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ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 生え揃うまでの演技
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「は?なんだそれ?」
佐々木の名前を出せば俺が動揺するとでも思ったんだろうか。
上野にそう思われていること自体に腹が立ったが─────
それ以上に佐々木と夢野との間に何が起こったかものすごく気になった俺は、その感情を飲み込んだ。
俺が期待通りに反応したからか、上野は少し唇の端を持ち上げてこちらを見る。
「ねぇ、佐藤っちはさ─────」
佐々木っちが本当に演技だけでああなってると本気で思ってる?と上野は静かに訊いた。
ん?
「演技って─────佐々木の身なりとか外見って意味か?」
あれは保健室登校の権利を勝ち取る為の変装みたいなモンだろ?と俺は答えた。
まあ、俺も最初は驚いたけどさ。
でもそこがまた佐々木らしいって気もしたんだよな。
「やっぱり何も解ってないんじゃん、佐藤っちは」
そう言うと上野は一呼吸置いて続けた。
「あれがホントに演技だって思ってたんだ?」
「え?」
演技じゃない?
違うって言うのか?という俺の言葉に上野は頷いた。
「佐藤っちは知らなかったかもしれないけどさ。佐々木っち、一時期は不登校にまでなって─────」
ガリガリに痩せこけてた時期もあったの、と上野は目を伏せた。
「は?何言ってるんだ?佐々木がか?」
他の誰かと間違えてね?という俺の質問には答えず、上野は考え込むような素振りを見せた。
「あーしも詳しい事情までは知らないんだけどさ。あ、コレって1年の時のハナシね。一時期は円形脱毛症にまでなって─────」
それで余計に不登校にまで追い詰められてたみたい、と上野は表情を暗くした。
円形脱毛症。
髪が抜けるってことだよな。
確かに、佐々木はオシャレだのファッションだのに気を使うようなタイプではないが─────
けど、佐々木だって普通の女子なんだ。
髪が抜けてショックを受けないハズなんてないよな。
初めて知った佐々木の隠された事情に、俺の心臓はキュッと痛んだ。
「そんな事、俺には一言も─────」
俺がそう言うと上野は当たり前っしょ、と怒りの感情をあらわにした。
「佐々木っちだってお年頃の女の子だよ?そーいうの人に知られたくないに決まってるっしょ?」
佐藤っちが相手なら尚更だし、と上野はなんとも言えない表情を浮かべた。
どういう意味だろう。
「ま、それはともかくさ、少しずつでも毛が生え揃ってきはじめた時期のハナシなんだけど─────」
佐々木っちのお母さんがね、娘を不憫に思ってリボンを買ってくれたみたいなのよね、と上野は話を続けた。
「リボン?髪をカモフラージュする為にか?」
俺の質問に上野は頷いて答えた。
「そう、正確にはエクステ付きのリボンバレッタなんだけど─────」
担任も学年主任も佐々木っちの事情は知ってるワケじゃない?だからさ、特例で見逃してくれてたみたいなんだよね、と上野は話を続ける。
だが。
上野の口から語られるこの話に、なんとなく俺は嫌な予感がしていた。
佐々木の名前を出せば俺が動揺するとでも思ったんだろうか。
上野にそう思われていること自体に腹が立ったが─────
それ以上に佐々木と夢野との間に何が起こったかものすごく気になった俺は、その感情を飲み込んだ。
俺が期待通りに反応したからか、上野は少し唇の端を持ち上げてこちらを見る。
「ねぇ、佐藤っちはさ─────」
佐々木っちが本当に演技だけでああなってると本気で思ってる?と上野は静かに訊いた。
ん?
「演技って─────佐々木の身なりとか外見って意味か?」
あれは保健室登校の権利を勝ち取る為の変装みたいなモンだろ?と俺は答えた。
まあ、俺も最初は驚いたけどさ。
でもそこがまた佐々木らしいって気もしたんだよな。
「やっぱり何も解ってないんじゃん、佐藤っちは」
そう言うと上野は一呼吸置いて続けた。
「あれがホントに演技だって思ってたんだ?」
「え?」
演技じゃない?
違うって言うのか?という俺の言葉に上野は頷いた。
「佐藤っちは知らなかったかもしれないけどさ。佐々木っち、一時期は不登校にまでなって─────」
ガリガリに痩せこけてた時期もあったの、と上野は目を伏せた。
「は?何言ってるんだ?佐々木がか?」
他の誰かと間違えてね?という俺の質問には答えず、上野は考え込むような素振りを見せた。
「あーしも詳しい事情までは知らないんだけどさ。あ、コレって1年の時のハナシね。一時期は円形脱毛症にまでなって─────」
それで余計に不登校にまで追い詰められてたみたい、と上野は表情を暗くした。
円形脱毛症。
髪が抜けるってことだよな。
確かに、佐々木はオシャレだのファッションだのに気を使うようなタイプではないが─────
けど、佐々木だって普通の女子なんだ。
髪が抜けてショックを受けないハズなんてないよな。
初めて知った佐々木の隠された事情に、俺の心臓はキュッと痛んだ。
「そんな事、俺には一言も─────」
俺がそう言うと上野は当たり前っしょ、と怒りの感情をあらわにした。
「佐々木っちだってお年頃の女の子だよ?そーいうの人に知られたくないに決まってるっしょ?」
佐藤っちが相手なら尚更だし、と上野はなんとも言えない表情を浮かべた。
どういう意味だろう。
「ま、それはともかくさ、少しずつでも毛が生え揃ってきはじめた時期のハナシなんだけど─────」
佐々木っちのお母さんがね、娘を不憫に思ってリボンを買ってくれたみたいなのよね、と上野は話を続けた。
「リボン?髪をカモフラージュする為にか?」
俺の質問に上野は頷いて答えた。
「そう、正確にはエクステ付きのリボンバレッタなんだけど─────」
担任も学年主任も佐々木っちの事情は知ってるワケじゃない?だからさ、特例で見逃してくれてたみたいなんだよね、と上野は話を続ける。
だが。
上野の口から語られるこの話に、なんとなく俺は嫌な予感がしていた。
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