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ep5.5
ep5.5『TALKING ABOUT SEX(again)』 よいこの自由研究
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久しぶりの概史の家は更に混沌としていた。
散乱するバカルディの瓶と蓋。
電源の入らないジュークボックス。市松模様の床。ブラウン管のレトロなテレビ。
ミントカラーのダイヤル式の電話機。
ダーツボードに刺されたテストの答案。コカコーラのネオンサイン。m&mの大きめのマスコット人形。
その一角に青色のネオジオMVS筐体が鎮座していた。
不思議とインテリアに馴染んでるんだな。これが。
概史はコカコーラのロゴが入った丸椅子に座って何かと睨めっこをしている。
「よっ。宿題やってんのか?偉いじゃねーか」
俺が声を掛けると概史は顔を上げた。
「あ、先輩。別に宿題ってワケじゃないんスけどね」
カブトムシの写真が表紙のジャポニカ学習帳。
「予習でもしてんのか?どういう風の吹き回しだよ?」
概史の奴が勉強なんて珍しいこともあるもんだな。私立の受験でもするのか?
しかし。
ノートを覗き込んだ俺はハンマーで後頭部をフルスイングされたような衝撃を受けた。
ジャポニカ学習帳に2Bの鉛筆で力強く書かれた文字列と図解。
『正常位』『騎乗位』『後背位』『対面座位』…………
“各体位の分類と特徴“という見出しがデカデカとノートの中央に踊る。
その文字列の横にはご丁寧にサインペンでチェックボックスも描かれている。
チェックボックスはいずれも赤のマーカーでレ点が付けられていた。
「────は?」
思わず間抜けな声が出る。
「あ、コレっスか?夏休みの自由研究で提出したレポートの下書きを読み返してたんスよwww」
概史はこともなげに言い放つ。
おいおいおいおい。こんな凶悪なジャポニカ学習帳みたことねぇよ。
しかも何?夏休みの自由研究?一体何を調べてやがるんだこのガキは?
俺は心底震え上がった。
マジでコイツだけは俺の手に負えねぇ。
しかも。
その後何ページにも渡って手描きの図解とチェックボックスが続いてやがる。
───────まさかとは思うが。
全部もう試したって事はないよな………?え?46種?48種?どんだけだよ?
まさかな。
俺は浮かび上がった疑念を打ち消すので必死だった。
こいつって彼女居たっけ?
聞いてねぇぞ?
だが。
例の文庫本────
あの中では概史は俺より先に童貞捨ててたんだっけ。
十分あり得る可能性に俺は打ちのめされた。
四十八手どころかたった一回ですらまともな経験なんて俺には無いんだが?
フリーズする俺に対し、概史は無邪気に『夏休みの自由研究』について解説し始める。
「いやあ、四十八手って言うから48種って思うじゃないっスかw実は96種あったんスけどwウケるww」
関節痛くなってめっちゃ大変だったんスけど、と言う概史の声のトーンはマジだった。
そうなんだよ。
コイツだけはガチなんだ。
頭のネジがデフォルトで5~6本飛んでやがるんだ。
多分概史の奴、マジでやりやがったな。
俺はそう確信した。
「おいおいおい。いくら若いっつっても体力あり過ぎんだろ。てか、何でそんなん研究しようって思ったんだ?」
俺の質問に対し、概史はあっけらかんとこう答えた。
「え?だって百聞は一見に如かずって言うじゃないスかwやってみないとわかんないっしょ?w」
散乱するバカルディの瓶と蓋。
電源の入らないジュークボックス。市松模様の床。ブラウン管のレトロなテレビ。
ミントカラーのダイヤル式の電話機。
ダーツボードに刺されたテストの答案。コカコーラのネオンサイン。m&mの大きめのマスコット人形。
その一角に青色のネオジオMVS筐体が鎮座していた。
不思議とインテリアに馴染んでるんだな。これが。
概史はコカコーラのロゴが入った丸椅子に座って何かと睨めっこをしている。
「よっ。宿題やってんのか?偉いじゃねーか」
俺が声を掛けると概史は顔を上げた。
「あ、先輩。別に宿題ってワケじゃないんスけどね」
カブトムシの写真が表紙のジャポニカ学習帳。
「予習でもしてんのか?どういう風の吹き回しだよ?」
概史の奴が勉強なんて珍しいこともあるもんだな。私立の受験でもするのか?
しかし。
ノートを覗き込んだ俺はハンマーで後頭部をフルスイングされたような衝撃を受けた。
ジャポニカ学習帳に2Bの鉛筆で力強く書かれた文字列と図解。
『正常位』『騎乗位』『後背位』『対面座位』…………
“各体位の分類と特徴“という見出しがデカデカとノートの中央に踊る。
その文字列の横にはご丁寧にサインペンでチェックボックスも描かれている。
チェックボックスはいずれも赤のマーカーでレ点が付けられていた。
「────は?」
思わず間抜けな声が出る。
「あ、コレっスか?夏休みの自由研究で提出したレポートの下書きを読み返してたんスよwww」
概史はこともなげに言い放つ。
おいおいおいおい。こんな凶悪なジャポニカ学習帳みたことねぇよ。
しかも何?夏休みの自由研究?一体何を調べてやがるんだこのガキは?
俺は心底震え上がった。
マジでコイツだけは俺の手に負えねぇ。
しかも。
その後何ページにも渡って手描きの図解とチェックボックスが続いてやがる。
───────まさかとは思うが。
全部もう試したって事はないよな………?え?46種?48種?どんだけだよ?
まさかな。
俺は浮かび上がった疑念を打ち消すので必死だった。
こいつって彼女居たっけ?
聞いてねぇぞ?
だが。
例の文庫本────
あの中では概史は俺より先に童貞捨ててたんだっけ。
十分あり得る可能性に俺は打ちのめされた。
四十八手どころかたった一回ですらまともな経験なんて俺には無いんだが?
フリーズする俺に対し、概史は無邪気に『夏休みの自由研究』について解説し始める。
「いやあ、四十八手って言うから48種って思うじゃないっスかw実は96種あったんスけどwウケるww」
関節痛くなってめっちゃ大変だったんスけど、と言う概史の声のトーンはマジだった。
そうなんだよ。
コイツだけはガチなんだ。
頭のネジがデフォルトで5~6本飛んでやがるんだ。
多分概史の奴、マジでやりやがったな。
俺はそう確信した。
「おいおいおい。いくら若いっつっても体力あり過ぎんだろ。てか、何でそんなん研究しようって思ったんだ?」
俺の質問に対し、概史はあっけらかんとこう答えた。
「え?だって百聞は一見に如かずって言うじゃないスかwやってみないとわかんないっしょ?w」
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