[200万PV達成]それを捨てるなんてとんでもない!〜童貞を捨てる度に過去に戻されてしまう件〜おまけに相手の記憶も都合よく消えてる!?

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ep7.

ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 ミス・ヘネシー リシャール

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僕は甘いものは好きじゃないから、と言いながら岬は景品の残りの菓子をドッペルゲンガーの息子に与えていた。

もしかしたらコイツって案外、いいとこもあるのかもしれないな、と俺はなんとなく思った。

ふと横を見ると概史の横で撫子がフランクフルトを頬張っている。

「あれ?この子って最初から居たっけ?」

俺がそう口にすると概史がニヤニヤとしながらこう答える。

「俺が呼んだんスよwこいつ、夜は弟や妹の世話があるから来れないって言ってたんですけどw」

なんでも食い放題だぞって言ったらすっ飛んできた感じでwwと概史は説明する。

心なしか概史も嬉しそうに見える。

「まあ、ちょっと多めに材料とか用意して貰ったしな。余らせるくらいなら食べ切って貰った方がいいだろうし─────」

フランクフルトを二本ほど食べ終わった撫子は焼きそばを食べ始めた。

「相変わらずいい食いっぷりだな」

俺が感心していると背後から聞き覚えのある声が聞こえた。

「へー!マジでお祭りなんだ!」

アンタ達兄弟で企画したの?スゴ過ぎっしょ?と感心した様子でそこに立っていたのは──────上野綾だった。

「あれ?なんでお前が居んの?」

俺がそう尋ねると答えたのはドッペルゲンガーだった。

「俺が呼んだんだよ。なんかさ、コイツの着替え用のお下がりとかくれるって約束だったからよォ」

祭りの参加者が増えるのも悪くねぇだろ?賑やかでさ?と佐藤次郎(仮)は息子を肩車した状態で言った。

なるほどな。

「まあ、上野も折角来たんならゆっくり遊んでけよ。食いモンもあるしよ」

俺がそう言うと上野は周囲を見回した。

「佐藤っちに言われなくてもそうするし?てか、夢野っち以外にも結構なメンツが揃ってるじゃん?」

まあ、確かにな。

財閥のご令嬢の花園リセを筆頭に、西中の王子様の岬京矢、校内ではカースト上位の御月にその彼女の諸星キクコと、この界隈での有名人が揃ってるって感じだもんな。

「でもスゴいねぇ、佐藤っち兄弟は。なんでまたお祭りなんてやろうって思ったの?」

「え?」

唐突な質問に俺は言葉を詰まらせる。

「……えーと。普段からお世話になってる……親しい人達に……その……楽しんでもらって……思い出作りとかしたいな的な?」

俺はしどろもどろに答える。

てか、祭りの開催理由なんてそんなに気になるか?

俺が狼狽していると、助け船を出してくれたのは意外な人物だった。

「よろしければ、こちらをどうぞ」

優雅に微笑みながら白い包みを上野に差し出して来たのは───────花園リセだった。

「……え!?」

突然のご令嬢の登場に上野はビビった様子で言葉を失う。

「佐藤さんもよろしければどうぞ」

花園リセは俺にも白い包みを手渡してくる。

白いパラフィン紙に包まれた正方形のそれは焼き菓子のようだった。

正面にはラベルが貼ってあり、外国の土産物のような雰囲気が漂う。

こういうさ、ラッピングにも凝ってるってトコが花園リセらしいんだよな。

「コレって…?」

俺が聞き返すと花園リセは微笑を浮かべた。

「わたくしが焼いたパウンドケーキですの。お口に合えばよろしいのですけれど……」

花園リセの手作り菓子か。

そういえばそんなことを言っていたような気もする。

花園リセが手にしたバスケットの中には大量の白い包みが見えた。

参加者全員に配り歩いているのか?

「あ、そうですわ。先程の焼きそばも出来ましたから……是非お召し上がりになって」

バスケットとは別の袋から焼きそばを三パック手渡してくる花園リセ。

てか、ヤバい。さっきは時間稼ぎのつもりでああは言ったが──────全部食い切れるか?

さっきまでに結構あれこれと食っちまったが─────────

「そっか!もう出来上がったんだな!!流石リセさん!俺、腹減ってたんだよな!!早速食わせてもらうぜ!!」

俺は精一杯の笑顔を作って花園リセから焼きそばとパウンドケーキを受け取った。

花園リセの料理の腕前は俺が一番よく知っているつもりだ。

美味しくし上がっていることは疑いようもないのだが───────どうにも胃袋が限界だ。

さて、どうやって胃袋に流し込もうかと思案していると、パウンドケーキを一口齧った上野が驚いたように声を上げた。

「コレってメッチャ美味しいし香りも凄くいいけど……もしかしてお酒が入ってる?」

ええ、と花園リセは頷く。

「今日はお祭りですから────とっておきのブランデーを香り付けに入れてみましたの」

お口に合いましたかしら、と問いかける花園リセに対し上野はこう答えた。

「なんかさ……ちょっと…その……ブランデーの刺激が……強すぎる……かも?」

途切れ途切れに答える上野の様子を見た花園リセはバスケットから包みを一つ取り出す。

「ブランデーを入れなかった方がよろしかったでしょうか……わたくし、試食をせずにそのままこちらに持ってきてしまって」

自作のパウンドケーキを一口食べた花園リセは絶句した。

「これは……わ……わたくしとしたことが……」

ブランデーの量を間違えてしまったようですわ、と呟いた花園リセはそのまま地面に膝から崩れ落ちた。

「…え!?リセさん!?」

俺は急いで花園リセを抱き起そうとしたが、花園リセはグッタリとした様子のまま動かなかった。

てか、分量をミスったのがそんなにショックだっのか?

まあ、ほぼ毎日菓子作りをやってるっていう自負もあったろうし─────よりによって人に配るモンをミスったとあっちゃ精神的ダメージはデカイよな。

花園リセを抱えようとした俺は、ある違和感を覚えて周囲を見渡す。

─────すると。






目の前の上野はおろか、祭り会場に居る人間全員が────────地面に横たわっていた。

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