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ep6『さよなら小泉先生』 暴力と支配

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自分でもどうしてだかわからない。

「……え?あれ?」

俺のことを心配そうにシンジが見つめる。

てか、俺って“すみっコぐらし”のタオルハンカチをシンジに渡してたんだな。

二重三重に恥ずかしい。

俺は──────自分の母親と小泉を重ねてしまったんだろうか。

それとも。

『産みの親と離れて暮らしている』というシンジと自分を重ねてしまった?

自分の人生の全て────家族や学校や夢、未来……好きな巫女の仕事を捨ててまで子どもと一緒に居る道を選ぶという決断をした小泉に?

すいません、と俺はシンジに謝った。

いつもの自分では全く考えられないことだった。

「俺も……両親が居ない暮らしをしてるものですから─────つい」

……そうだったんですか、とシンジは真っ赤になった目をさらに潤ませた。

けど、と俺は続けた。

「────それは俺の姉に伏せなきゃいけない程の事なんでしょうか?」

確かに結婚や出産をするには若すぎるとは思いますが、と俺は慎重にシンジに訊ねた。

よくさ、テレビのバラエティやドキュメンタリー番組なんかで中卒から結婚したり高校中退して結婚したカップルなんかが取材を受けてるだろ?

確かに多数派とは言えないし、中高生のデキ婚なんて褒められたものじゃないかもしれないけど───────

親や周囲に助けて貰って結果的には幸せに暮らしてるカップルなんていくらでもいるじゃないか。

どうしてさっきシンジは『死んだという事にしておいた方がいい』なんて言い回しをしたんだ?

それとも。

この話には─────まだ何か“続き”があるっていうのか?

俺の心臓がドクリと跳ねる。

それは、とシンジは口ごもった。

これ以上の“何か”があるって─────そういう事なんだろうか。

胸が締め付けられて喉にまで痛みが滲みてくるようだった。

「……ご迷惑で無ければ─────教えて頂けませんか」

俺はそう絞り出すのが精一杯だった。

シンジは黙った。

言いにくい事なんだろうか。

これ以上コイツから────無理矢理に聞き出すのは酷に思えた。

俺は視線を下に落とし、出されたお茶を飲んだ。

「……すいません。突然押しかけてこんな事を────」

シンジから聞けないならどこに行けばいい?

スエカ婆ちゃんの駄菓子屋にでも行ってみるか?

俺が次の行動について考えを巡らせている時だった。

突然、シンジが口を開いた。

「……あの」

今からおれが話すこと……他言無用にしてもらえますか、とシンジは躊躇いがちに言葉を発した。

勿論です、と俺が頷くとシンジは小さな声で続けた。

「鏡花姉さんは……第一子を出産後の翌年に第二子を生んでいたそうです」

シンジの肩が小刻みに震えているのがわかった。

「……それから立て続けにほぼ毎年出産して────今は4人の子供がいます」

え?

どういうこと?

大家族って意味か?

ならめでたいじゃん?

テレビでの大家族ものってさ、なんやかんやで最終的には幸せそうだもんな?

違うのか?

シンジの発言の意図が汲めず、俺の思考はフリーズする。

「……鏡花姉さんの意思とは無関係に毎年、強制的に子どもを産まされてて──────」

「え?」

強制的に?

それって──────どういう意味なんだ?

「人づてに従姉妹がその事実を知った時にはもう……鏡花姉さんは心身共にボロボロで──────」

シンジの次の言葉に俺は絶句した。現代の話なのかこれは?

しかも小泉がその当事者なのか?







「……多産DVという状態だったみたいなんです」


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