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ep7.
ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 宿泊イベント発生
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「……で?これからどこに行くってんだ?」
ややウキウキとした様子で佐藤次郎(仮)は俺に尋ねる。
───────さあ、どうしようか。
とりあえずコイツを保健室にブチ込む為には迷子の子猫を見つける必要があるが……
だだっ広い学校の敷地内でよちよちの猫の赤ん坊を見つけ出すって言うのは至難の技にも思える。
とりあえず、片っ端から色んな連中に聞いて歩くしかないだろう。
幸い“校内を案内する”という名目でコイツを連れ回せるし、さっさと子猫探しを終えたい所ではある。
最初は人が多そうな場所から当たってみるか?
この時間だと図書室も開いてるし、体育館の裏辺りにも行ってみる価値はありそうだ。
俺が思案しながら歩いていると、背後から声を掛けられた。
「……佐藤……なのか?」
振り返ると、そこに立っていたのは困惑した表情の御月レイジだった。
「なんだ、御月か──────」
俺が口を開くより早く佐藤次郎(仮)が荒々しく声を上げた。
「ハァ!?レイジじゃねぇか!?なんでお前が馴れ馴れしく声掛けて来てんだよ!?」
「……!?」
御月は更に困惑したように固まる。
そうだよな。このドッペルゲンガーは俺の“従兄弟”って設定で御月とは初対面の筈なんだ。
“従兄弟”である佐藤次郎(仮)が御月レイジの事を知ってたら設定が破綻してしまう。
俺は佐藤次郎(仮)を御月からは見えない角度で小突いた。
(……おい!?御月とは初・対・面・の筈だろ!?兄貴!?)
(そうか!!そういやそうだったなァ!?)
小声でボソボソとやり取りをする俺達を御月は目を見開いて凝視している。
「……佐藤の従兄弟が転校して来たとは聞いていたが─────驚いたな。まるで双子じゃないか」
「ま、まあな!よく間違われるんだよな!!」
俺は適当に誤魔化した。
「あ!一応紹介しとくぜ!!俺の兄貴的な存在で……佐藤次郎ってんだ!ほら、兄貴挨拶して!」
俺は佐藤次郎(仮)に対し、御月に挨拶するように促した。
「……」
どういう訳か佐藤次郎(仮)は御月を睨みつけたまま黙り込んでいる。
(……どうしたんだよ兄貴?!挨拶しねぇと不自然だろうが!?)
俺が再び小声で佐藤次郎(仮)を小突いた。
(だって俺、コイツと仲悪ィし。なんか気に入らねぇんだよなぁ!?)
佐藤次郎(仮)は不機嫌そうにそう答える。
は?
それは初耳だ。
向こうの世界ってのはこっちと人間関係も全然違うのか?
けどさ、【郷に入っては郷に従え】って言うだろ?
とりあえずこっちの人間関係の方を優先してそれらしく振る舞って欲しいんだが───────
なんと言って説得したものかと俺が戸惑っていると────────助け舟を出すかのように口を開いてくれたのは御月だった。
「…そうか。お前の従兄弟はシャイなんだな」
御月は頷いて一人で納得した。
いや、そうでもない……ってか、全然真逆なんだが。
俺がどう答えるべきか迷っていると、御月はこう続けた。
「……実は、大量の牛肉を頂き物で貰ってしまってな。両親も歳だし、食が細くて食べきれなくて───────」
だから今日辺り夕食でも一緒にどうかと誘おうと思ってたんだが、と御月が言った辺りで佐藤次郎(仮)は素早く反応した。
「牛肉!?」
ああ、と御月は頷いた。
「二人とも、よかったらうちに食べに来ないか?すき焼きかしゃぶしゃぶにしようかと思うんだがどうだ?」
「マジか!?」
突如飛び出して来た牛肉というワードに速攻で食い付く佐藤次郎(仮)の姿に俺は心底ドン引きしていた。
こんなのが俺のドッペルゲンガーだなんて信じたくない。不機嫌そうにしてた癖に牛肉ってワードが飛び出した途端に反応するなんてどんだけ飢えてんだよ?
「なんなら泊まりでもいいぞ?賑やかだと両親も喜ぶし───────」
そう言いかけた御月の言葉より早く、佐藤次郎(仮)は食い気味で返事を返していた。
「え!?意味わかんねぇけど面白そうじゃね!?行く行く!」
「……そうか。なら決まりだな」
御月は満足げに微笑みながら頷いた。
「は!?」
俺が止める間もなく、何やら予定が埋まっていく。
てか、今晩、御月の家でコイツと泊まるのか!?
子猫の捜索もロクに出来ないうちに、何やらとんでもないイベントが発生してしまった気がするが───────────
ややウキウキとした様子で佐藤次郎(仮)は俺に尋ねる。
───────さあ、どうしようか。
とりあえずコイツを保健室にブチ込む為には迷子の子猫を見つける必要があるが……
だだっ広い学校の敷地内でよちよちの猫の赤ん坊を見つけ出すって言うのは至難の技にも思える。
とりあえず、片っ端から色んな連中に聞いて歩くしかないだろう。
幸い“校内を案内する”という名目でコイツを連れ回せるし、さっさと子猫探しを終えたい所ではある。
最初は人が多そうな場所から当たってみるか?
この時間だと図書室も開いてるし、体育館の裏辺りにも行ってみる価値はありそうだ。
俺が思案しながら歩いていると、背後から声を掛けられた。
「……佐藤……なのか?」
振り返ると、そこに立っていたのは困惑した表情の御月レイジだった。
「なんだ、御月か──────」
俺が口を開くより早く佐藤次郎(仮)が荒々しく声を上げた。
「ハァ!?レイジじゃねぇか!?なんでお前が馴れ馴れしく声掛けて来てんだよ!?」
「……!?」
御月は更に困惑したように固まる。
そうだよな。このドッペルゲンガーは俺の“従兄弟”って設定で御月とは初対面の筈なんだ。
“従兄弟”である佐藤次郎(仮)が御月レイジの事を知ってたら設定が破綻してしまう。
俺は佐藤次郎(仮)を御月からは見えない角度で小突いた。
(……おい!?御月とは初・対・面・の筈だろ!?兄貴!?)
(そうか!!そういやそうだったなァ!?)
小声でボソボソとやり取りをする俺達を御月は目を見開いて凝視している。
「……佐藤の従兄弟が転校して来たとは聞いていたが─────驚いたな。まるで双子じゃないか」
「ま、まあな!よく間違われるんだよな!!」
俺は適当に誤魔化した。
「あ!一応紹介しとくぜ!!俺の兄貴的な存在で……佐藤次郎ってんだ!ほら、兄貴挨拶して!」
俺は佐藤次郎(仮)に対し、御月に挨拶するように促した。
「……」
どういう訳か佐藤次郎(仮)は御月を睨みつけたまま黙り込んでいる。
(……どうしたんだよ兄貴?!挨拶しねぇと不自然だろうが!?)
俺が再び小声で佐藤次郎(仮)を小突いた。
(だって俺、コイツと仲悪ィし。なんか気に入らねぇんだよなぁ!?)
佐藤次郎(仮)は不機嫌そうにそう答える。
は?
それは初耳だ。
向こうの世界ってのはこっちと人間関係も全然違うのか?
けどさ、【郷に入っては郷に従え】って言うだろ?
とりあえずこっちの人間関係の方を優先してそれらしく振る舞って欲しいんだが───────
なんと言って説得したものかと俺が戸惑っていると────────助け舟を出すかのように口を開いてくれたのは御月だった。
「…そうか。お前の従兄弟はシャイなんだな」
御月は頷いて一人で納得した。
いや、そうでもない……ってか、全然真逆なんだが。
俺がどう答えるべきか迷っていると、御月はこう続けた。
「……実は、大量の牛肉を頂き物で貰ってしまってな。両親も歳だし、食が細くて食べきれなくて───────」
だから今日辺り夕食でも一緒にどうかと誘おうと思ってたんだが、と御月が言った辺りで佐藤次郎(仮)は素早く反応した。
「牛肉!?」
ああ、と御月は頷いた。
「二人とも、よかったらうちに食べに来ないか?すき焼きかしゃぶしゃぶにしようかと思うんだがどうだ?」
「マジか!?」
突如飛び出して来た牛肉というワードに速攻で食い付く佐藤次郎(仮)の姿に俺は心底ドン引きしていた。
こんなのが俺のドッペルゲンガーだなんて信じたくない。不機嫌そうにしてた癖に牛肉ってワードが飛び出した途端に反応するなんてどんだけ飢えてんだよ?
「なんなら泊まりでもいいぞ?賑やかだと両親も喜ぶし───────」
そう言いかけた御月の言葉より早く、佐藤次郎(仮)は食い気味で返事を返していた。
「え!?意味わかんねぇけど面白そうじゃね!?行く行く!」
「……そうか。なら決まりだな」
御月は満足げに微笑みながら頷いた。
「は!?」
俺が止める間もなく、何やら予定が埋まっていく。
てか、今晩、御月の家でコイツと泊まるのか!?
子猫の捜索もロクに出来ないうちに、何やらとんでもないイベントが発生してしまった気がするが───────────
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