上 下
596 / 1,060
ep7.

ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 緊迫トライアングラー

しおりを挟む
無言のまま俺達は土手沿いを歩いていた。

小泉はさっきから一言も発しなかった。

沈黙が重苦しい。

あれか?やっぱさっきのエロ本のことか?てか、他に思い当たる事なんて無いもんなあ?

一つ言わせて貰えば、コレを持ってたのはドッペルゲンガーの方で俺じゃねぇ。断じて違う。

だけどさ、小泉的にはそんなん関係ないんだろう。

ああいうのが俺の趣味だって思われてる?まあぶっちゃけるとちょっとだけそうなんだけど。

限界オタクの陰キャチー牛って言ってもさ、やっぱ小泉だって一応は女なんだよな……

俺がこういうの見てるって思ってドン引きしてるんだろう。

でも仕方ねぇよな。爆乳素人中出しだぜ?コレばっかは言い逃れ出来ねぇだろうし───────

小泉的にはドコがアウトだったんだろう。

素人?爆乳?中出し?いや、全部か?

けどさ、仕方なくね?俺だって健康な思春期の男子なんだし……こういうの見ててもまあ、想定の範囲内じゃねぇの?よくあることだろ?

俺はチラリと横目で小泉を見た。

小泉は俯いたまま無言で歩く。

その表情は、何故か泣きそうなように思えた。

────────やっぱ引いてるよな。

泣きそうなほどキモいって思われてるんだろう。

そうだよな。

女から見たら────こういうの見たりする男って……“不潔”って思われても仕方ないよな。

かと言って弁解も何もあったもんじゃねぇし───────

どうしたものか、と思案していると俺の耳に聞き覚えのある声が飛び込んでくる。

「……良かったですわ。佐藤さん」

俺と小泉が振り返ると───────そこに居たのは、花園リセだった。

やっと追いつきました、と微笑む姿は相変わらず優雅で貴婦人そのものだった。

「え?リセさん?」

俺がビクリとしながら反応すると花園リセはニッコリと微笑んだ。

「……ええ、後ろ姿をお見かけして急いで追い掛けて来たんですの───────」

ところでこちらの方は、と花園リセは横でドス暗いオーラを放っている小泉に視線を向ける。

「え?ああ、そういや会うのって初めてだよな?こっちは俺の副担の先生の小泉で……」

俺がそう言いかけると、たった今までの空気が変わったかのように小泉は表情を変えた。

「……あら。こちらの方が小泉先生ですのね。初めまして」

花園リセは微笑みを浮かべたまま小泉に自己紹介する。

「お話は佐藤さんからよくお伺いしてますわ。とても教育熱心でお若い先生だとか──────」

「え?えっとその……」

小泉はややテンパったような表情を浮かべている。

まあ、リセさんってあまりにも浮世離れした貴婦人だからなんかビビっちまうのも無理はねぇよな。

「さ……佐藤の副担任の小泉です。うちの佐藤がいつもお邪魔してお世話になっていて……ご迷惑ではないでしょうか」

「……いえ。わたくしの方も佐藤さんの訪問をいつも楽しみにしてますから。迷惑だなんてとんでもありませんわ」

そう言うと花園リセはまた優雅に微笑んだ。

だが、何かがおかしい。

二人はお互い初対面で──────今まで全く接点なんて無かった筈なのに。

この異様な空気感は何だろう?

さっきのエロ本の一件が尾を引いてんのか?

小泉が緊張してる?

俺達3人はしばらく無言のまま佇む。

どうしよう。なんでこんなに緊迫感あんの??

流れを変えようと、俺は花園リセに話しかけることを試みた。

「そういやさ、リセさんさっき俺を見て追い掛けて来たって言ってたけど……何か用事でもあったとか?」

花園リセは思い出したように手に持っていた紙袋を俺に差し出して来た。

「……そうそう、先程こちらのパウンドケーキを沢山お召し上がりだったでしょう?喜んで頂けたようなので───────お土産としてお渡ししようと思いまして」

それで急いで後を追い掛けたんですわ、という花園リセの言葉に俺と小泉は反応する。

「“先程”……?!」

「ええ、弟さんも一緒だったでしょう?どちらに行かれたんですか?」

俺には弟なんか居ねぇし、花園リセの家にも行ってない。

“ヤツ”で決まりだった。

俺と小泉は顔を見合わせ、花園リセにドッペルゲンガーの事を簡単に説明した。

「……まあ。そっくりさん、ですって─────?」

花園リセは驚いたように俺の顔を見る。

「……ちっとも気付きませんでしたわ。あまりにもごく普通に、わたくしの屋敷においででしたから────」

ん?

ドッペルゲンガーはナチュラルに花園リセの屋敷に上がり込んでケーキ食って帰ってったってことか?

一体どうなってんだ???

困惑する俺を尻目に、花園リセはニッコリと微笑んだ。









「────────では、“本物”の方の佐藤さんと小泉先生。宜しかったらこれから屋敷でお茶でも如何ですか?」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

もし学園のアイドルが俺のメイドになったら

みずがめ
恋愛
もしも、憧れの女子が絶対服従のメイドになったら……。そんなの普通の男子ならやることは決まっているよな? これは不幸な陰キャが、学園一の美少女をメイドという名の性奴隷として扱い、欲望の限りを尽くしまくるお話である。 ※【挿絵あり】にはいただいたイラストを載せています。 「小説家になろう」ノクターンノベルズにも掲載しています。表紙はあっきコタロウさんに描いていただきました。

調教専門学校の奴隷…

ノノ
恋愛
調教師を育てるこの学校で、教材の奴隷として売られ、調教師訓練生徒に調教されていくお話

処理中です...