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ep7.
ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 祭りのあと 遠い空の下で
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翌日。
戻ってきた叔父に祭りの件がバレた小泉とシンジは大目玉を喰らったようだ。
あの後が大変だった。
ドッペルゲンガーとその息子がハコニンゲンもろとも消えた後──────俺は大慌てで小泉を叩き起こした。
小泉は完璧に意識を失っており、状況を把握出来ていないようだった。
小泉だけではない。
祭り会場に居た全員が─────────綺麗さっぱりと前後の出来事やドッペルゲンガーに関する記憶を無くしてしまっていた。
それほどまでに花園リセのパウンドケーキの威力が強烈だったのだろうか?
それとも。
或いは、何らかの別の要因があったのかもしれない。
今となってはもう、確かめる術はないが────────
俺の背後に居た“こちらの世界のハコニンゲン”は忽然と姿を消していた。
一体、アレは何だったのだろうか。
これは勘なんだが、あのハコニンゲンはそう遠くないうちに俺の目の前に姿を現すんじゃないか。そんな気がする。
ドッペルゲンガーとその息子。
もう会うことは無いだろうが─────────不思議な感覚だ。
「……全く、妙な出来事だったな」
叔父にこっぴどく叱られ、後片付けを大急ぎて終わらせた小泉が社務所でグッタリとしながら緑茶を身体に流し込んでいた。
「いや、マジで悪かったな。滅茶苦茶なモンに巻き込んじまって───────」
俺がそう言うと小泉は深いため息をついた。
「それにしても─────よく24時間で人員を集めて祭り開催に漕ぎ着けたものだな」
ドッペルゲンガーとやらの話も不可解だが私はこっちが気になったんだが、と小泉は独り言のように呟く。
確かにそうだ。
絶対に集まらないメンツが奇跡的に集まった─────── 一夜限りのお祭り騒ぎ。
「……まあ、信じられないってのもわかるぜ。何から何までイミフだからな」
俺だって未だにワケがわからねぇし、と俺が返すと小泉は俺の方をチラリと見る。
「……ドッペルゲンガーが暫くは向こうの世界に帰れないかもしれないって思ったからさ、佑ニーサンに偽造書類の調達を依頼したって流れなんだけど────」
「しかし……まさかこんなに早く事態が収束されるとは、それはそれで奇妙だったな」
俺が経緯を説明したからさ、記憶が飛んじまった小泉も今回の出来事の概要は把握してるんだが……普通に聞いてりゃまあ、不可思議なハナシだよな。
「いや、実はさ。そん時に佑ニーサンに別の件も頼んでたんだよな。他にも妙なツテやコネがあるみたいで」
俺はポケットから折り畳まれた書類を取り出し、小泉に見せた。
「……なんだこの書類は?」
怪訝な表情の小泉がそれを受け取る。
「……DNA鑑定の結果だ。ドッペルゲンガーとその息子が親子である確率は99.999%だそうだ」
「え……!?」
小泉は書類に視線を落とし、困惑したような表情を浮かべる。
まあそうだよな。
俺と同い年のドッペルゲンガーが14歳でガチでガキ作ってんだもん。どう考えてもイカれてるだろ?
この話には続きがあってさ、と俺はやや強調しながら言った。
「俺とドッペルゲンガーの息子との間の親子鑑定結果は────────0%だったらしい」
「ハァ!?」
小泉が素っ頓狂な声を上げる。
「それってどういう──────?!」
それがどういう意味を持つのか俺にもわからない。
とりあえず確定してるのは、俺とドッペルゲンガーは全くの別の個体だったってことだけだ。
似てるけど違う人間。
同じ顔、同じ名前、同じ身体。
それは不思議な感覚だった。
「いや、ドッペルゲンガーの息子なら俺の息子でもあるのかなって単純に思ってさ。それでついでに依頼しただけなんだけど……」
何から何までおかしな話だな、と小泉は戸惑いを隠せないような表情を浮かべる。
「けどさ、一つだけ確信出来たことってあったんだよな」
何だ?と小泉は俺の言葉に反応して聞き返す。
「アイツさ、息子の母親の心当たりが無ぇって言ってたけど─────多分、うっすら察してるように思うんだよな。すっとぼけてるだけでさ」
そうなのか?と小泉は腑に落ちない様子で俺の方を見ると、また緑茶を流し込んだ。
奴等が消える直前。
最後の瞬間のドッペルゲンガーはどこか幸せそうな────────安堵に満ちた表情だった気がする。
もう会うことは無いだろう。
だけど。
遠い世界のもう一人の俺。
アイツらが──────────ずっと幸せに暮らせることを願わずにはいられなかった。
戻ってきた叔父に祭りの件がバレた小泉とシンジは大目玉を喰らったようだ。
あの後が大変だった。
ドッペルゲンガーとその息子がハコニンゲンもろとも消えた後──────俺は大慌てで小泉を叩き起こした。
小泉は完璧に意識を失っており、状況を把握出来ていないようだった。
小泉だけではない。
祭り会場に居た全員が─────────綺麗さっぱりと前後の出来事やドッペルゲンガーに関する記憶を無くしてしまっていた。
それほどまでに花園リセのパウンドケーキの威力が強烈だったのだろうか?
それとも。
或いは、何らかの別の要因があったのかもしれない。
今となってはもう、確かめる術はないが────────
俺の背後に居た“こちらの世界のハコニンゲン”は忽然と姿を消していた。
一体、アレは何だったのだろうか。
これは勘なんだが、あのハコニンゲンはそう遠くないうちに俺の目の前に姿を現すんじゃないか。そんな気がする。
ドッペルゲンガーとその息子。
もう会うことは無いだろうが─────────不思議な感覚だ。
「……全く、妙な出来事だったな」
叔父にこっぴどく叱られ、後片付けを大急ぎて終わらせた小泉が社務所でグッタリとしながら緑茶を身体に流し込んでいた。
「いや、マジで悪かったな。滅茶苦茶なモンに巻き込んじまって───────」
俺がそう言うと小泉は深いため息をついた。
「それにしても─────よく24時間で人員を集めて祭り開催に漕ぎ着けたものだな」
ドッペルゲンガーとやらの話も不可解だが私はこっちが気になったんだが、と小泉は独り言のように呟く。
確かにそうだ。
絶対に集まらないメンツが奇跡的に集まった─────── 一夜限りのお祭り騒ぎ。
「……まあ、信じられないってのもわかるぜ。何から何までイミフだからな」
俺だって未だにワケがわからねぇし、と俺が返すと小泉は俺の方をチラリと見る。
「……ドッペルゲンガーが暫くは向こうの世界に帰れないかもしれないって思ったからさ、佑ニーサンに偽造書類の調達を依頼したって流れなんだけど────」
「しかし……まさかこんなに早く事態が収束されるとは、それはそれで奇妙だったな」
俺が経緯を説明したからさ、記憶が飛んじまった小泉も今回の出来事の概要は把握してるんだが……普通に聞いてりゃまあ、不可思議なハナシだよな。
「いや、実はさ。そん時に佑ニーサンに別の件も頼んでたんだよな。他にも妙なツテやコネがあるみたいで」
俺はポケットから折り畳まれた書類を取り出し、小泉に見せた。
「……なんだこの書類は?」
怪訝な表情の小泉がそれを受け取る。
「……DNA鑑定の結果だ。ドッペルゲンガーとその息子が親子である確率は99.999%だそうだ」
「え……!?」
小泉は書類に視線を落とし、困惑したような表情を浮かべる。
まあそうだよな。
俺と同い年のドッペルゲンガーが14歳でガチでガキ作ってんだもん。どう考えてもイカれてるだろ?
この話には続きがあってさ、と俺はやや強調しながら言った。
「俺とドッペルゲンガーの息子との間の親子鑑定結果は────────0%だったらしい」
「ハァ!?」
小泉が素っ頓狂な声を上げる。
「それってどういう──────?!」
それがどういう意味を持つのか俺にもわからない。
とりあえず確定してるのは、俺とドッペルゲンガーは全くの別の個体だったってことだけだ。
似てるけど違う人間。
同じ顔、同じ名前、同じ身体。
それは不思議な感覚だった。
「いや、ドッペルゲンガーの息子なら俺の息子でもあるのかなって単純に思ってさ。それでついでに依頼しただけなんだけど……」
何から何までおかしな話だな、と小泉は戸惑いを隠せないような表情を浮かべる。
「けどさ、一つだけ確信出来たことってあったんだよな」
何だ?と小泉は俺の言葉に反応して聞き返す。
「アイツさ、息子の母親の心当たりが無ぇって言ってたけど─────多分、うっすら察してるように思うんだよな。すっとぼけてるだけでさ」
そうなのか?と小泉は腑に落ちない様子で俺の方を見ると、また緑茶を流し込んだ。
奴等が消える直前。
最後の瞬間のドッペルゲンガーはどこか幸せそうな────────安堵に満ちた表情だった気がする。
もう会うことは無いだろう。
だけど。
遠い世界のもう一人の俺。
アイツらが──────────ずっと幸せに暮らせることを願わずにはいられなかった。
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