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ep6
ep6『さよなら小泉先生』 完璧なadieu
しおりを挟むその日俺は授業にもロクに出ずに学校中を必死に探し回った。
だが、どこの学年、どこのクラス、どこの教科にも小泉の姿は無かった。
クラス中の奴らに聞いて回ったが誰一人として小泉の事を覚えてないんだ。
上野には呆れられ、キョロ充どもには『女教師モノのAVの見過ぎでおかしくなったんじゃね?wwww』と嗤われた。
でもそんな事はどうでもよかった。
もし小泉が見つかるのならいくらでも嘲笑されて構わないんだ。
そんな願いも虚しく、小泉は忽然と俺らの前から消えていた。
まるで煙みたいに──────その存在も記憶もこの世界から消えてたんだ。
そんな事ってあるか?
俺は放課後になるのを待たず、学校を早退して神社に向かった。
もしかしたら教師は辞めて、巫女の仕事一本にしているのかもしれない。
たぶん何らかの事情で過去が変わったんだ。そうじゃないのか?そうだろ?
俺は社務所を覗いてみた。
だが、平日の昼間なので当然のように閉まっている。
ここの神社の社務所は基本的には土日しか開いてないんだよな。
受付には[御用の方はインターホンでお呼びください]のプレートが置かれている。
平日は御朱印の受付やお守りの販売には小泉の叔父である神主が担当しているって前に聞いた気もする。
平日は『客に呼ばれたら出てくるスタイル』の営業なんだな。
だとしたら。
やはりここに小泉はいないのか?
俺は周囲を見回した。
境内を竹箒で掃除する見慣れた巫女の姿が目に入る。
小泉だ。
「センセェ!!」
俺は急いで駆け寄る。
なんだ、ここに居たのか。
さんざん探し回っちまったじゃねぇか。
人が悪いな。なんで連絡してくんねぇんだよ。
ホッと安堵したのも束の間、次の瞬間に俺は絶句してしまう。
巫女だと思ったその後ろ姿は、小泉の甥のシンジだった。
「……あの、何か御用でしょうか?」
やや鋭い目つきで怪訝そうに俺に訊ねてくる。
─────コイツかよ。
いっつも紛らわしいんだよ、男なのに赤い袴履いててさ。なんなんだよお前。
てか、小学生だから授業が終わる時間が中学より早かったのか?
「あっ……えっと……」
俺は思わず口ごもる。
どうしよう。
なんて聞けばいいんだ?
一体、どうなってんだよ。
けど、コイツに聞かなきゃもうこれ以上の手がかりは得られない気がした俺は────── 一か八か、ヤケクソで思い切って質問をシンジにぶつけた。
「……あの、小泉鏡花さんって人を探してるんですが」
「それはオレの叔母ですが……どう言ったお知り合いですか?」
シンジは眉間に皺を寄せたまま俺を見る。
てか、コイツ絶対俺のこと嫌いだろ。いっつもこんな感じじゃんか。
「……えっと、俺の姉が小泉さんと同級生なものでして」
俺は咄嗟に適当な出まかせを言った。
「ああ、なるほど」
シンジの表情が少し和らいだ。
「姉と小泉さんは中学の頃、親しくさせて頂いてたようなんですけど─────ウチが親の仕事の都合で急に引っ越してしまって」
満足にお別れも言えずに数年も経ってしまって……それで姉が小泉さんの近況を知りたいと、と俺はそれらしい設定をデッチ上げた。
「……そうだったのですか。わざわざ来てくださるなんて。ここではなんですから──────社務所でお茶でもいかがですか」
シンジの顔色がサッと変わったのが分かった。
どうしたんだよ珍しい。コイツがそんな事を言い出すなんて一体どうなってるんだ?
何かがおかしい。いや、何もかもが、と言ったほうが正しいかもしれない。
「えっ。ではお言葉に甘えても……」
俺も咄嗟に返事する。てか、なんで二人とも敬語で話してんだよ。キメェな。
不穏な空気を感じながらも俺は見慣れたいつもの社務所に通される。
シンジが緑茶と茶菓子を俺に出してくる。
普段だとあり得ないシチュエーションに俺の緊張も一気に高まる。
てか、話が長くなる前提なのか、これは。
「すいません、急に押し掛けてしまって。姉は入院中で動けないもので──────」
“出まかせ“に矛盾が生じないように俺は設定を補強した。
『姉』が居るのに自分で訪ねて来ないってのは不自然だからな。
しかし、不穏な空気が流れているのは嫌でも感じてしまう。
俺の表情を察してか、シンジの方から口を開いた。
「……あの、せっかく来ていただいたのに申し訳無いんですが──────」
チラリと俺を見たシンジが一瞬、泣きそうな表情を浮かべたような気がした。
シンジの次の言葉に俺は自分の耳を疑った。
それは到底信じられないものだった。
「結論から言いますと──────”小泉鏡花“という人間はもうここには居ません」
だが、どこの学年、どこのクラス、どこの教科にも小泉の姿は無かった。
クラス中の奴らに聞いて回ったが誰一人として小泉の事を覚えてないんだ。
上野には呆れられ、キョロ充どもには『女教師モノのAVの見過ぎでおかしくなったんじゃね?wwww』と嗤われた。
でもそんな事はどうでもよかった。
もし小泉が見つかるのならいくらでも嘲笑されて構わないんだ。
そんな願いも虚しく、小泉は忽然と俺らの前から消えていた。
まるで煙みたいに──────その存在も記憶もこの世界から消えてたんだ。
そんな事ってあるか?
俺は放課後になるのを待たず、学校を早退して神社に向かった。
もしかしたら教師は辞めて、巫女の仕事一本にしているのかもしれない。
たぶん何らかの事情で過去が変わったんだ。そうじゃないのか?そうだろ?
俺は社務所を覗いてみた。
だが、平日の昼間なので当然のように閉まっている。
ここの神社の社務所は基本的には土日しか開いてないんだよな。
受付には[御用の方はインターホンでお呼びください]のプレートが置かれている。
平日は御朱印の受付やお守りの販売には小泉の叔父である神主が担当しているって前に聞いた気もする。
平日は『客に呼ばれたら出てくるスタイル』の営業なんだな。
だとしたら。
やはりここに小泉はいないのか?
俺は周囲を見回した。
境内を竹箒で掃除する見慣れた巫女の姿が目に入る。
小泉だ。
「センセェ!!」
俺は急いで駆け寄る。
なんだ、ここに居たのか。
さんざん探し回っちまったじゃねぇか。
人が悪いな。なんで連絡してくんねぇんだよ。
ホッと安堵したのも束の間、次の瞬間に俺は絶句してしまう。
巫女だと思ったその後ろ姿は、小泉の甥のシンジだった。
「……あの、何か御用でしょうか?」
やや鋭い目つきで怪訝そうに俺に訊ねてくる。
─────コイツかよ。
いっつも紛らわしいんだよ、男なのに赤い袴履いててさ。なんなんだよお前。
てか、小学生だから授業が終わる時間が中学より早かったのか?
「あっ……えっと……」
俺は思わず口ごもる。
どうしよう。
なんて聞けばいいんだ?
一体、どうなってんだよ。
けど、コイツに聞かなきゃもうこれ以上の手がかりは得られない気がした俺は────── 一か八か、ヤケクソで思い切って質問をシンジにぶつけた。
「……あの、小泉鏡花さんって人を探してるんですが」
「それはオレの叔母ですが……どう言ったお知り合いですか?」
シンジは眉間に皺を寄せたまま俺を見る。
てか、コイツ絶対俺のこと嫌いだろ。いっつもこんな感じじゃんか。
「……えっと、俺の姉が小泉さんと同級生なものでして」
俺は咄嗟に適当な出まかせを言った。
「ああ、なるほど」
シンジの表情が少し和らいだ。
「姉と小泉さんは中学の頃、親しくさせて頂いてたようなんですけど─────ウチが親の仕事の都合で急に引っ越してしまって」
満足にお別れも言えずに数年も経ってしまって……それで姉が小泉さんの近況を知りたいと、と俺はそれらしい設定をデッチ上げた。
「……そうだったのですか。わざわざ来てくださるなんて。ここではなんですから──────社務所でお茶でもいかがですか」
シンジの顔色がサッと変わったのが分かった。
どうしたんだよ珍しい。コイツがそんな事を言い出すなんて一体どうなってるんだ?
何かがおかしい。いや、何もかもが、と言ったほうが正しいかもしれない。
「えっ。ではお言葉に甘えても……」
俺も咄嗟に返事する。てか、なんで二人とも敬語で話してんだよ。キメェな。
不穏な空気を感じながらも俺は見慣れたいつもの社務所に通される。
シンジが緑茶と茶菓子を俺に出してくる。
普段だとあり得ないシチュエーションに俺の緊張も一気に高まる。
てか、話が長くなる前提なのか、これは。
「すいません、急に押し掛けてしまって。姉は入院中で動けないもので──────」
“出まかせ“に矛盾が生じないように俺は設定を補強した。
『姉』が居るのに自分で訪ねて来ないってのは不自然だからな。
しかし、不穏な空気が流れているのは嫌でも感じてしまう。
俺の表情を察してか、シンジの方から口を開いた。
「……あの、せっかく来ていただいたのに申し訳無いんですが──────」
チラリと俺を見たシンジが一瞬、泣きそうな表情を浮かべたような気がした。
シンジの次の言葉に俺は自分の耳を疑った。
それは到底信じられないものだった。
「結論から言いますと──────”小泉鏡花“という人間はもうここには居ません」
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