610 / 1,060
ep7.
ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 ルイーダの酒場
しおりを挟む
「すまんな、ちょっと遅くなって」
俺がそう言いながら美術準備室のドアを開けると───────目に飛び込んできたのは疲労困憊の表情を浮かべた小泉の姿だった。
「……遅かったじゃないか」
床ににはブラックサンダーの空袋とエナジードリンクの空き缶が散乱している。
「おう!!!どこ行ってたんだよ弟ォ!!!?」
佐藤次郎(仮)はハイテンションでブラックサンダーを齧り、エナドリを飲んでいる。
「買い置きのストックが全部ヤられてしまったんだが……」
小泉が涙目で呟いた。
「なあ鏡花!!もう食い物とかねぇの!?」
ここってなんでもあるし最高じゃねぇの!?隠れ家みてぇでよォ!!と上機嫌の佐藤次郎(仮)は我が物顔で美術準備室を占拠している。
「もう無いぞ。今お前が食べてるので最後だ」
小泉は首を振った。
「……悪ィな、センセェ。俺がちょっと居ない隙に──────」
俺がそう言うと小泉は俺に訴えるような視線を向けた。
「ここはルイーダの酒場とかじゃないからな。手に負えないキャラを預かる場所でもないし──────」
私一人では無理だ。やはりどうにかお前が付いてやっていてくれないか?と小泉はゲッソリした様子で呟く。
この短時間の間に相当気疲れしたんだろう。
それに、担任の加賀が出張中なんだ。
余計な騒動やトラブルを起こせばそれらは全て小泉の責任になってしまう。
ああ、と俺は頷いた。
この惨状を見ればそれは痛いほど理解できた。
やっぱコイツを一人にしておくのは最悪だし────────かと言って小泉に見て貰うっていうのにも限界があるよな。
「なあ、兄貴。すっげぇいい場所が他にもあるんだぜ?」
俺がヤツを“兄貴”と呼んだのがよほどツボったのか、佐藤次郎(仮)は嬉々として絡んできた。
「……お!?俺のことを兄って認める気になったかァ!?それともやっと俺の偉大さがわかったとか!?」
佐藤次郎(仮)はバンバンと俺の肩を叩く。
まあ、呼び方一つでコイツの機嫌が良くなるってんならアニキでもオジキでもなんだっていいんだが。
「……ああ。兄貴が絶対に気にいる隠れ個室がこの学校にあるんだけどよ。行ってみねぇか?」
俺がそう言うと佐藤次郎(仮)は速攻でその話に食いついた。
「……マジかァ!?でもよォ、ここだって隠れ家的な個室じゃねぇか!?」
いや、と俺は首を振り、やや強調しながらこう言った。
「何せ向こうはWi-Fiも完備してる上にベッドもある。昼寝自由なのはメリットがデカイだろ?」
そっちにも小さい冷蔵庫はあるし、と俺が付け加えると佐藤次郎(仮)は目を輝かせた。
「は!?それってすごくね!?VIPルームじゃねぇか!?」
まあ、ある意味VIPルームではあるな。現在では佐々木専用ではあるが───────
「その上、情報通の専用コンシュルジュまで付いてんだぜ?マジで良くね?」
おいおい、大丈夫か?とでも言いたげな不安そうな視線で小泉が俺を見ている。
佐藤次郎(仮)はかなりの地雷的な人物ではあるが────────佐々木の事だ。仮にコイツを預けたとしても上手くあしらってくれるだろう。
「いいじゃねぇか!面白そうじゃん!すぐに行こうぜ!」
気の早い佐藤次郎(仮)は早くも美術準備室のドアに手を掛け、廊下に出ようとしている。
俺は小泉に目配せをしながら佐藤次郎(仮)の背中を押した。
「さ、行こう兄貴!VIPルームに行く前にこの学校の色んなトコに案内してやっからさ!」
俺がそう言いながら美術準備室のドアを開けると───────目に飛び込んできたのは疲労困憊の表情を浮かべた小泉の姿だった。
「……遅かったじゃないか」
床ににはブラックサンダーの空袋とエナジードリンクの空き缶が散乱している。
「おう!!!どこ行ってたんだよ弟ォ!!!?」
佐藤次郎(仮)はハイテンションでブラックサンダーを齧り、エナドリを飲んでいる。
「買い置きのストックが全部ヤられてしまったんだが……」
小泉が涙目で呟いた。
「なあ鏡花!!もう食い物とかねぇの!?」
ここってなんでもあるし最高じゃねぇの!?隠れ家みてぇでよォ!!と上機嫌の佐藤次郎(仮)は我が物顔で美術準備室を占拠している。
「もう無いぞ。今お前が食べてるので最後だ」
小泉は首を振った。
「……悪ィな、センセェ。俺がちょっと居ない隙に──────」
俺がそう言うと小泉は俺に訴えるような視線を向けた。
「ここはルイーダの酒場とかじゃないからな。手に負えないキャラを預かる場所でもないし──────」
私一人では無理だ。やはりどうにかお前が付いてやっていてくれないか?と小泉はゲッソリした様子で呟く。
この短時間の間に相当気疲れしたんだろう。
それに、担任の加賀が出張中なんだ。
余計な騒動やトラブルを起こせばそれらは全て小泉の責任になってしまう。
ああ、と俺は頷いた。
この惨状を見ればそれは痛いほど理解できた。
やっぱコイツを一人にしておくのは最悪だし────────かと言って小泉に見て貰うっていうのにも限界があるよな。
「なあ、兄貴。すっげぇいい場所が他にもあるんだぜ?」
俺がヤツを“兄貴”と呼んだのがよほどツボったのか、佐藤次郎(仮)は嬉々として絡んできた。
「……お!?俺のことを兄って認める気になったかァ!?それともやっと俺の偉大さがわかったとか!?」
佐藤次郎(仮)はバンバンと俺の肩を叩く。
まあ、呼び方一つでコイツの機嫌が良くなるってんならアニキでもオジキでもなんだっていいんだが。
「……ああ。兄貴が絶対に気にいる隠れ個室がこの学校にあるんだけどよ。行ってみねぇか?」
俺がそう言うと佐藤次郎(仮)は速攻でその話に食いついた。
「……マジかァ!?でもよォ、ここだって隠れ家的な個室じゃねぇか!?」
いや、と俺は首を振り、やや強調しながらこう言った。
「何せ向こうはWi-Fiも完備してる上にベッドもある。昼寝自由なのはメリットがデカイだろ?」
そっちにも小さい冷蔵庫はあるし、と俺が付け加えると佐藤次郎(仮)は目を輝かせた。
「は!?それってすごくね!?VIPルームじゃねぇか!?」
まあ、ある意味VIPルームではあるな。現在では佐々木専用ではあるが───────
「その上、情報通の専用コンシュルジュまで付いてんだぜ?マジで良くね?」
おいおい、大丈夫か?とでも言いたげな不安そうな視線で小泉が俺を見ている。
佐藤次郎(仮)はかなりの地雷的な人物ではあるが────────佐々木の事だ。仮にコイツを預けたとしても上手くあしらってくれるだろう。
「いいじゃねぇか!面白そうじゃん!すぐに行こうぜ!」
気の早い佐藤次郎(仮)は早くも美術準備室のドアに手を掛け、廊下に出ようとしている。
俺は小泉に目配せをしながら佐藤次郎(仮)の背中を押した。
「さ、行こう兄貴!VIPルームに行く前にこの学校の色んなトコに案内してやっからさ!」
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる