400 / 1,059
ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 8bitマシン
しおりを挟む
その前に一つ確認させてくれ、と俺は感情を抑えながら言った。
「距離を置いてから夢野に関するチクリが入ってきたのか、チクリが入ってから夢野と距離置いたのか─────」
どっちなんだよ?と俺は努めて冷静に訊ねた。
ふん、とまた岬は小さく鼻を鳴らした。
「─────どっちだったかな。でもどちらでも結果は同じだったんじゃないか?」
岬と話している最中、ずっと俺は別のことが気になっていた。
初対面の筈だが、なんかコイツとは以前にも会ったことがある気がする─────
何処だったろうか?
それとも誰かに似てる?
御月レイジだろうか?
確かに、人並外れて容姿が整っているという点でだけは共通しているが─────
それ以外は全く似ても似つかない。
大切な彼女を守る為にあくまでも童貞をある事を貫く御月レイジと、妊娠させた彼女を冷淡に突き放し、拒絶する岬京矢。
全くの正反対、対照的な存在ですらあるように思えた。
じゃあ誰に似てる気がするんだろう?
さっきから情報量が多すぎて、俺の初代ファミコン並みのスペックの脳味噌じゃ処理が追いつかなくなっていた。
「彼女と意図的に距離を置きはじめてから─────彼女はより一層僕の気を引こうと躍起になって来たんだ」
死にたいとすぐに口走るようになったし、リストカットも日常茶飯事だ。それで僕の心はますます彼女から遠ざかったんだ、と岬は話を続けた。
確かに岬はムカつくヤツだが、コイツの言っていることは全くのデタラメって訳でも無いように感じられた。
俺だって夢野が自殺未遂をしたのを目の当たりにしてるんだ。
だけど。
これって誤解なんだろうか?
夢野と岬は決定的にすれ違っているだけなのか?
「僕の心が完全に離れたのを察したのか─────彼女、また『妊娠した』なんて言い始めてね。本当にうんざりしたよ。今度は赤ん坊の命を駆け引きに使おうだなんて─────」
思えばあれが決定打になったんだろうね、と岬は静かに言った。
「おいおいおい、ちょっと待ってくれよ」
思わず俺は声を上げる。
「なるべく大人しく聞こうと思ってたんだが我慢ならねぇ。なあアンタ、夢野の妊娠は二回とも嘘だって言うのか?」
「だってそうじゃないか?そう短期間に次々と妊娠したかもだなんて─────」
どう考えてもおかしいだろう、と岬は肩をすくめた。
「僕の気を引きたいがために嘘をつくにしても、もう少し設定を練って欲しいものだよ」
あまりにも短絡的で感情的すぎるし馬鹿の一つ覚えみたいじゃないか、と岬は軽蔑するような表情を浮かべた。
「違う!」
俺は食い気味に否定する。
「夢野は嘘はついてない。本当に妊娠してるんだ」
「距離を置いてから夢野に関するチクリが入ってきたのか、チクリが入ってから夢野と距離置いたのか─────」
どっちなんだよ?と俺は努めて冷静に訊ねた。
ふん、とまた岬は小さく鼻を鳴らした。
「─────どっちだったかな。でもどちらでも結果は同じだったんじゃないか?」
岬と話している最中、ずっと俺は別のことが気になっていた。
初対面の筈だが、なんかコイツとは以前にも会ったことがある気がする─────
何処だったろうか?
それとも誰かに似てる?
御月レイジだろうか?
確かに、人並外れて容姿が整っているという点でだけは共通しているが─────
それ以外は全く似ても似つかない。
大切な彼女を守る為にあくまでも童貞をある事を貫く御月レイジと、妊娠させた彼女を冷淡に突き放し、拒絶する岬京矢。
全くの正反対、対照的な存在ですらあるように思えた。
じゃあ誰に似てる気がするんだろう?
さっきから情報量が多すぎて、俺の初代ファミコン並みのスペックの脳味噌じゃ処理が追いつかなくなっていた。
「彼女と意図的に距離を置きはじめてから─────彼女はより一層僕の気を引こうと躍起になって来たんだ」
死にたいとすぐに口走るようになったし、リストカットも日常茶飯事だ。それで僕の心はますます彼女から遠ざかったんだ、と岬は話を続けた。
確かに岬はムカつくヤツだが、コイツの言っていることは全くのデタラメって訳でも無いように感じられた。
俺だって夢野が自殺未遂をしたのを目の当たりにしてるんだ。
だけど。
これって誤解なんだろうか?
夢野と岬は決定的にすれ違っているだけなのか?
「僕の心が完全に離れたのを察したのか─────彼女、また『妊娠した』なんて言い始めてね。本当にうんざりしたよ。今度は赤ん坊の命を駆け引きに使おうだなんて─────」
思えばあれが決定打になったんだろうね、と岬は静かに言った。
「おいおいおい、ちょっと待ってくれよ」
思わず俺は声を上げる。
「なるべく大人しく聞こうと思ってたんだが我慢ならねぇ。なあアンタ、夢野の妊娠は二回とも嘘だって言うのか?」
「だってそうじゃないか?そう短期間に次々と妊娠したかもだなんて─────」
どう考えてもおかしいだろう、と岬は肩をすくめた。
「僕の気を引きたいがために嘘をつくにしても、もう少し設定を練って欲しいものだよ」
あまりにも短絡的で感情的すぎるし馬鹿の一つ覚えみたいじゃないか、と岬は軽蔑するような表情を浮かべた。
「違う!」
俺は食い気味に否定する。
「夢野は嘘はついてない。本当に妊娠してるんだ」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
60
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる