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ep7.
ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 架空の取引
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念の為、御月に子猫の事を確認し見ていないというのでまた後で連絡すると告げてその場を離れた。
「何だよォ!?子猫って!?」
どっか行くんじゃなかったのか!?と佐藤次郎(仮)が騒ぎ始めたので俺はそれらしいことをでっち上げて誤魔化す。
「三年女子の猫らしいんだがな、なんでもこの女子が暗号通貨とやらで一儲けしたらしくて」
「へぇ!?スゲェな?!」
「その暗号通貨の資産をコールドウォレットでUSBだかマイクロSDカードに保存してたってハナシなんだが」
「おう!本格的だなァ!?」
「それを猫の首輪に付けて隠してたらしいんだが、ソイツが校内で脱走したらしいんだよ」
「マジか!?大変じゃねぇか!?」
……我ながら出鱈目でいい加減すぎる作り話なんだが──────────どうやらコイツはそれをそっくりそのまま信じたらしかった。
「それじゃよォ、すぐに探しに行かねぇとなァ!?」
まあな、と俺は適当に返事をする。
廊下を歩いていくと図書室の入り口に差し掛かった。
図書室に子猫が居るなんて考えにくいが──────念の為に覗いてみるか。
俺は図書室のドアに手を掛けた。
その瞬間、図書室から出て来た人物とぶつかりそうになる。
「……おっと」
悪ィな、と言いながら俺が顔を上げると──────そこに立っていたのは水森唯だった。
「……佐藤くん達─────」
水森唯の手には「車輪の下」という本が握られていた。相変わらず読書家なんだな。
「もうすぐ予鈴が鳴るのに、今から図書室に?」
珍しいわね、と水森唯は俺と佐藤次郎(仮)の顔を交互に見た。
まあね、と俺は適当に返事をする。
「兄貴……に校内のあちこちを案内してやってるんだ。それで図書室にもって思ってさ」
そう、と水森唯はどこかホッとしたような表情を浮かべた。
以前より少し明るくなったとはいえ───────全く絡みのないヤンキーの俺と会話するってのも気疲れするのかもしれない。
あまり話し掛けるのも悪いかもしれないな。けど、これだけは聞いておこうと思ったので手短に質問だけすることにした。
「すまんな、ジャマしてさ。ところで……」
校内で子猫を見なかったか、と俺が訊ねると水森は吃驚したように目を見開いた。
「……え!?猫?佐藤くんの!?」
まあそうだよな。
俺って子猫を探すようなキャラって周囲に思われてないもんな。
「いや、俺の猫って訳じゃないんだけど─────同じ猫飼いとして迷子の子猫ってほっとけなくてさ」
俺がざっくりと三年女子のことを説明すると水森はなるほどといった風に頷いた。
「……そうだったのね。ご苦労様」
私は子猫は見ていないけど、校内で見つかったら騒ぎになるでしょう、と水森は考え込むような素振りで呟いた。
「校舎内で騒ぎになってないってことは─────校舎の外に居るって可能性はないかしら?例えば校庭とか」
なるほど、一理ある。
俺は頷くと水森に礼を言ってその場を離れた。
靴に履き替えて校庭に出たところで佐藤次郎(仮)は俺の顔を見ながらボソリと呟いた。
「なあ、お前さ──────────もしかしてめっちゃ女と絡んでんじゃね?」
「何だよォ!?子猫って!?」
どっか行くんじゃなかったのか!?と佐藤次郎(仮)が騒ぎ始めたので俺はそれらしいことをでっち上げて誤魔化す。
「三年女子の猫らしいんだがな、なんでもこの女子が暗号通貨とやらで一儲けしたらしくて」
「へぇ!?スゲェな?!」
「その暗号通貨の資産をコールドウォレットでUSBだかマイクロSDカードに保存してたってハナシなんだが」
「おう!本格的だなァ!?」
「それを猫の首輪に付けて隠してたらしいんだが、ソイツが校内で脱走したらしいんだよ」
「マジか!?大変じゃねぇか!?」
……我ながら出鱈目でいい加減すぎる作り話なんだが──────────どうやらコイツはそれをそっくりそのまま信じたらしかった。
「それじゃよォ、すぐに探しに行かねぇとなァ!?」
まあな、と俺は適当に返事をする。
廊下を歩いていくと図書室の入り口に差し掛かった。
図書室に子猫が居るなんて考えにくいが──────念の為に覗いてみるか。
俺は図書室のドアに手を掛けた。
その瞬間、図書室から出て来た人物とぶつかりそうになる。
「……おっと」
悪ィな、と言いながら俺が顔を上げると──────そこに立っていたのは水森唯だった。
「……佐藤くん達─────」
水森唯の手には「車輪の下」という本が握られていた。相変わらず読書家なんだな。
「もうすぐ予鈴が鳴るのに、今から図書室に?」
珍しいわね、と水森唯は俺と佐藤次郎(仮)の顔を交互に見た。
まあね、と俺は適当に返事をする。
「兄貴……に校内のあちこちを案内してやってるんだ。それで図書室にもって思ってさ」
そう、と水森唯はどこかホッとしたような表情を浮かべた。
以前より少し明るくなったとはいえ───────全く絡みのないヤンキーの俺と会話するってのも気疲れするのかもしれない。
あまり話し掛けるのも悪いかもしれないな。けど、これだけは聞いておこうと思ったので手短に質問だけすることにした。
「すまんな、ジャマしてさ。ところで……」
校内で子猫を見なかったか、と俺が訊ねると水森は吃驚したように目を見開いた。
「……え!?猫?佐藤くんの!?」
まあそうだよな。
俺って子猫を探すようなキャラって周囲に思われてないもんな。
「いや、俺の猫って訳じゃないんだけど─────同じ猫飼いとして迷子の子猫ってほっとけなくてさ」
俺がざっくりと三年女子のことを説明すると水森はなるほどといった風に頷いた。
「……そうだったのね。ご苦労様」
私は子猫は見ていないけど、校内で見つかったら騒ぎになるでしょう、と水森は考え込むような素振りで呟いた。
「校舎内で騒ぎになってないってことは─────校舎の外に居るって可能性はないかしら?例えば校庭とか」
なるほど、一理ある。
俺は頷くと水森に礼を言ってその場を離れた。
靴に履き替えて校庭に出たところで佐藤次郎(仮)は俺の顔を見ながらボソリと呟いた。
「なあ、お前さ──────────もしかしてめっちゃ女と絡んでんじゃね?」
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