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ep7.
ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 最後の試射
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「……あの。佐藤君」
今日はどうもありがとう、と水森唯が少しはにかみながら口にする。
アイドル声優とのビデオ通話を終えた夢野くるみと水森唯はわざわざ俺に礼を言いに来たようだった。
「あ、いや……俺ってよりマコトの人脈がスゴかったってだけみたいだしさ。俺はなんもしてねぇし」
俺がそう言うと水森唯は首を振った。
「でも、私達を雪城さんに紹介してくれたんでしょう?」
どうして急に、と言われたので俺は適当に誤魔化した。
「なんかさ、前に二人ともバッグになんかキーホルダー付けてたような気がしてさ。こういうアニメとか声優が好きなのかなって思っただけで」
俺の言葉に夢野くるみが反応する。
「……すごい。当たり。よくわかったね?」
時間は一度戻ってるんだ。
夢野くるみや水森唯と腹を割って話した世界線の出来事は“なかったこと”になってる筈で──────────
「まあまあ、夢野も久しぶりにこっちに戻ったんだろ?せっかくの祭りだし二人共ゆっくり遊んでけよ」
俺はまたもや適当に誤魔化す。
そうだね、と夢野くるみと水森唯は頷き、笑顔を見せた。
「じゃあ早速だけど綿菓子とか食べに行ってみようかな?」
二人は連れ立って天宮列奈の綿菓子屋のスペースに向かっていった。
「とーちゃあ!つぎ!!あれ!!やりたい!!」
「はいはい。わーったよ」
きゃはは!と肩車された子どもの笑い声が響く。
今からシンジの担当するヨーヨー釣りに挑戦するらしい。
ドッペルゲンガーとその息子も祭りを堪能しているようだった。
諸星キクコとマコトはフーミンのたこ焼き屋の前で動画を撮っている。
二人の間にどんな会話があったかなんて知る由も無いが──────────すっかり以前のように打ち解けた様子に俺も安堵した。
由江さんと花園リセは何故か意気投合したようで焼きそば屋の前で談笑している。
少し酔った佑ニーサンは小泉に絡み始め、小泉も何故か勧められるままに酒を飲んでいた。まあ、ちょっとくらいは大丈夫だろう。
なんやかんやで皆が祭りを楽しんでいるようで何よりじゃねぇか。
俺も何か食べようかな、と思っていた所に概史が声を掛けてきた。
「あ。先輩。祭り、楽しんでますか?w」
「ああ。お前のお陰で助かったわ」
サンキューな、と俺が改めて礼を言うと概史はまたゲラゲラと笑った。
「ちょっw先輩。おれ、特になんもしてねぇっスけどwww」
それよりちょっと遊んでいきません?と概史は俺にエアガンを手渡してくる。
「え?射的か?俺、こういうのあんま得意じゃねぇんだよなあ」
ゲーセンとかでも景品とか取れたことねぇし、と俺がこぼすと概史は頷いた。
「あ、じゃあ練習っていうかちょっと試射してもいいっスよwwwサービスするんでww」
概史はBB弾が五個ほど入った小皿を俺に手渡してくる。
「練習っスからねw当たっても景品は貰えない感じですけどwww」
なるほど、試し撃ちか。
「じゃあちょっとやってみっか」
概史から小皿を受け取り、エアガンに弾を込める。
26インチのM700とか言われてもピンと来ないが、まあ射的でよく置いてある感じのイメージの銃だ。
これってちゃんと当たるんだろうか?
適当にぬいぐるみに狙いを定め、撃ってみる。
しかし。
当然だが当たらない。
二発目、三発目。
やはり当たらない。
「これ、楽勝そうに見えて結構ムズいんスよwww」
概史が揶揄うようにニヤニヤと笑う。
四発目。
やはり弾はぬいぐるみを擦りもしない。
最後の一発、五発目を撃った瞬間だった。
神社の前に黒塗りの車が停まり、中から誰かが降りてくる。
「─────え?」
その人物を見た瞬間、俺は思わず声を上げた。
──────────当然ながら最後の弾も見事に外した。
今日はどうもありがとう、と水森唯が少しはにかみながら口にする。
アイドル声優とのビデオ通話を終えた夢野くるみと水森唯はわざわざ俺に礼を言いに来たようだった。
「あ、いや……俺ってよりマコトの人脈がスゴかったってだけみたいだしさ。俺はなんもしてねぇし」
俺がそう言うと水森唯は首を振った。
「でも、私達を雪城さんに紹介してくれたんでしょう?」
どうして急に、と言われたので俺は適当に誤魔化した。
「なんかさ、前に二人ともバッグになんかキーホルダー付けてたような気がしてさ。こういうアニメとか声優が好きなのかなって思っただけで」
俺の言葉に夢野くるみが反応する。
「……すごい。当たり。よくわかったね?」
時間は一度戻ってるんだ。
夢野くるみや水森唯と腹を割って話した世界線の出来事は“なかったこと”になってる筈で──────────
「まあまあ、夢野も久しぶりにこっちに戻ったんだろ?せっかくの祭りだし二人共ゆっくり遊んでけよ」
俺はまたもや適当に誤魔化す。
そうだね、と夢野くるみと水森唯は頷き、笑顔を見せた。
「じゃあ早速だけど綿菓子とか食べに行ってみようかな?」
二人は連れ立って天宮列奈の綿菓子屋のスペースに向かっていった。
「とーちゃあ!つぎ!!あれ!!やりたい!!」
「はいはい。わーったよ」
きゃはは!と肩車された子どもの笑い声が響く。
今からシンジの担当するヨーヨー釣りに挑戦するらしい。
ドッペルゲンガーとその息子も祭りを堪能しているようだった。
諸星キクコとマコトはフーミンのたこ焼き屋の前で動画を撮っている。
二人の間にどんな会話があったかなんて知る由も無いが──────────すっかり以前のように打ち解けた様子に俺も安堵した。
由江さんと花園リセは何故か意気投合したようで焼きそば屋の前で談笑している。
少し酔った佑ニーサンは小泉に絡み始め、小泉も何故か勧められるままに酒を飲んでいた。まあ、ちょっとくらいは大丈夫だろう。
なんやかんやで皆が祭りを楽しんでいるようで何よりじゃねぇか。
俺も何か食べようかな、と思っていた所に概史が声を掛けてきた。
「あ。先輩。祭り、楽しんでますか?w」
「ああ。お前のお陰で助かったわ」
サンキューな、と俺が改めて礼を言うと概史はまたゲラゲラと笑った。
「ちょっw先輩。おれ、特になんもしてねぇっスけどwww」
それよりちょっと遊んでいきません?と概史は俺にエアガンを手渡してくる。
「え?射的か?俺、こういうのあんま得意じゃねぇんだよなあ」
ゲーセンとかでも景品とか取れたことねぇし、と俺がこぼすと概史は頷いた。
「あ、じゃあ練習っていうかちょっと試射してもいいっスよwwwサービスするんでww」
概史はBB弾が五個ほど入った小皿を俺に手渡してくる。
「練習っスからねw当たっても景品は貰えない感じですけどwww」
なるほど、試し撃ちか。
「じゃあちょっとやってみっか」
概史から小皿を受け取り、エアガンに弾を込める。
26インチのM700とか言われてもピンと来ないが、まあ射的でよく置いてある感じのイメージの銃だ。
これってちゃんと当たるんだろうか?
適当にぬいぐるみに狙いを定め、撃ってみる。
しかし。
当然だが当たらない。
二発目、三発目。
やはり当たらない。
「これ、楽勝そうに見えて結構ムズいんスよwww」
概史が揶揄うようにニヤニヤと笑う。
四発目。
やはり弾はぬいぐるみを擦りもしない。
最後の一発、五発目を撃った瞬間だった。
神社の前に黒塗りの車が停まり、中から誰かが降りてくる。
「─────え?」
その人物を見た瞬間、俺は思わず声を上げた。
──────────当然ながら最後の弾も見事に外した。
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