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ep6
ep6『夢千夜』 “壊れた夜” 第八夜
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「……わかった、じゃあこうしよう」
俺は隣の居間に再び移動し、電気を点けた。
それから仏間に戻り、襖を少しだけ開けた。
仏間は電気を一切点けていないが、襖の隙間から隣の部屋の明かりが漏れている。
「……コレくらいだったらさ、まあギリいいんじゃないのか?」
豆電球よりも暗く、真っ暗闇よりも僅かに明るい部屋。
「……ん……まあ……」
小泉も渋々と了承する。
しかしだな
まだ何もやってないうちからグダグダじゃねぇか。
電気を点ける、点けないってだけでこんなにも二人の感覚は違うのか。
こんな調子で本当に最後まで出来るんだろうか──────?
また途中でダメ出しされるんじゃないのか?
不安になりながらも俺たちはほんのりと暗い部屋でお互いに向き合った。
「……まあ、座ろうぜ」
俺がそう言うと小泉は強張った様子で静かに布団の上に座った。
俺も小泉の向かいに座る。
どうしよう、めっちゃ緊張するんだけど。
けど、グズグスしてる場合じゃないよな。
モタモタしてる間に鳥居が倒壊したら───────
怪我人が出るかもしれない。
或いは。
万一にもここが誰かに見付かったら────────
その時はマジのガチで小泉の人生は終わりだ。
それだけは絶対に避けなきゃなんねぇよな。
迷ったり躊躇してる場合じゃねぇんだ。けどさ。
こういう時ってさ、なんて言って始めんの?
「今からヤるけど」
みたいな宣言って必要?
それとも無言?
えっ?マジでどうやって開始すんの?
「????」
小泉を目の前にして俺は固まってしまう。
いや別にさ、何も考えずに開始してもいいんだろうけど──────
さっきも照明の明るさについて早速『物言い』が付いたワケじゃん?
なんかさ、俺が知らないだけでセックスの時にも謎マナー的なのってあるのか???
知らない間に『マナー違反』とかやらかして怒られるのも嫌だしなぁ……
どうするのが正解なんだ?
世のカップルってどうやってセックスに持ち込んでるんだろ???
『愛してる』とか『好きだよ』みたいなこと言ってんのか?
まあムードって大事だろうし─────
でも下手な事言って怒られるのもなぁ……
どうしていいか分からなくなった俺は小泉を真っ直ぐに見つめた。
小泉は視線を逸らし、硬直したように動かない。
とりあえず、近付いてみよう。
お互いに離れてたら何も始まらない訳だし───────
俺は慎重に─────軽く小泉の肩を抱いた。
そっと眼鏡を外し、枕元に置く。
まだ少し濡れた髪が僅かな灯りの中で艶々として見える。
その瞬間、何故だか俺はドキリとした。
裸ワイシャツの小泉を見てもなんとも思わなかったのに─────
小泉の髪から、俺が使ってるいつものシャンプーの匂いがしたんだ。
ドラッグストアで買った一番安いトニックシャンプー。
普段なら小泉が絶対使わないような銘柄。
『小泉が俺の家の風呂で俺のシャンプーを使ってる』
その事実に何故か俺は──────とんでもなく反応してしまっていたのかもしれない。
俺はそのまま───その匂いを確かめるように小泉の身体を抱きしめた。
「……っ!」
小泉の肩がビクリと震えた。
ボディソープなんて御大層なものはウチには無いんだ。
あるのはお中元とかで貰った箱入りの石鹸とかなんだ──────
小泉の身体から感じる匂い。
俺がいつも使ってる、いつもの石鹸の匂いだ。
小泉の髪からも身体からも俺と同じ匂いがする。
ああ、セックスするってのはこういう事なんだな。
そう俺はぼんやりと考えながら─────小泉の唇に自分の唇を重ねた。
俺は隣の居間に再び移動し、電気を点けた。
それから仏間に戻り、襖を少しだけ開けた。
仏間は電気を一切点けていないが、襖の隙間から隣の部屋の明かりが漏れている。
「……コレくらいだったらさ、まあギリいいんじゃないのか?」
豆電球よりも暗く、真っ暗闇よりも僅かに明るい部屋。
「……ん……まあ……」
小泉も渋々と了承する。
しかしだな
まだ何もやってないうちからグダグダじゃねぇか。
電気を点ける、点けないってだけでこんなにも二人の感覚は違うのか。
こんな調子で本当に最後まで出来るんだろうか──────?
また途中でダメ出しされるんじゃないのか?
不安になりながらも俺たちはほんのりと暗い部屋でお互いに向き合った。
「……まあ、座ろうぜ」
俺がそう言うと小泉は強張った様子で静かに布団の上に座った。
俺も小泉の向かいに座る。
どうしよう、めっちゃ緊張するんだけど。
けど、グズグスしてる場合じゃないよな。
モタモタしてる間に鳥居が倒壊したら───────
怪我人が出るかもしれない。
或いは。
万一にもここが誰かに見付かったら────────
その時はマジのガチで小泉の人生は終わりだ。
それだけは絶対に避けなきゃなんねぇよな。
迷ったり躊躇してる場合じゃねぇんだ。けどさ。
こういう時ってさ、なんて言って始めんの?
「今からヤるけど」
みたいな宣言って必要?
それとも無言?
えっ?マジでどうやって開始すんの?
「????」
小泉を目の前にして俺は固まってしまう。
いや別にさ、何も考えずに開始してもいいんだろうけど──────
さっきも照明の明るさについて早速『物言い』が付いたワケじゃん?
なんかさ、俺が知らないだけでセックスの時にも謎マナー的なのってあるのか???
知らない間に『マナー違反』とかやらかして怒られるのも嫌だしなぁ……
どうするのが正解なんだ?
世のカップルってどうやってセックスに持ち込んでるんだろ???
『愛してる』とか『好きだよ』みたいなこと言ってんのか?
まあムードって大事だろうし─────
でも下手な事言って怒られるのもなぁ……
どうしていいか分からなくなった俺は小泉を真っ直ぐに見つめた。
小泉は視線を逸らし、硬直したように動かない。
とりあえず、近付いてみよう。
お互いに離れてたら何も始まらない訳だし───────
俺は慎重に─────軽く小泉の肩を抱いた。
そっと眼鏡を外し、枕元に置く。
まだ少し濡れた髪が僅かな灯りの中で艶々として見える。
その瞬間、何故だか俺はドキリとした。
裸ワイシャツの小泉を見てもなんとも思わなかったのに─────
小泉の髪から、俺が使ってるいつものシャンプーの匂いがしたんだ。
ドラッグストアで買った一番安いトニックシャンプー。
普段なら小泉が絶対使わないような銘柄。
『小泉が俺の家の風呂で俺のシャンプーを使ってる』
その事実に何故か俺は──────とんでもなく反応してしまっていたのかもしれない。
俺はそのまま───その匂いを確かめるように小泉の身体を抱きしめた。
「……っ!」
小泉の肩がビクリと震えた。
ボディソープなんて御大層なものはウチには無いんだ。
あるのはお中元とかで貰った箱入りの石鹸とかなんだ──────
小泉の身体から感じる匂い。
俺がいつも使ってる、いつもの石鹸の匂いだ。
小泉の髪からも身体からも俺と同じ匂いがする。
ああ、セックスするってのはこういう事なんだな。
そう俺はぼんやりと考えながら─────小泉の唇に自分の唇を重ねた。
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