コレってさ。肌に使っていい物でとろみがある液体なんだろ?しかも『敏感肌の方にも優しい添加物不使用の処方です』って書いてあるし──────」
サラダ油やアラビックヤマトより遥かに良さげじゃね?と言うと小泉は黙った。
「……っ!」
「いや、センセェが嫌だって言うなら無理に使おうとは言わねぇけどさ──────」
ただ、と俺は続けた。
やっぱなんか潤滑油的なのが無いと痛いのはセンセェの方だろ?と俺が強調すると小泉はまた泣きそうな表情を浮かべた。
「……それは──────そうなのかもしれないが」
小泉自身もどうしたらいいか分からないでいるんだろう。
「あ、じゃあさ。ちょっとだけ使ってみてダメそうだったら使うの止めようぜ」
良さげっていうかさ、悪く無い感触だったら追加で使えばいいんだし、と俺は手元の小さなパッケージに視線を落とす。
サンプルのとろみ化粧水は全部で三包あった。
コレだけあればまあ、なんとかなりそうな気がする。
「まあ、ハナシも纏まったコトだし───────直ぐに取り掛かろうぜ」
俺がそう言った直後、複数の足音が廊下に響いているのが聞こえた。
「……!!」
俺と小泉は咄嗟に身構える。
『────小泉先生は!?』
『美術室っしょ!?』
誰かと誰かの会話が聞こえる。
複数の人物が────────小泉を探しにここまで来たっていうのか?
「……あ」
小泉が紙袋を床に落としたのでそれを拾い上げる。
「ん?」
紙袋の中から小さな正方形のパッケージが数個飛び出していた。
「何これ?コンドームか?」
俺がその一つを手に取ると小泉はまた呆れたようにため息をついた。
「……そんなわけないだろ?化粧品のサンプルだよ」
行きつけの薬局の店員さんが新商品のお試しにって多目に入れてくれたんだよ、と小泉はミネラルウォーターを飲みながら答える。
なるほど、化粧品か。
俺は一緒に入れられていたリーフレットを何気なく手に取った。
『しっとりとしたリッチな質感とベタつかないテクスチャを両立させた新感覚で究極のとろみ化粧水です。すっとなじんで角質層までじっくりうるおします』という記載が目に留まる。
「とろみ?うるおす?」
最近の化粧水ってこんなオーバーな感じなのか?めっちゃ仰々しいじゃねぇか。
リーフレットを読みながら──────────俺はある考えに辿り着く。
「なあ、センセェ。コレって使えねぇかな?」
俺がそう言うと小泉はビクリと肩を震わせた。
「……は!?」
いや、だからさ。ローション代わりに、と言い掛けた俺の言葉を遮り小泉は混乱した様子で喚く。
「……コレをか!?コレを使うのか!?」
「いや、コレってさ。肌に使っていい物でとろみがある液体なんだろ?しかも『敏感肌の方にも優しい添加物不使用の処方です』って書いてあるし──────」
サラダ油やアラビックヤマトより遥かに良さげじゃね?と言うと小泉は黙った。
「……っ!」
「いや、センセェが嫌だって言うなら無理に使おうとは言わねぇけどさ──────」
ただ、と俺は続けた。
やっぱなんか潤滑油的なのが無いと痛いのはセンセェの方だろ?と俺が強調すると小泉はまた泣きそうな表情を浮かべた。
「……それは──────そうなのかもしれないが」
小泉自身もどうしたらいいか分からないでいるんだろう。
「あ、じゃあさ。ちょっとだけ使ってみてダメそうだったら使うの止めようぜ」
良さげっていうかさ、悪く無い感触だったら追加で使えばいいんだし、と俺は手元の小さなパッケージに視線を落とす。
サンプルのとろみ化粧水は全部で三包あった。
コレだけあればまあ、なんとかなりそうな気がする。
「まあ、ハナシも纏まったコトだし───────直ぐに取り掛かろうぜ」
俺がそう言った直後、複数の足音が廊下に響いているのが聞こえた。
「……!!」
俺と小泉は咄嗟に身構える。
『────小泉先生は!?』
『美術室っしょ!?』
誰かと誰かの会話が聞こえる。
複数の人物が────────小泉を探しにここまで来たっていうのか?
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