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ep6『さよなら小泉先生』 『TALKING ABOUT SEX(Girl's Side)』②

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「お前が思ってるほど……そういいモンじゃねぇぜ?」

俺としては─────ちょっと心配になっちまってたんだよな。

頑固で融通が利かない大人小泉と違って、13歳の小泉の方は馬鹿みたいに素直で単純なんだ。

変な男に引っ掛かってヤバイ目に遭いそうでさ。

コイツからはなんか……そういう危なっかしさみたいなのを感じるんだよな。

「お前はまだ知らねぇだろうけどよ、世の中の男ってのは大体が性欲だけで動いてるケダモノみたいなもんだぜ?」

だからこう─────簡単に信用したりヤラせたりしちゃ駄目なんだ、と俺は慎重に小泉(13)に言った。

「……それって……佐藤くんもそうだってこと?」

小泉(13)はチラリと俺を見る。

「は?俺?」

その質問に対し、俺は言葉に詰まってしまう。

「えっと……どうだろう」

確かに、もう二度とセックスなんかしたくないって思ったし─────これからもそのつもりだけど─────

「よくわかんねぇけどさ、上手く言えないけど─────セックスより……もっと大事なコトってあんじゃねぇのか?」

俺だって俺自身の気持ちとか────まだ全然解ってねぇんだ。自分で自分が何者なのかすら知らないっつぅかさ。

「……大事なことって?」

小泉(13)はなおも俺に質問してくる。なんだかまるで禅問答みたいだ。

「それは……えっとさ……」

俺はさっきの少女マンガの単行本を手に取った。

「これってさっきパラパラ見たけどさ、連載物じゃなくて読み切り短編集って感じのコミックス だろ?」

連載物だと作品タイトルに『①』とか『②』みたいに巻数が書いてあるもんな?と俺が確認すると小泉(13)は頷いた。

「なんかさ、この漫画の中の奴ら……割と唐突にセックスし始めてるじゃん?」

俺自身、何を言いたいんだか自分でもわかんなくなってきてるが─────なんとか精一杯、頭をフル回転させながら言葉を続ける。

「でも普通はさ、現実だとそんなことなくて─────友達以上恋人未満みたいな関係性があったとして……お互いがお互いを意識してて────」

なんかのきっかけで勇気出して告白したりしてさ、そっから付き合うのが始まる訳だろ?という俺の言葉を小泉(13)は黙って聞いている。

「そんでさ、付き合うにしても─────初日からセックスってしないだろ?普通はさ、最初にゲーセン行ったり買い物行ったりプリクラ撮ったりのデートとかするんじゃねぇの?」

その後にやっと手とか繋いでさ、付き合って3ヶ月目くらいでやっとキスとかして─────と、そこで俺の言葉を遮り、小泉(13)が反応する。

「えっ!……佐藤くんて……見かけによらずロマンチストなんだね!」

なんか聞いてるこっちがドキドキしちゃった、と小泉(13)は揶揄うような視線で俺を見た。

「ロマンチスト!?」

俺としては無い頭を捻って必死で言葉を絞り出したつもりなんだが、小泉(13)はそうは捉えなかったようで。

「いやそうじゃなくてさ!俺の理想のデートを語ったつもりとかじゃなくて!てか、別に俺がこういうデートに憧れてるって意味じゃなくてさ!」

俺の意図や真意が伝わらなかった事に気付き、慌ててそれを否定する。

「ダチとか……彼氏彼女とかに限らずさ────人間関係ってコミュニケーションや信頼を積み重ねていくものだって言いたかった的な!」

それはタテマエでも何でもない俺の正直な本心だった。

「時間掛けてさ、二人で関係性を築いた先にセックスがあるっていうか──だからイキナリ急にセックスだけすんのって間違ってんじゃねぇの、って言いたかったっつうか」

なんだろう、だけど俺は自分で自分が何を言いたいのかわからなくなってきた。要点が上手く纏まらない。

「佐藤くんて─────もっとオラオラしてて強引な俺様って感じなんだと思ってたけど……実はすっごいピュアで純粋で真面目なんだね」

小泉(13)が俺の顔をじっと見てくる。やっぱ俺のことを揶揄ってんのか?

「なんだよそれ。馬鹿にしてんのかよ?」

俺が少しムッとすると、小泉(13)は少し笑いながら慌てて手を振る。

「違う違う!そうじゃなくて──────」

じゃあなんだよ、と俺が訊き返すと小泉(13)は黙った。

「ううん……なんか─────佐藤くんの考えてることが聞けて嬉しかった」

なんでだよ、と俺が反射的に訊き返すと小泉(13)はこう答えた。







「でもね、佐藤くん。────人を好きになるのって理屈じゃないんじゃないのかな」
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