499 / 1,060
ep6
ep6『さよなら小泉先生』 狂い咲く彼岸花の中で
しおりを挟む
グラリ、と視界が暗転する。
微量の吐き気と眩暈が身体を覆う。
安っぽい古びた遊園地のアトラクションみたいな─────全身が無理矢理に回転させられるような感覚。
意識はぼんやりとして身体は暗闇に包まれている。
だけど、何かの花の匂いが周囲からほのかに感じられた。
何の花だろう?
どこまでも続く暗闇。
真っ暗で何も見えないんだ。
俺の意識は遠のいたり近付いたりをゆらゆらと繰り返している。
身体は金縛りに遭ったように全く動かない。
ぼんやりとした思考の中で子どもの声…複数の子どもの声が聴こえて来る。
『〽︎ かってうれしい はないちもんめ』
最初はボソボソとしか聴こえなかったその声がだんだんと近付いて来る。
『〽︎ まけてくやしい はないちもんめ』
いや、遠くか?どっちだ?
『〽︎ あのこがほしい』
距離感は全く掴めない。
『〽︎ あのこじゃわからん』
なんだ……?なんて言ってる?ノイズが入ってよく聴き取れないんだ。
『〽︎ このこがほしい』
それは何処かで聴いたことのあるような─────歌なんだろうか?
童謡?わらべ唄?
『〽︎ このこじゃわからん』
多分、一度は聞いたことのある曲のはずなんだが思い出せない。
なんだ?知っている曲だと思うんだが判らない。
前にも似たようなことがあった気がする。
不意に耳鳴りがする。
歌声はだんだんとはっきり強く、近くなってくる。
『〽︎ そうだんしよう』
何もわからない。
どこから聴こえて来るんだ?
四方八方から子どもの声が聴こえる。
『〽︎ そうしよう』
あちこちに子供は散らばっている。
こんなに大勢どっから来たんだよ?
子どもの声は次第に大きくなってくる。
ここは保育園か幼稚園なのか?
耳鳴りが更に強くなる。
『〽︎ ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎が欲しい』
頭が急激に痛くなったかと思えば、パッと解放されたように全ての感覚が元に戻った。
子どもの声も気配も消えていた。
静寂と暗闇。
至近距離、俺の耳元で誰かが囁いた。
『 〽︎ き ー ま っ た 』
その瞬間。
パチンと誰かが手を叩いたような音が聞こえた。
俺は目を開けた。
視界に飛び込んできたのは──────天井だった。
見慣れた天井。
俺の自宅、いつもの俺の部屋だった。
俺は自宅の布団の中に横たわっていた。
周囲はしんと静まりかえっている。
俺は布団の中でしばらくぼんやりと考えを巡らせた。
さっきまで何をしてたんだっけ?
何も思い出せない。
昨晩は普通に寝た?
いや……それすらもわからない。
身体は汗だくで、疲労感と虚無感、脱力感が半端では無かった。
寝て起きたの筈なのに何で体力が根こそぎ減ってんの?
でも─────さっきまでここじゃない場所に居た気がするような。
何処だっけ?
部屋の時計が目に入る。
午前四時。
布団の横に転がっているスマホを手探りで掴もうとする。
スマホではない何かに手が触れる。
なんだ?
掴んだそれは─────カルピスウォーターのボトルだった。
ペットボトル??
ん?
何処かから持って帰ってきたっけ??
買った覚えはない。
やっとスマホを探り当て、右手で掴む。
そのホーム画面を凝視する。
”9月5日 4:04“
デジタルの表示が目に映る。
5日???
なんかおかしくね??
9月はそろそろ下旬の筈で─────
俺はまた時間を戻ったっていうのか?
でも、何かがおかしい。記憶もない。
いつもとは何かが─────決定的に違うような─────
手元のスマホは沈黙を守っている。
それはいつまで経っても鳴ることは無かった。
俺は童貞を捨てて戻って来たって訳じゃないってのか?
もしも確定なら────いつもだったら小泉から呼び出しがある筈なんだが。
6時まで待ったが結局、一度も小泉からは連絡は無かった。
不安になった俺は銀色の缶を学ランのポケットから取り出す。
じゃあ自分で確かめてみればいいんだ。そうだろ?
恐る恐る缶を開け、コンドームの数を数えた俺は自分の目を疑った。
3個。
缶の中に入っていた残数は────────3個だけだった。
微量の吐き気と眩暈が身体を覆う。
安っぽい古びた遊園地のアトラクションみたいな─────全身が無理矢理に回転させられるような感覚。
意識はぼんやりとして身体は暗闇に包まれている。
だけど、何かの花の匂いが周囲からほのかに感じられた。
何の花だろう?
どこまでも続く暗闇。
真っ暗で何も見えないんだ。
俺の意識は遠のいたり近付いたりをゆらゆらと繰り返している。
身体は金縛りに遭ったように全く動かない。
ぼんやりとした思考の中で子どもの声…複数の子どもの声が聴こえて来る。
『〽︎ かってうれしい はないちもんめ』
最初はボソボソとしか聴こえなかったその声がだんだんと近付いて来る。
『〽︎ まけてくやしい はないちもんめ』
いや、遠くか?どっちだ?
『〽︎ あのこがほしい』
距離感は全く掴めない。
『〽︎ あのこじゃわからん』
なんだ……?なんて言ってる?ノイズが入ってよく聴き取れないんだ。
『〽︎ このこがほしい』
それは何処かで聴いたことのあるような─────歌なんだろうか?
童謡?わらべ唄?
『〽︎ このこじゃわからん』
多分、一度は聞いたことのある曲のはずなんだが思い出せない。
なんだ?知っている曲だと思うんだが判らない。
前にも似たようなことがあった気がする。
不意に耳鳴りがする。
歌声はだんだんとはっきり強く、近くなってくる。
『〽︎ そうだんしよう』
何もわからない。
どこから聴こえて来るんだ?
四方八方から子どもの声が聴こえる。
『〽︎ そうしよう』
あちこちに子供は散らばっている。
こんなに大勢どっから来たんだよ?
子どもの声は次第に大きくなってくる。
ここは保育園か幼稚園なのか?
耳鳴りが更に強くなる。
『〽︎ ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎が欲しい』
頭が急激に痛くなったかと思えば、パッと解放されたように全ての感覚が元に戻った。
子どもの声も気配も消えていた。
静寂と暗闇。
至近距離、俺の耳元で誰かが囁いた。
『 〽︎ き ー ま っ た 』
その瞬間。
パチンと誰かが手を叩いたような音が聞こえた。
俺は目を開けた。
視界に飛び込んできたのは──────天井だった。
見慣れた天井。
俺の自宅、いつもの俺の部屋だった。
俺は自宅の布団の中に横たわっていた。
周囲はしんと静まりかえっている。
俺は布団の中でしばらくぼんやりと考えを巡らせた。
さっきまで何をしてたんだっけ?
何も思い出せない。
昨晩は普通に寝た?
いや……それすらもわからない。
身体は汗だくで、疲労感と虚無感、脱力感が半端では無かった。
寝て起きたの筈なのに何で体力が根こそぎ減ってんの?
でも─────さっきまでここじゃない場所に居た気がするような。
何処だっけ?
部屋の時計が目に入る。
午前四時。
布団の横に転がっているスマホを手探りで掴もうとする。
スマホではない何かに手が触れる。
なんだ?
掴んだそれは─────カルピスウォーターのボトルだった。
ペットボトル??
ん?
何処かから持って帰ってきたっけ??
買った覚えはない。
やっとスマホを探り当て、右手で掴む。
そのホーム画面を凝視する。
”9月5日 4:04“
デジタルの表示が目に映る。
5日???
なんかおかしくね??
9月はそろそろ下旬の筈で─────
俺はまた時間を戻ったっていうのか?
でも、何かがおかしい。記憶もない。
いつもとは何かが─────決定的に違うような─────
手元のスマホは沈黙を守っている。
それはいつまで経っても鳴ることは無かった。
俺は童貞を捨てて戻って来たって訳じゃないってのか?
もしも確定なら────いつもだったら小泉から呼び出しがある筈なんだが。
6時まで待ったが結局、一度も小泉からは連絡は無かった。
不安になった俺は銀色の缶を学ランのポケットから取り出す。
じゃあ自分で確かめてみればいいんだ。そうだろ?
恐る恐る缶を開け、コンドームの数を数えた俺は自分の目を疑った。
3個。
缶の中に入っていた残数は────────3個だけだった。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる