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ep6
ep6『さよなら小泉先生』 お熱いのがお好き
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コインパーキングに向かい、それから車で業務スーパーまで移動する予定だったのだが思った以上に道草を食ってしまった。
時計の針は午後2時前を指している。
「腹が空いたな。何か食ってくか?」
「マジで!?」
小泉の提案に俺も乗った。
ぶっちゃけ、ずっと腹は減っていたが無理を言って車を出して貰った手前、あんまり我儘は言えないと思って少し遠慮していた面もある。
だから小泉から飯に誘って貰えたのは有り難かった。
ここにするか、と小泉が足を踏み入れたのは──────前に何度か来たことのある中華料理屋だった。
日曜日の午後の時間帯とあって、ピークこそ過ぎてはいたが店内はそこそこ混み合っていた。
俺と小泉はカウンター席に座り、二人ともチャーシュー麺を注文した。
ここのチャーシュー麺、美味いんだよな。
チャーシューは自家製のが5枚載ってるし、いい色合いの煮卵とメンマもトッピングされてるんだよ。
麺は縮れ麺でスープは海鮮ベースのあっさり系なんだけど、それがまたコッテリしたチャーシューとよく合うんだな。わりとガチで美味い。
待っている間に腹が鳴る。
いやマジでここの店のラーメンって極上なんだよ。隠れた名店っていうか。
チャーシュー麺が来るまでの間、俺はふとぼんやりと横の小泉を見た。
線の細い横顔は、一瞬だけ知らない人のようにも思えた。
小泉ってこんな顔してたっけ?
俺の視線にも気付く様子もなく、小泉はスマホのゲームに夢中になっている。
てか、今日はずっとこんな調子だ。なんでも、やってるソシャゲのイベント期間中とからしい。
持っているバッグも相変わらずの痛バッグだ。
同じ缶バッジがズラズラと一面に取り付けられ、アクリルキーホルダーやラバーストラップがゴチャゴチャとぶら下がっている。
着ている服はしまむらとアニメのタイトルがコラボしたモノらしい。
よく見れば酷いファッションじゃねぇか。
だけど───────何故だろう。
その姿に少しの懐かしさも感じられる。
細い手首でスマホを持つ小泉の姿を眺めながら、俺は何かを忘れている気がして引っかかっていた。
何かあったっけ?
俺、何か忘れてる?
公共料金の支払い期日?
バイトのシフト?
宿題の提出?
それとも──────────
「はいっ!!お待ちどう!!!」
俺が漠然と考えを巡らせていると、注文のチャーシュー麺が威勢のいい声と共にカウンター席に置かれた。
「お、来たか」
小泉はスマホの画面から顔を上げた。
いただきます、と俺たち二人は手を合わせ、チャーシュー麺を食べ始める。
……と、その前に。
俺は箸を逆さにし、チャーシューを3枚、小泉の器に載せた。
「え?」
小泉が怪訝そうな顔をする。
「センセェってさ、前から思ってたけどちょっと痩せ気味なんじゃねぇの?いっぱい食べなよ」
「……は?」
小泉は驚いたように俺を見る。
「お前、急に何を言い出すんだ?いつもは『センセェ太った?』とか『菓子ばっか食ってたら太るよ』とか煽るような事ばっかり言って来てるじゃないか」
小泉も何故か箸を逆さにし、俺が乗せたチャーシュー3枚に加えて更に3枚を俺の器に載せてくる。
「馬鹿な事言ってるんじゃない。お前こそ育ち盛りの食べ盛りの癖に食費を節約し過ぎじゃないか。身体壊すぞ?」
子どもはしっかり食べなさいよ、と言う小泉に対し、負けじと俺も言い返す。
「センセェこそ、ちゃんと健康な身体じゃないと。将来はいずれ嫁に行くワケだろ?」
俺はもう一度チャーシュー6枚を小泉の器に乗せ返した。
「しっかり食べてさ、今のうちに体力付けとかねぇと──────妊娠とか出産とかの時大変じゃねぇか」
もっと身体を大事にしなよ、と俺が言うと小泉もややキレ気味に反論して来た。
「何言ってるんだ?お前こそ平日はバイトのシフトを入れっぱなしじゃないか。朝刊の新聞配達だって──────」
そう言いながら小泉が俺の器にチャーシュー6枚を押し戻そうとしていた時だった。
頭上からチャーシューが器にパラパラと降って来た。
『!?』
俺と小泉が顔を見合わせていると、威勢のいい声の店主がニコニコと笑っていた。
「ダメだよお二人さん喧嘩しちゃ!?せっかくの麺が伸びちゃうでしょ!?』
これはウチからのサービスね!!という店主の言葉に対し、俺たちは固まることしか出来なかった。
てか、なんか恥ずかしい。
「あ……あざっす」
小さい声でそう言うのが精一杯だった。
ふと横を見ると、小泉の顔は耳まで真っ赤だった。
「二人とも高校生かい!?若いんだからしっかり食べなよ!?」
時計の針は午後2時前を指している。
「腹が空いたな。何か食ってくか?」
「マジで!?」
小泉の提案に俺も乗った。
ぶっちゃけ、ずっと腹は減っていたが無理を言って車を出して貰った手前、あんまり我儘は言えないと思って少し遠慮していた面もある。
だから小泉から飯に誘って貰えたのは有り難かった。
ここにするか、と小泉が足を踏み入れたのは──────前に何度か来たことのある中華料理屋だった。
日曜日の午後の時間帯とあって、ピークこそ過ぎてはいたが店内はそこそこ混み合っていた。
俺と小泉はカウンター席に座り、二人ともチャーシュー麺を注文した。
ここのチャーシュー麺、美味いんだよな。
チャーシューは自家製のが5枚載ってるし、いい色合いの煮卵とメンマもトッピングされてるんだよ。
麺は縮れ麺でスープは海鮮ベースのあっさり系なんだけど、それがまたコッテリしたチャーシューとよく合うんだな。わりとガチで美味い。
待っている間に腹が鳴る。
いやマジでここの店のラーメンって極上なんだよ。隠れた名店っていうか。
チャーシュー麺が来るまでの間、俺はふとぼんやりと横の小泉を見た。
線の細い横顔は、一瞬だけ知らない人のようにも思えた。
小泉ってこんな顔してたっけ?
俺の視線にも気付く様子もなく、小泉はスマホのゲームに夢中になっている。
てか、今日はずっとこんな調子だ。なんでも、やってるソシャゲのイベント期間中とからしい。
持っているバッグも相変わらずの痛バッグだ。
同じ缶バッジがズラズラと一面に取り付けられ、アクリルキーホルダーやラバーストラップがゴチャゴチャとぶら下がっている。
着ている服はしまむらとアニメのタイトルがコラボしたモノらしい。
よく見れば酷いファッションじゃねぇか。
だけど───────何故だろう。
その姿に少しの懐かしさも感じられる。
細い手首でスマホを持つ小泉の姿を眺めながら、俺は何かを忘れている気がして引っかかっていた。
何かあったっけ?
俺、何か忘れてる?
公共料金の支払い期日?
バイトのシフト?
宿題の提出?
それとも──────────
「はいっ!!お待ちどう!!!」
俺が漠然と考えを巡らせていると、注文のチャーシュー麺が威勢のいい声と共にカウンター席に置かれた。
「お、来たか」
小泉はスマホの画面から顔を上げた。
いただきます、と俺たち二人は手を合わせ、チャーシュー麺を食べ始める。
……と、その前に。
俺は箸を逆さにし、チャーシューを3枚、小泉の器に載せた。
「え?」
小泉が怪訝そうな顔をする。
「センセェってさ、前から思ってたけどちょっと痩せ気味なんじゃねぇの?いっぱい食べなよ」
「……は?」
小泉は驚いたように俺を見る。
「お前、急に何を言い出すんだ?いつもは『センセェ太った?』とか『菓子ばっか食ってたら太るよ』とか煽るような事ばっかり言って来てるじゃないか」
小泉も何故か箸を逆さにし、俺が乗せたチャーシュー3枚に加えて更に3枚を俺の器に載せてくる。
「馬鹿な事言ってるんじゃない。お前こそ育ち盛りの食べ盛りの癖に食費を節約し過ぎじゃないか。身体壊すぞ?」
子どもはしっかり食べなさいよ、と言う小泉に対し、負けじと俺も言い返す。
「センセェこそ、ちゃんと健康な身体じゃないと。将来はいずれ嫁に行くワケだろ?」
俺はもう一度チャーシュー6枚を小泉の器に乗せ返した。
「しっかり食べてさ、今のうちに体力付けとかねぇと──────妊娠とか出産とかの時大変じゃねぇか」
もっと身体を大事にしなよ、と俺が言うと小泉もややキレ気味に反論して来た。
「何言ってるんだ?お前こそ平日はバイトのシフトを入れっぱなしじゃないか。朝刊の新聞配達だって──────」
そう言いながら小泉が俺の器にチャーシュー6枚を押し戻そうとしていた時だった。
頭上からチャーシューが器にパラパラと降って来た。
『!?』
俺と小泉が顔を見合わせていると、威勢のいい声の店主がニコニコと笑っていた。
「ダメだよお二人さん喧嘩しちゃ!?せっかくの麺が伸びちゃうでしょ!?』
これはウチからのサービスね!!という店主の言葉に対し、俺たちは固まることしか出来なかった。
てか、なんか恥ずかしい。
「あ……あざっす」
小さい声でそう言うのが精一杯だった。
ふと横を見ると、小泉の顔は耳まで真っ赤だった。
「二人とも高校生かい!?若いんだからしっかり食べなよ!?」
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