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ep6『夢千夜』 “壊れた夜” 第十一夜 

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思っていたよりも遥かに柔らかい感触。

さっきの唇も柔らか過ぎて戸惑ったけど──────

女子の身体ってこんなにあったかくて柔らかいのか。

滑らせるようにそっと撫でながら持ち上げる。

不意に指先に当たる硬い感触。

柔らかさとの対比でビックリする。

先端部分はまた違った部位なんだろうか。

ゆっくりと指を動かした瞬間、小泉の身体がビクンと跳ねた。

「……っ!!……やっ……!」

小泉が混乱した様子で声を上げた。

「……そこ……ダメっ……」

控えめな様子で訴える小泉。

嫌なのか。

なら、仕方ないよな。

俺は動きを止めた。

何か不味かっただろうか。

それとも。

まあ、人間に限らず猫にだって触られたく無い箇所ってのはあるもんな。

俺は少し納得した。

俺の飼い猫のマサムネも────触ってたら怒る事ってあるし。

俺は良かれと思って撫でてやってたんだけどさ、マサムネ的にはその箇所って『ナシ』だったらしいんだよな。

(ちなみに肉球とか足先って触られんの嫌がる猫が多いらしいぜ。お前らもやめとけよ?)

─────ま、人間も同じなんだな。

俺はやや納得しながら頷いた。

「……悪ィ、ヤなとこ触っちまって」

俺がそう言うと小泉は少し不機嫌そうにこう呟いた。

「……その……脱がせるんだったら脱がせる、脱がせないんだったら元に戻せ。ブラが変にずり上がっててなんか気持ち悪い」

気持ち悪い。

そう来たか。

なるほど、そういうもんなんだな。

普通さ、エロ同人とかAVとかだと女って『気持ちいい♡』みたいなセリフ言ってんじゃん?

ところがどうだ。

現実だと───────

童貞の俺がセックスの最中に相手に言われた言葉は─────『気持ち悪い』だもんな。

なんか笑えてくるよな。

けどさ、これってどうやって対処したらいいんだ?

俺は滅茶苦茶に戸惑いながらも小泉の“物言い”に対しこう答えた。

「……わかった、外そう」

でも外し方が判んなくてさ、と俺が言うと小泉は自分の両手を背中に回した。

パチン、という小さい音と共にブラが緩んだのが薄暗い中で見えた。

「……え!?外れたんか?」

小泉は一旦、シャツを脱ぐとブラを外し再びシャツを羽織った。

「ん?改めて着なくても良くね?」

「……嫌だ。恥ずかしいし……」

小泉は小さくそう言うと俯いた。

おいおいおい、コレもうワケがわかんねぇな。

着たままで最後まで押し通すって事か?

じゃあ俺も脱がない方がいいんだろうか?

そう思いつつも俺は小泉が傍に置いたブラを見た。

想像していたような金具やホックは見当たらない。

見慣れないプラスチックのパーツが取り付けられているようだ。

「コレってどうやって付けたり外したりすんの?」

「……は?」

小泉は戸惑ったような表情を浮かべた。

「……いや、ここを両手で持って噛み合わせて上下にスライドさせて……」

小泉がホックを手に持ち、パチンと音をさせた。

外れていたブラのホックがキレイに留まっている。なんか知恵の輪みたいだ。

「え?じゃあさ、外すときは?」

小泉は再びブラのホック部分を手にし、折るように曲げるとパチンと音がした。

再び上下、さっきと逆方向にスライドさせると噛み合っていたホックが外れた。 

「……へぇ!初めて見たな。こんな風になってんのか!」

俺が感心したように呟くと小泉は黙ったままそれきり何も言わなくなってしまった。

「………………」

あ、マズいな。

なんかもうそんな空気じゃなくなってるし。

でもどうすんだ?

触ったら触ったでダメって言われるし───────

でも逆に、小泉が触って欲しい場所なんて俺には判らないし。

触らずに進行すんのって無理があるんじゃないのか?

迷った末に俺は───────

とりあえず猫が喜ぶ箇所を触ってみることにした。

小泉の喉と顎の下をそっと人差し指の背で撫でる。

ゆっくりと撫でると小泉は不思議そうな顔で俺を見つめた。

「………?」

それから俺は小泉の頭をそっと撫でた。

小泉は一瞬、意外そうな表情を浮かべた後ずっと黙っている。

これは嫌じゃないってことか?

なんとなく俺はホッとした。

とにかく、そっと撫でよう。慎重に。





俺は小泉の胸から腰、腰から下腹部のなだらかなラインに指先をそっと這わせた。
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